「葛西、休憩入っちゃえよ」
「はい」
バイトを始めてから、半年が経った。
最近は、キッチンの仕事だけではなく、ホールの仕事もするようになった。コミュ障で、ひきこもりだった僕が、接客を行っている。
自分でも、信じられない。でも、これは、夢ではない。
0
雨の日の海は、キレイだ。
潮風が、心地いい。
目を閉じると、全身が海になる。
「(俺は海だ)」、僕はそう思った。
「どうも、ありがとうございました!」
「(でけえ、声だな・・・)」
「おい、雨降ってるぞ!」
「うわぁぁ、結構、強いね」
身体の中を、魚たちが泳いでいる。海が作られていく。日光、潮流、岩、砂、海草、プランクトン・・・・
「これどうぞ」
「あっ、ありがとうございます!」
気が付いたら、お客様に、傘を渡していた。
60 / 192