島と街、二部屋分の距離

 「なんかこっちに初めて来たときより生き生きとしてるね」

 しばらく経った昼休み、購買のパンをかじっていた由紀が聞いてきた。

「こっち来た時は他人の考えてることがわかんないっておろおろしてたのに、最近は落ち着いてるし」

「そう?」

 相変わらず由紀は人の事をよく見ている。

「そっかあ、もう彼氏出来ちゃったかあ。この由紀さんを差し置いて」

 今日の由紀の推理は斜め上を行っている。

「彼氏じゃないけと男友達は出来たよ」

「ほほう、彼氏候補一号ですな」

「あれ、推理が外れたの、気にしないの?」

「微妙に話を逸らさないで欲しいなあ。まあ推理は八割方合っていたし充分満足」

「今度そいつと勉強会をやろうって言ってるんだ。由紀もおいでよ」

「へえ、そんなにのろけたいんですかねえこの子は」

 由紀はなにかぶつぶつ言っていた。

「大丈夫、由紀も気に入ると思うよ、アイツの事」

 

 美希にとって瞬はまだ男友達に間違いなかった。晩ごはんをごちそうになり、瞬の母親から瞬の学力の無さを嘆かれ、是非勉強を教えてやってくれと頼まれ、忙しくないときに一緒に勉強しているのだった。瞬もいやいやながらもサボることなく勉強している。勉強の合間にばかばかしい話しをすることが楽しかった。

「やっぱり勉強するなら大勢でやった方が楽しいじゃん」

 瞬はそういって友達を集めて勉強会をやろうと言い出した。

 あと少しで高校に入って最初のテストが始まりそうだった。

maruma
作家:丸中丸
島と街、二部屋分の距離
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