堕ちこぼれウィズと魔法の成績表

アリシアには教えない( 2 / 4 )

アリシアの秘密とアリシアへの秘密

 重厚な造りの扉や細密な彫刻が施された窓枠や石柱などを見ても、アリシアの家も由緒ある家なのだと再確認させられながら、通いなれた廊下を、どこにいるのか?ココにいるのか?って冗談を言いながら、ココと連れ立ってアリシアの部屋の扉の前までやってきた。

 しかし、先程のアビゲイル先生との秘密を全て話しても良いものか、と正直疑問符が頭の中を散歩しだして、疑問符が一匹、疑問符が二匹、疑問符が三匹……なんて数えだしたくなる感じでしばらく考え込んでいると、既に扉は開け放たれていて、アリシアが普段かけている片メガネを右目に架け替えていた。と言う事は今僕が考えていた事がアリシアには筒抜けだったって事なんだよね。

 そうなんだよ。アリシアの右眼は確かにセクシーではあるんだけど、それだけじゃなくて魔法の眼ってやつでね。つまり千里眼って言うのと読心術などもこなしちゃうすごい眼なんだ。ただし、アリシアはまだ成長期の段階なので増幅器として片メガネが必要なんだよね。それに彼女の左目は僕の見せびらかし専用の成績表を見る僕の眼と同じ普通の眼なんだ。右眼が特殊なんだよね。また今度その事について書くつもりにしているけど、今はそれどころじゃないんだ。アリシアが秘密の匂いを嗅ぎつけて、男性アイドルに群がるおねいさんよろしく、僕に飛び掛らんばかりの様相を呈しているんだよね。

 「やあ、お待たせしちゃったみたいだねアリシア、へへへっ。」

 「今疑問符の数を数えている時じゃないと思うけどね。さて、その秘密とやらを聞かせてもらうとしましょうかね。ウィズがこの私との間に秘密にするほどの事ってなんだか興味深いわ。親友の私にも話せない程の秘密なわけ?」

アリシアには教えない( 3 / 4 )

章のタイトル嘘じゃん!

 「えっ、いや、あの、その、だから、それで、なので、なのさ。」

 「何がなのさ、なのよ!」とご立腹のアリシア。

 「私が右眼に片メガネをかけていても全てが読めるわけじゃないのよ。なのさでは解らないわ。ほんとに私にも話せない秘密なわけ?」

 「う~ん、ほんとにエムレスト山の重さくらいの超重量級の秘密みたいなんだよね。」

 「それなら尚更聞き出さなきゃね。」なんてウインクしてくるんだけど、千里眼と読心術の他に魅了の技まで会得したのかな?なんて思っちゃった。

 まあ、アリシアは信頼できる人だし大丈夫だからと思い、アビゲイル社長?との秘密の会話を話すことにしたんだけど、ココに聞かれたくないからその事を考えると、アリシアはココをここから追い出してくれた。ココは「え~っ」って言っていたけどね。隣町の畑からイチゴを摘んでくるようにって頼んで。

 そしてアビゲイル先生の申し出を受けた経緯をアリシアに話し出した。


アリシアには教えない( 4 / 4 )

アリシアって扱いやすい!

「とまあ、こんな感じで明日から補習に行く事になってるんだけどね。」

 「私も混ぜて!」

 「ええーっ、ダメだよ。」

 「どうしてダメなのよ、あっ!解った。ホーリーとの事でしょ?二人っきりになれるチャンスがって訳ね。残念でした。それこそ私の一番望んでいないっ!じゃなかった。何言ってるんだろう私。そうねせっかくのチャンスだったみたいだけど、お生憎様。私も明日からついて行きますからね。べーっ。」と顔の色をあれこれ忙しく変えているアリシア。

 「アリシア大丈夫?突然顔が唐辛子みたいに真っ赤になったりしたけど?その時、眼も蚊を追いかけているみたいに泳いでいたけど?」なんて僕も少し反撃してやった。するとアリシアの顔は更に完熟のトマト以上に赤くなっていったんだけどね。ありがとう、アリシア。伝わっているよね。まだ右眼に片メガネしているからね。

 「じゃ、明日迎えに来るからね。アリシアまたね。」と言ってアリシアの部屋を後にしたんだけど、いつもなら「私が迎えに行かないと太陽が沈むまで眠っているでしょ!」とか何とか言ってくるんだけどね。

 ちょっと刺激が強かったかな?ありがとうって言った後に、アリシアにお礼のキスをするイメージを思い浮かべたからさ。ちょっとやり過ぎたかな。てへへ。


親のお仕事!( 1 / 3 )

まずは僕のお仕事!

 そんな思いを抱きながらお隣の自宅に帰りついたんだ。

 その時の心境は気分が複雑骨折したような、それでいて浮かれているような矛盾した変な感じかな?なにせ、成績は悪かったでしょ?叱られるのは数百年前の写真集にも載っている事実でしょうしね。でもホーリーの微笑みを独り占め?って思っているのは僕だけかもしれないけど、そうみたいだったし、アリシアとの事もあるし、てへへ、それにアビゲイル先生との事もあるしね。

 叱られることへの不安と、一人じゃないって嬉しさと、希望や責任、義務なんかを考えると、やっぱり気分が複雑骨折してしまうね。まあ、僕はまだ子供なので出来ることは少ないけど、今出来ることをするしかないね。

 そう!ブービーの成績を叱られるのが僕の今最高のお仕事さ!

 「たっだいまっ。」

 「兄さん、今日は遅かったんだね。」と我が優秀なる弟君がお出ましになった。ってなんで弟に敬語を使わなきゃならないんだよ!僕ってお人よし。なんて考えていると、お母さんも登場あそばされた。ってなんで変な敬語なんだよ。って僕ってお茶目!

 「お帰りウィズ。アルも言っていたけどどうしてこんなに帰りが遅かったのですか。」とお母さん。

 「でへへ、今日も放課後まで愛着のわいた教室の机で勉強していたからなんだ。」なんて見え透いた嘘を冗談のつもりで言ったんだけどね。

 「そっか、成績が悪くて補習を受けていたんだね。納得納得。」なんてアルリードが半分正解を見抜くんだよね。さすが我が弟君って所かな?って褒めてどうするんだよ。

星兎心
作家:星兎心
堕ちこぼれウィズと魔法の成績表
0
  • 250円
  • 購入