少女ふたり

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★本の作成にあたって★
・コンテストお題イラストは、表紙、挿絵、巻末など、作成した本のどこかに残すようにしてください。
・表紙には、画像内、または本の編集ページ内の「表紙をつくる」機能でタイトルを記載してください。
・規定ページ数は20ページ以内(表紙・お題イラストは含まない)ですが、文字数に制限はありません。
(文庫本を基準とした場合、600~700文字以内が目安です)


【募集作品】
コンテストお題イラスト5点のいずれかを題材にした、20ページ以内の「小説」「マンガ」「エッセイ」「詩」など、形式を問わないオールジャンル作品(18禁作品を除く)。
日本語、未発表、作者オリジナルの作品に限ります。

【応募方法】
①コンテストお題イラストからN次創作をおこなってください。
②お題イラストのN次創作本を公開する際に表示される、「コンテスト応募フォーム」に入力してご応募ください。
※forkNへの会員登録が必要です(無料)

【応募資格】
・forkN会員であること。
・年齢、職業、国籍、プロアマ問いません。

【商品】
大賞1名 賞金10万円/スマートフォン書籍アプリ化佳作3名 賞金1万円/スマートフォン書籍アプリ化forkN賞1名 Amazonギフト1万円分/スマートフォン書籍アプリ化

【募集締め切り】
2012年7月31日

【審査結果発表】
1次審査発表 8月20日(月) 
結果発表 9月3日(月)

