あっしのヨタ話

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その5 複雑な配分( 1 / 1 )


  お隣は妻が再婚で前夫との子が別にいて現夫川口氏の子をもう一人生んだ。で、その奥さんがあっしの彼女に悩みを打ち明けるのだそうだ。

  夫婦の稼ぎの関係はノーマル、つまりうちと逆だ。預貯金も家も夫の名義である。


  もし自分が先に死んだら、と奥さんは言う。
 前婚の子供に何一つ相続してやれない。
 すでに相続している自分の親の遺産も、夫や手元にいる子供で分けることとなるのだろう。

 子供はどちらも可愛いが、淋しい思いをさせた年上の子に川口の子の半分はやりたい、さらに、
自分の親からの相続分は二人の子供で等分にするべきではないのだろうか、川口氏は除いて。

 彼には彼の親からの相続分があることだろうし、それを妻である自分は全く貰うつもりはないわけ
だし、と縷々訴える。

 あっしが思うに、これははっきりと三つに分けて考えるべきだね。

 ひとつ、
川口家由来の財産、これは今の直系で相続する。つまりまず川口氏、やがてはその子。

 ひとつ、
奥さんの家由来の財産、これも直系に限る。つまりまず奥さん、やがては二人の子で等分。

 ただこれを一般論としてみると、子
供の数が同数でない場合、誰かが死んでいる場合などややこしくはなるだろうね。血の濃さを考慮すればいいことだが。

 そして最後のひとつ、婚姻中に夫婦で築いた財産。誰の名義であろうと実は半々の権利となるはずだ。なにしろ夫婦は助け合い協同体だからして。

 川口氏の週六十時間もの労働時間を考えると、奥さんが家事をおおかたせざるをえないから、奥さんの稼ぎは少なくてもその家事の貢献分は十分考慮に入れられてしかるべきものであるよね。

 とはいえ、この点、確かに矛盾があるようね。論理がね。
 うちなんかこの点、最近はよほど理想に近くなったよ。文句無く、矛盾無く、全財産のうち、残された片方が七十五パーセント、娘が二十五パーセント相続となる。

 一方、川口氏宅の計算をしてみよう。
血の濃さで言えばいわば子供はひとり半いるわけだから、二対一の割合で分けるか。


 ただ、一般論に演繹すると、たとえば前婚の子が二人いて一人が若死にしたとする。母親としてはこの亡くなった子も相続の数に入れたいかもしれない。彼女が夫より先に死んだ場合だ。
 
 さきほどの「二対一の割合」のうち一に当たる前婚の子らは、夫婦共有財産の四分の一のそのまた三分の一、つまり約八パーセントが取り分となるね。
 ちなみに川口氏の一人息子は一七パーセントだ。

 で、八パーセントのうち、死人の相続分である半分の四パーセントを血の濃さに従って分けるのだから、実の兄弟に二、半分の兄弟に一、という割り振りだ。 

ここに関しては川口氏の子が不利にはなるが、しかし結局、十七プラス一、三イコール約十八パーセントが、
母からの遺産となる。

 元夫の一人残った子には哀れにも僅か四プラス二,七六つまり約七パーセントしかない。もっとも実父からの遺産は丸々もらうことだろうが。

 あっしの流儀でいくとこうだが、最近婚外子の権利について法律の改定が起こった。これはどうも男親、つまり主なる稼ぎ手が愛人に生ませて、あるいは愛人が生むといって、十分な家族としての庇護なしに育った場合なのだろう。

 勿論のこと,父方の相続財産、及び婚姻中に増えた財産のうちの半分である父親の遺産から妻が半分を相続した残り分に関して、婚外子にも嫡子と同等の権利があるらしい。

 このことと、川口夫人の場合とは少々違うのか。どうなのか。
 法の詳細は知らないが、もし前夫が再婚しない場合、片親というハンディは、婚外子同様であろうよなあ。

 実はこれがけっこうあっしの友人らの身の上でもあるのですがね。よその家のことなので、あっしらは極めて理性的に計算した。ありえたかもしれない事として極めて真剣にも。

 彼女は、あっしの大好きな表情をした。いくつになってもその表情は好きだ。考えるとき彼女の瞳は右上にくりくりっと動く。媚びたわけではまるでない。そこがいいのだけどね。こんな女は余りいないよね。

 恋人気取りの振る舞いをしたら少々喜んで相手してくれるかも。その望みはまだ残っているかも。
    ーー終ーーー

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東天
作家:東天
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