サイレンス・オブ・マッドネス

ENDING


『……悲しみに負けず、気丈な笑顔で会見を締めくくったことに、本当に感動してしまいました』
 29インチのTVモニターの中で、ネオ東京ブロードキャスト・ニューズの花形女性キャスター本城塔子が、分別臭い口調で言った、
「ふん、その笑顔が曲者なのさ」
 ケージは不機嫌に鼻を鳴らす。
 事件から2週間が経っていた。ケージと紫城姉妹は〈ガーデン〉でネオ東京に戻り、約束の5億クレジットは翌日には降り込まれていた。1週間後、大門雄一郎が病死、大門豪作は富士の生化学研究施設内での薬品事故に因る爆発で死亡、夫と息子を同時に失ったショックにより、大門絹子は精神を病んで外国のダイモン系列の特殊病院に入院したとの公式発表があった。その3日後に葬儀。大々的に執り行なわれた大門雄一郎、豪作親子の葬儀に喪主として参列した大門美朋は、17歳の少女には過酷すぎる運命と、それに耐える堂々とした美貌で全世界の同情をひいた。
 そして今夜、ダイモン・コンツェルンの新後継者として、藤堂冬彦を後見人に記者会見を開いたのだった。
「何TVに文句言ってんの?」
 隣に座った絵梨香が、ケージの顎のラインを右手の指先で撫でた。愛らしい瞳でケージを見る。
「女は怖い、ってことさ」
 ケージはモニターを切った。胸くそ悪かった。あの日、富士で見せた大門美朋の表情を忘れることができなかった。あれは人殺しの笑顔だ。藤堂は最初、引退すると明言していた。しかし結果的に、ダイモンは雄一郎時代よりも遥かに強力な独裁体制が出来上がりつつあった。たった2週間でだ。一見すると、権力は藤堂冬彦に集まっているように見えた。しかし、ケージには裏であの魔性の美貌が哄笑しているのがはっきりわかっていた。
 もしかすると、この事件で俺は最大の魔物を解き放ってしまったのかもしれない。
「何よ、本城塔子が嫌いなの?」
 絵梨香は美朋の変質に気づいていない。というより、事件の終わった今彼女にとってダイモンのことなど関係ないことなのだろう。
「お前以外の女は誰も興味ないよ」
 ケージ優しく絵梨香を抱き寄せる。ここは〈ディジール〉の例のプライヴェート・ルームだった。ボタンひとつで、ふたりの座るソファーはベッドになる。
「あんっ」
 あおむけに倒れ、絵梨香は甘えた声を出す。
「可愛いな」
 額に落ちかかった前髪をサラッと掻き分け、ケージは絵梨香に口づけした。
「あたしも女よ」
「ああ、可愛すぎて怖いよ」
「……馬鹿」
 軽口をたたき、ふたりは口唇をついばんだ。
「ああ……」
 耐えきれなくなって、絵梨香がためいきをつく。とろんとした瞳が潤んでいる。ケージは素早く絵梨香の服を脱がしていった。少女の白い肌は、躯を重ねるごとにますます柔らかみを増していた。
「ちゃんと見せて」
 ソファーベッドの上で全裸で丸まる絵梨香の躯を押しひろげ、ケージは言う。
「ダメ……、恥ずかしい」
 言葉とは裏腹に、絵梨香はほとんど抵抗しない。口唇には蕩けた微笑が浮かんでいる。 かたちのいい乳房は、ほんの少しだけ大きくなった。はや薄桃色に染まり、ぴん、と皮膚が張り詰めている。なだらかな腹筋が呼吸に合わせ上下する。M字に開いた両脚の間で、きらきらと露をはらんだラビアがぷっくりと充血していた。
「んっ」
 ケージが乳首を口に含んだ。唇で擦り、舌のさきで優しく舐める。
「はっ、ああ……」
 絵梨香はうっとり目を閉じた。無意識のうちに自分の手を口元に持って行き、指先を咥える。ケージは絵梨香の股間にてのひらをあてがった。びくん、と期待に少女の躯が弾む。
「うん……」
 絵梨香の眉間に皺が寄った。ケージは、ゆっくり、ゆっくり、5本の指を巧みにスライドさせ、秘唇を愛撫した。クリトリスを軽くノックする。
「あんっ」
 腰を浮かせて逃げる絵梨香を、空いているもう片ほうの腕を脇腹にまわし、ぐいっと引き寄せる。花弁をそっと開き、愛蜜がとろとろ流れ出してしとどに濡れそぼる秘孔に、中指を挿入した。柔襞の入り口浅くで軽く指を曲げる。
「ああっ、ダメッ、いやあ……」
 くねくね桃尻を波打たせ絵梨香は喚いた。アッという間に頭が真っ白になり、ぷしゅうっ、とさらさらの液体が噴きあげ、アヌスから内腿までべっしょりになる。
「はっ、はっ、はっ……」
 だらしなく口唇を開き、ピンク色の舌がチロチロ踊る。涎が顎に垂れた。
