オタガイ、さま

私は、茜が好き。ちょっと小さい身長も、羨ましいし、ツインテールの似合う茶色の巻き毛も、ちょっとつり目気味の目も大好き。特に好き。茜の気の強さをとても表していると思うから。

茜って、たぶん、私のこと嫌いだと思う。「オハヨウ」って、声をかけてくるとき、眉毛が少し歪んでるから。それに、私から声をかけると、一瞬とても苦しそうだから。……本当は、私が離れたほうがいいのかもしれない。でも。

そんなこと考えられない。好き。高い声も、ちょっと子供っぽいところも、勉強熱心なところも、好き。ねえ?茜。私だって、勉強は本当はあまりできなかった。でも、茜に教えることを名目に、とっても今頑張ってるの。ムリクリ、してるの。気づいてる?気づかなくていいけど。

茜が好き。パンキッシュな服、とっても似合うし、リボンも可愛い。本当は、茜みたいな格好とか、したいよ?でも、もう「大人っぽい藍ちゃん」って、イメージができちゃってるから。私は、そういう潔さを持たない。

好きな格好を、好きなようにしている茜がだから、とても好き。

だから、つい、声をかけてしまう。茜が苦しんでるのわかってて、声をかけてしまう。だって、私はそんなに強くない。茜がいなかったら淋しい。

私を、憎みながらも慕ってくれる、あの目が好きなの。だから、私は私のイメージを壊すわけにいかない。大人っぽくて、優しくて、っていう。そうやって、茜の感情を縛り付けることしかできない。

私のスタイル。嫌い。背ばかり高くて、胸も小さくて、ガリガリ。茜みたいに、女の子らしいスタイルが良かった。子供っぽくても、なんでも。

ツインテールとか、巻き毛の似合う顔。おっきなつり目。私のたれ目、嫌い。怒っていたって、そう見てもらえないこのタレ目が嫌い。

だから、茜、いいな。いいな。いいな。

私の欲しいものは、全部茜が持っているから、すごく、すごく羨ましい。きっと、茜もそんな気持ちなんだろう。私たちが、このまま入れ替わってしまえばいいのに。大人びて、シンプルなものに憧れる茜と、子供じみた過剰さに憧れる私と。

本当は、茜が好きすぎて、そばにいると苦しい。だって、絶対に手に入らないものを、目の前で見せつけられてるから。苦しい。でもきっとそれはお互い様だ。

傷つくのわかっていて、話しかけてしまう。私も茜も。そんなところだけ、とってもよく似てる私たち。ちょっとバカみたいだよね。

茜に、彼氏とかできないといいなって思う。そういうこと、思っちゃいけないけど。茜は、私のそばで、私だけを見て、私のせいで苦しんで。そうやって、茜の心を、ずっとずっと独占していたいって思っちゃう。……私きっと、どこかおかしい。

「ハイ。よく撮れてるよ。今度プリントアウトするね。二人とも、対照的だから、お互い並ぶと、何かいいね」

「そうですか?ありがとうございます」

「そういうの、別に嬉しくないんだけど」

「もう!茜ってば」

「藍、良い子すぎ」

「本当に仲いいねー」

 …………ほんとう、はね。ほんとうのこころは。
みるとん
オタガイ、さま
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