「やっぱり来るよ」
通り過ぎかけていた配達員の青年も振り返る、大声である。
「カレンダーとか、手帳とか、あとスマホにも入れておく。
来年ここに来ることだけは覚えてるように頑張る。そのことだけは本当だから。でも、覚えてなくても来るから」
猫に人差し指を向け、
「てなわけで、よろしく!」
雑な一言を加えて、今度は手すりに腰かけ、颯爽と滑り降りていくのだった。
(ひとりぐらいかっぱらっていってもいいんだぜ)
ふと、遠い昔に宮司が雑に鎌をかけてきたことがあったのを思い出す。
どれにしようか迷っている、と答えたら尻尾を踏まれたが。
そんなわけにいくかと、猫は少女の後ろ姿を見送りながら、夜明け近くの空に向かって盛大に息を吐いた。