星を見つけた君ハートを見つけた僕

第2章 回想( 6 / 12 )

「しかし、冬の桜ってなんか青いバラみたいに不可能の象徴っぽい名前だよね」って僕が笑って問いかけると、
「うん。でもそこには必ず夢があると思うから、私は気に入っているんだ」と桜さんは嬉しそうに応えた。
「そうだね、青いバラは実在するって話だしね」
「ええっ?ほんと?」
「うん、知り合いが見たって言ってた」
「そうなんだ。じゃ、冬の桜もいつか咲くかもね」
「うん、そうなるといいね。その下で君とまたこうして話がしたいね」
「あいては俊介君だろうか?」なんてちょっと悪戯顔で僕の眼を覗き込んでくる。僕は少し照れながら、
「その時にならないと解らないよね」と少し不服だが、正直に応えると、
「な~んだ」なんてちょっと場が白けた。
 そこで、話のベクトルを戻してみることにした。

第2章 回想( 7 / 12 )

「ところで今どこに住んでいるの?どこからこの海へ?」と僕はスタンダードな恋愛マニュアル的質問を桜さんにしてみた。
「そこのホテルに泊まっているの」とちょっとそっけない返事が返ってきた。ちょっと失敗したなと思い、百八十度ベクトルを変えて話を進めることにした。

「遠距離恋愛ってどう思う?」と僕が唐突に話を切り出すと、
「ええっ?」とちょっと驚いた反応が返ってきた。しかし手ごたえはあった。
「遠恋ってやつだよ」ともう一度言葉で背中を押してみる。
「そうだね。ハグしたりキスしたり出来ないから、やっぱり寂しいんじゃないかな?」
「じゃ、遠恋は成就しないって事?」と桜さんの考えを聞いてみた。
「うん。無理!」なんて笑顔で簡単に応えてくる。
「そう、でも僕はそうは思わないんだ」ともう一度場が白けるかも知れない事を覚悟で、自分の考えを述べてみた。
「ハグしたりキスしたりも大事なんだろうけど、じゃ恋愛ってそれだけ?そうじゃないと思うんだけど、桜さんはどう思う?」
「う~ん、そう言われるとそうだね。あまり深く考えたことなかったわ」
「じゃ、今考えてみて」
「どうして?」
「多分、僕と君はこれから遠距離恋愛をすることになるから」なんて僕は笑顔で問いかけた。
「どうして私があなたと遠恋するのよ?」って繕った不満顔で桜さんは聴いて来た。
「じゃ、この手は何?」と言っていつの間にか砂まみれに繋ぎっぱなしになっている手を持ち上げた。

第2章 回想( 8 / 12 )

「これはその・・・・・・」っといって何か考えていたみたいだが、それを遮るように僕は起き上がり、桜さんの注意をひきつけておいて、
「僕に桜さんとお付き合いするチャンスをください」と座っている桜さんに手を差し出した。
「こんどは怪我してない星がみたいので、一緒に探してね」と言って僕の手を彼女なりに力いっぱい握り返してくれた。
「少し歩かない?」と今度は桜さんから誘ってくれた。
「うん」と言って、白泡舞い踊る波打ち際を二人で歩き始めた。

「私の家は東京にあるの。俊介君は話し方からするとこの沖縄の人よね」と言い当てられてしまった。
「うん。やっぱり無理があるかな?遠距離恋愛って」と僕が地方である劣等感の様なものを心に感じ、不安に思いながら聴いてみた。
「今まではそう思っていたけど、俊介君がそれをどうにかしてくれそうじゃない?ちがう?」なんて笑顔で不安を払拭してくれた。
「うん。そうなるように僕頑張るよ」
「うん。私も」


第2章 回想( 9 / 12 )

「じゃ、早速一つ提案!」と僕が左手を挙げて意思表示をした。
「何々?」
「いきなりかもしれないけど、名前は呼び捨てにしない?その方が桜が近く感じられるから」と呼び捨てにしてみた。
「俊介って案外強引ね」なんて呼び捨てで返してくれた。間違いなくOKという合図だ。勿論とびきりの笑顔も一緒だから。
「そうかな?もっと僕の事を知って欲しいな」
「うん。私も」と言って繋いだままの手を少し強く握り返してくれた。

「少し泳がない?」と桜を海水に誘ってみた。
「私泳げないの」とちょっとブラックコーヒーを飲んだときみたいに苦笑い。
「それじゃ、もう少しこの辺りで一緒に話をしようか」と僕。
 周りの観光客の喧騒がストップモーションででもあるかのように二人の世界には邪魔をすることがなかった。
星兎心
作家:星兎心
星を見つけた君ハートを見つけた僕
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