「可愛いぜ、絵梨香」
 ピン、と尖った乳首から唇を離し、ケージは絵梨香の顔を覗き込む。
「お願い……、もう……」
 とろんとした瞳で訴える。ケージは自分も服を脱いで全裸になり、おもむろに少女の躯にのしかかった。少年のしなやかな筋肉の重みすら、エクスタシーに包まれた絵梨香には心地好かった。
「きて……」
 下からしっかり抱き締めて言った。ケージは肉棒の根元を握り、亀頭を秘唇にあてがって膣口の周囲に擦りつける。すりゅっ、すりゅっ、と愛蜜が弾ける淫らな音が響く。
「ああっ、意地悪しないでっ、早くっ」
 涙と汗と涎でグシャグシャになった顔をケージの胸板に擦りつけ、絵梨香は懇願した。
「ぐっ」
 亀頭の先が膣口に潜り込む。
「ああ……っ」
 じんわりと媚肉を押し開いて、肉棒が埋め込まれていく。桃尻の奥から脊椎を通り、閃光が絵梨香の脳髄を満たしていく。
「!」
 弾けた。あああああああああああああああ……、とケダモノの叫びを轟かし、全身を痙攣させ絵梨香は狂った。肉襞が容赦のない力で欲棒を締めつける。抜群の感度、信じられないくらいの快感にケージは耐え、肉棒を根元まで埋めた。押し出された愛蜜が溢れだし、ケージの股間まで熱く濡らす。
「出すぜ」
 今日の絵梨香はハイペースだった。全身が超敏感になっていて、ケージは遠慮なく最初の射精をすることにした。4、5回はできる。ゆっくり可愛がってあげよう。
「うん、ん、ふんっ」
 慌ただしく絵梨香はうなずく。一心に快楽を貪り、ケージにしがみついてすべてを委ねてしまっている少女の姿はたまらなく愛らしい。
 荒々しく腰を使い、挿送を開始する。
「あんっ、あっ、はっ、ふあっ、ふあああ……」
 喘ぎながら、絵梨香は幸福な微笑を浮かべていた。
「ああっ、いい……、いいよう……、気持ちいいようっ……」
 夢見る口調で訴える。ずりゅっ、ずりゅっ、と淫猥な擦過音をBGMに、肉襞がからみつき蠢く。どれほど淫乱になっても、絵梨香の少女らしい清楚さ、可憐さは失われない。
「好き、ケージ、好きなの、ああっ、……いいっ」
「好きだよ、絵梨香」
 ケージは絵梨香をしっかり抱き締めた。きゅうっ、と肉壺が一気に収縮した。ケージは強引に肉棒を根元まで突っ込み、思い切り放出させた。
「……………」
 絵梨香は声もでない。呼吸も止まり、子宮の奥まで精液が奔り、叩きつけられるのを味わっている。
 一滴残らず注ぎ込んで、ケージは動きを止めた。
「はあ〜〜〜〜〜〜……」
 長い息を吐き、絵梨香は脱力する。
「愛してる……」
 うっすらと瞳を開き、ふたりは優しく口唇を合わせた。
 そのままじっとして動かない。
「……まだ、なのよね」
 濃密な時間の後、不意に絵梨香が口を切った。
「ああ、まだまだ可愛がってやるさ」
 絵梨香に腕枕する姿勢で、優しくケージは答えた。
「ううん、大門美朋のことよ」
「え?」
 関係なかったんじゃないのか? ケージは驚いて絵梨香の瞳を見返した。
「気になってるんでしょ?」
「ああ……、まあな」
 ケージは半身を起こし、ソファーベッドに付属しているコンソール・キャビンから煙草をとって一本銜え、火を点けて紫煙を揺らす。
「いつか……、美朋を《掃除》する依頼がくるかもしれん」
「何だ、じゃ、当分退屈しないで済むじゃないの」
 パッと明るい口調に変えて、絵梨香はベッドから立った。快楽の余韻に染まった少女の肢体は輝くばかりに美しい。
 いつのまに、こんなに強くなったのだろう?
 大門美朋と同じように、絵梨香も、変容したということか。
「そうか、そうだな」
 ケージの口元に、ふたたび《掃除屋》の不敵な微笑が蘇った。
「ね、新しい水着買ったのよ、いつ海に行く?」
 部屋の隅に置いてあった包みから水着を取り出し、絵梨香は話題を変えた。
 太陽光線の時間帯によって色彩が変化する新素材のマイクロビキニだ。
「いつでもいいよ」
「じゃ、あたしが勝手に決めちゃうね」
 とびっきりの笑顔を向ける。
 相手が魔性の女神でも、この聖らかな笑顔さえあれば平気だ。
「楽しみだなあ、海よ、海、やっぱり夏だもん」
 まったくその通りだ。
 熱い季節は、まだ終わっていない。
 
 END
士塔渡
作家:士塔渡
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