星を見つけた君ハートを見つけた僕

プロローグ( 7 / 7 )

「じゃ、ここで軽くしてくれないか?僕も食べるから」
「うん、嘘ついてごめん」

 なんて言ってこの公園で酸味の強いグレープフルーツを二人で頬張ったんだっけ。

我夢にもここでアーモンドを投げてやろうかな?嘘ついた時に。

第1章 現在( 1 / 1 )

 そんな思いを思い返しているうちに、桜と織り成した時間を記録した思い出のアルバムを開いてみたくなり、あの時の桜の様に足早に帰路についた。

 その時はただあの頃を思い出したい一心で帰路についたので、自分がどんな行動を取っていたか、正直記憶に鮮明には残っていなかった。あのスーパーマーケットを出て、公園まで辿り着いたのは覚えているが、それから足早に家路につき、それから…

 「ピーポーピーポー・・・・・・」
 皮肉な笑顔に見える太陽に焼かれたアスファルトの熱が頬や四肢全てに伝わってくる。こんな焼けるような真夏のイメージの想い出も桜と描いたっけ・・・・・・

第2章 回想( 1 / 12 )

「義務教育最後の夏だ!」などと当たり前を当たり前のごとく友達と笑い飛ばしながら、近隣の華やかにビキニが彩る海岸まで泳ぎに来ていた。
「お前は大丈夫なのかよ?こんな事してて。今年は高校入試だぜ」と生意気にもサングラスをかけている総司郎が全く本心とは裏腹に崩れきった笑顔でこのセリフを僕に投げてきた。
 本当はその言葉がぶつかった時ちょっと痛かったのだが、こんなイベントの最中に気分が盛り下がるはずもなく、
「何言ってんだよ。片目瞑ってても大丈夫だよ。お前といっしょにするなよ」なんてかなり強気の虚勢を張って砂浜にパラソルを立てていた。
「おっ、言ってくれるじゃない。じゃ、今日はこの海を思いっきり楽しもうぜ」
「勿論、彼女の一人でも作って帰る予定は正月に決めたことだよ」と嘘でない嘘になりそうな予定を皆に発表してしまった。
「勇次は大丈夫そうだから、大丈夫か?なんて聞かないけど、お前も今日は彼女の一人にくらいは声をかけろよ」なんて、名前の勇ましいの文字が泣いていると冷やかされるほど無口な勇次には無理な注文を総司郎がぶちかました。
「・・・・・・ああ、・・・・・・うん。そうだな」
 といつもよりは前向きな勇次に僕たちは一センチほど飛び上がった。
「ほんとかよ。よろしく頼むぜ。お前はルックスはいいんだから、声かけたら確実に彼女が出来るはずなんだから」「そうだぜ」と僕たちは、日焼けをして少し男らしく見えるように砂浜に寝そべる場所を作りながら、そんな話をしていた。

「俺、ちょっと泳いでくるよ」と言って肌を焼くのに飽きて来た僕は、遠浅の海の波打ち際を目掛けて走っていった。

第2章 回想( 2 / 12 )

「亜紀~っ、星を見付けたよ。ほら~っ」と言って可愛い同い年位の女性がこっちに走ってきた。
 僕は総司郎に借りてきたサングラスに慣れないながら、そちらに視線が奪われて立ち止まってしまった。その時…

「いててっ」と言って星を見付けたと言った彼女が膝から砂浜に座る格好に転んでいた。
 僕はチャンス!とばかり、
「大丈夫?あっ!怪我しているよ。それ」と言って手を差し出したら、彼女は僕を見上げ転んだ事もなかったかのように、
「うん、四本足!」と笑顔で僕に片足の取れたヒトデと、サングラスをかけていても太陽より眩しい笑顔を僕に投げてくれた。僕は喜びのあまり何のつっかえもなく、大声を出して笑ってしまった。
「ははははっ」
 僕の少し人見知りする心のつっかえ棒を払拭してくれる素敵な笑顔だった。
「そうだね。そっちも怪我しているね。でも君の膝小僧のほうが大変だよ。早く水で洗い流したほうが良いよ」
「うん、私も四本足!」って言って四つん這いになってまたまた、僕を笑わせてくれた。
「ははははっ。じゃ、僕はハート型」って言ってその隣に一度座って、また立ち上がった。砂にはお尻の形が少しぼやけてついていた。
「ほんとだ、ハート型だ」と言って彼女もカラカラ笑ってくれた。
「お姫様、このハートはあなたに差し上げますから、どうか私の手を取って立ち上がってください」なんて中学生がイメージする中世の騎士を気取って、片膝ついて少し強引に彼女の手を取った。膝の傷口が心配だったからなのだが…

星兎心
作家:星兎心
星を見つけた君ハートを見つけた僕
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