【注意事項】
・応募締め切り時点での作品を評価の対象と致します。また、締め切り後は、誤字修正以上の大きな更新はなさらないようお願い致します。
・受賞作品は、結果発表後1か月間の公開(無料)をお願い致します。
・ペンネームは、受賞発表や宣伝のために使わせていただく可能性がございます。
・結果は応募フォームに入力いただいたメールアドレスに通知致します。
・作品の著作権は作者に帰属しますが、応募作品、ペンネーム、作品コメントが、審査結果の発表、本サイトのPRなどのため利用される場合がございますこと、あらかじめご了承ください。
・その他、コンテストにかかわるお問い合わせはこちらからお願い致します。
今日からこの学園で生活するのか……。
広大な敷地と立派な建物を前に俺は嘆息した。学園の敷地内には山もあり、グランドや中庭にも贅沢に土地を 使ってある。建物も校舎ではなくどこかのホテルか大きな教会ではないかと見紛う程のたたずまいだ。それでも華美すぎない造りになっており、平和な学園生活 を送れそうな予感がする。
俺は地図を見ながら、建物の右翼――まるで城にでも使うような表現だがそれがふさわしい――にあたる寮に向かった。寮の前庭にはつつじだろうか、刈り揃えられた植え込みがある。
寮 は門こそないものの、頑丈な石造りの建物に、彫刻が施された大きな一枚板の扉がはまっている。各部屋ごとにあるのであろう窓はサッシではなく白く塗られた 木枠で縁取られており、下部に突き出たフラワーボックスもアルミではなく木枠で、しかも凝った模様が施されている。もちろんそこには可憐な花。所々開いて いる窓からはそよ風に揺れるレースのカーテンが見える。まるでの外国のような趣きだ。本当にここが高校の寮なのか疑ってしまう。
外観に圧倒されながらも、俺は寮の扉を開けた。ロビーは2階までの吹き抜けになっており、右手に腰から上がガラス張りになった小部屋があった。ガラスは引き戸になっていて半分ほど開けてあり、中には髪の長い女性がいる。背丈からしておそらく座っているのだろう。
「あの、すみません、今日からお世話になる者ですが……」
声をかけると、女性が立ち上がり、振り返った。同い年くらいの女の子だ。
「こんにちは、転校生の方ですね。お待ちしておりました、寮長の篠崎渚です。学年は貴方と一緒ですので、タメ口でいいですよ」
にっこり笑う口元からは柔らかな声。優しげな雰囲気の人だ。
さっとドアまで歩いて来ると中に引いて開いてくれ、俺が通れるように一歩脇に退いてから話を続ける。
「寮での決まりをご説明致しますので、こちらへどうぞ」
言われるままに中へ入った。中央に机があり、椅子が2脚。壁際には棚があり、ファイルが几帳面に並べられている。
おそらく勉強していたのだろう、寮長は机に広げられていたノートや教科書を手早く片付け、椅子を勧めてくれた。学校で良く見かけるパイプ椅子ではなく、膝置きのついたがっしりした椅子である。
「では、説明していきますね」
篠崎はふわふわした長いスカートを履いていたが、その上からでもきちんと脚を揃えているのが分かる。背筋もすっと伸びている。けれど柔和な印象は変わらず、堅苦しさは感じさせない。
寮長は一番上に寮則と書かれたプリントを指差しながら説明を始めた。
「まず、書いてあるように寮の門限は7時、夕飯は6時から10時です。申告して頂ければ門限は10時まで伸ばすことができます。外泊する場合には届け出が必要です。」
「寮内は男子用区域、女子用区域と共同の区域があります。男子用区域に女子が入ることはできません。逆も同じです」
「普段は、今いる寮監室に寮監さんがいらっしゃいますので、寮内で何かあれば寮監さんか、私におっしゃって下さい。寮監さんと私の携帯の番号もこちらに書いてありますから、遠慮なくどうぞ」
暫く淡々と話していた寮長がそれから、と言って茶目っ気のある目になった。
「門限以降も寮の裏庭は自由に利用できます。利用用途は……今日の夜、確かめておくといいと思います」
どうしてはっきり教えてくれないのか気になったものの、頷いておいた。
「では、こちらが貴方の部屋の鍵です。寮内は迷うことはないと思いますが、間取り図をお渡ししておきますね」
これで説明は終わりです、と寮長が締めくくっている所で部屋の扉がばん!と開いた。
「灯(あかり)ちゃん」
振り向くと、制服のようなチェックのブレザーを着たツインテールの女の子が立っていた。赤色が好きなのか、服も髪を結ぶリボンも赤色だ。この学園に制服はないので、おそらく私服なのだろう。
「おっ、そいつが今日から入寮してきたやつか!」
「灯ちゃん、そいつだなんて失礼よ」
寮長がたしなめるが聞いていない。ツカツカと歩いて来るとはきはきと喋った。
「私は灯、1年生だ。よろしくな!」
えらく元気なお嬢さんである。
灯は寮長の方を見て言った。
「渚、寮則の説明終わったか?」
「終わったわ」
「じゃあ共同の場所の案内してやるよ!」
灯に腕を引っ張られ、俺は勢いに負けて立ち上がった。
「丁寧に案内するのよ」
少し不安そうな寮長に「分かってるって!」と返事をして灯はずんずん歩き出した。

「共 同の場所なんて狭いもんだくどさ」と言いながら灯が案内してくれたのは食堂と裏庭だった。どうやら認識の差があるらしく、食堂も裏庭もどう見ても広い。食 堂は机がゆったりした間隔で配置してあり、裏庭は目線の高さの植え込みで難易度の低い迷路のように入りくんでいた。どちらもまばらに人がいて、ジュースを 飲みながら談笑していたり、散歩していたりする。
「後はー、男子区域の入り口を知っとけば多分寮内で困ることはないと思うな」
と言って灯は踵を返した。どうやら玄関ロビーへ戻るらしい。
「なぁ、男子が女子の区域に入ったら罰則でもあるのか?」
何気ない疑問に灯はにっと笑って答えた。
「1ヶ月の外泊及び土日の外出禁止!なかなかきついぞ~、破るなよ?」
予想以上に厳格なようだ。
玄関ロビーまで戻ると左右を指差しながら灯は言った。
「寮監室の後ろにある廊下が女子区域の入り口、反対が男子区域の入り口だ。本当なら校舎も案内してやりたいけど、今日は荷物も片付けたいだろ?」
頷くと灯はまた歯を見せて笑って手を振った。
「私も部屋に帰るよ。じゃあな!」
高谷実里
作家:高谷実里
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