コンテストお題「花見酒」

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★本の作成にあたって★
・コンテストお題イラストは、表紙、挿絵、巻末など、作成した本のどこかに残すようにしてください。
・表紙には、画像内、または本の編集ページ内の「表紙をつくる」機能でタイトルを記載してください。
・規定ページ数は20ページ以内(表紙・お題イラストは含まない)ですが、文字数に制限はありません。
(文庫本を基準とした場合、600~700文字以内が目安です)


【募集作品】
コンテストお題イラスト5点のいずれかを題材にした、20ページ以内の「小説」「マンガ」「エッセイ」「詩」など、形式を問わないオールジャンル作品(18禁作品を除く)。
日本語、未発表、作者オリジナルの作品に限ります。

【応募方法】
①コンテストお題イラストからN次創作をおこなってください。
②お題イラストのN次創作本を公開する際に表示される、「コンテスト応募フォーム」に入力してご応募ください。
※forkNへの会員登録が必要です(無料)

【応募資格】
・forkN会員であること。
・年齢、職業、国籍、プロアマ問いません。

【商品】
大賞1名 賞金10万円/スマートフォン書籍アプリ化佳作3名 賞金1万円/スマートフォン書籍アプリ化forkN賞1名 Amazonギフト1万円分/スマートフォン書籍アプリ化

【募集締め切り】
2012年7月31日

【審査結果発表】
1次審査発表 8月20日(月) 
結果発表 9月3日(月)

【注意事項】
・応募締め切り時点での作品を評価の対象と致します。また、締め切り後は、誤字修正以上の大きな更新はなさらないようお願い致します。
・受賞作品は、結果発表後1か月間の公開(無料)をお願い致します。
・ペンネームは、受賞発表や宣伝のために使わせていただく可能性がございます。
・結果は応募フォームに入力いただいたメールアドレスに通知致します。
・作品の著作権は作者に帰属しますが、応募作品、ペンネーム、作品コメントが、審査結果の発表、本サイトのPRなどのため利用される場合がございますこと、あらかじめご了承ください。
・その他、コンテストにかかわるお問い合わせはこちらからお願い致します。

花見酒

 

 

 「花見! 花見なのニャ!」

 酒、とでかでかと書かれているひょうたんを担いでどこかへ急ぐ猫又、弥七。

ひょうたんに結びつけてある紅白の縄。

それを器用に片手で持ち、テコテコと走っていく。

 「早く! 早くいかないと遅れてしまうのニャァァッ!」

二本の尾をピンと伸ばし、走りを更に加速させる。

 「やしっちゃん! お急ぎ~?」

 その横に、スッと現れた少女、月詠 凛(つくよみ りん)。

白く長い髪と、ピンと伸びた耳を揺らしながら、軽やかに弥七の隣を走る。

 「凛! お前何やってたのニャ!? もう儀式が始まるのニャァ!」

 「チェ…やっぱり行かないとダメ?」

 人差し指を口に当て、困ったように首を傾げる凛。

 弥七は、ハァ…と溜息をつき、空いている方の手の指を凛に向ける。

 「当たり前なのニャ! というか、凛の為の承認式でもあるのニャ! それでもこの森の姫なのニャ!?」

 「あぁ~もう! ニャ~ニャ~うるさいなぁ! だって、好きで姫になった訳じゃないし、面倒くさいんだもん!」

 頬を膨らまし、そっぽを向く凛。

 「ンニュゥ…でも、儀式の後にはお祭りなのニャァ! そしたら凛の好きな桜酒も飲めるのニャ!」

 「むぅ…桜酒……。しかたないなぁ、ちょっとだけだからね~!」

 流石に好物の名前を出されると、口元がゆるむ凛。

 「ニャ、幼なじみのオイラも鼻が高いのニャ!」

 そんなやりとりをする内に、儀式の会場が近づいてきた……。

 

 「ウニャァ~」

ひょうたんを置いて、倒れ込む弥七。

 「だ…、大丈夫……?」

 「フニュ、大丈夫ニャ…。凛は早く王様の所へ行くのニャ~」

言い終えると、丸まって眠り始める弥七。

 「もう、分かったわよ…」

 

 

会場には桜の巨木が立っていて、辺り一面を桃色に染めている。

辺りも少しずつ夕闇に沈んでいき、いくつもの提灯に明かりが灯る――――。

そして、太陽が沈み……。

 

 「お父さーん!」

 「おぉ、凛! 待っていたぞ!」

 巨桜の足下、凛の父が腕組みをして待っていた。

よほど待ち遠しかったのか、満面の笑みを浮かべて……。

 「ねぇ、お父さん。私、本当に認めて貰えるのかなぁ…」

 不安そうに問う凛に対し、父は

 「ハッハッ! 大丈夫だ凛。お前は俺に似て、豪快で心優しい子だ! それに…」

 「それに…?」

 「この森の女王なら、お前くらい元気な酒豪娘じゃないとな!」

 ガッハッハッ! と大口を開けて笑う父の隣で、凛は呆れながらも笑顔を浮かべていた。

 「もう、お父さんったら!」

 

  「王様、姫様…。準備が出来ました」

 「あぁ、ありがとう。じゃあ、行こうか、凛」

 「……うんっ!」

 

 

―――― 桜木の森の奥深く、人間は立ち入ることが出来ない森の奥深く…。

世にも美しい桜の木がある。

そこでは百年に一度、森の女王を決める桜姫式(おうきしき)が開かれ、森の住民達が女王の承認をするのだ。

そして、今日もその式が開かれる――――

 

 

 「森の住人達よ! 今日は、集まってくれて感謝する!」

 「百年間、王の座に就いてきた私だが、今日からは私の娘、凛がこの森の王女になる!」

父の言葉が終わると住民達から、歓声の声が上がる。

 「ウニャ……ハッ! 寝ちゃってたニャ!?」

 「…………ニャア……凛……。立派になったのニャァ~」

他の動物たちの陰に隠れて、ここにも1人…いや、一匹の歓声が上がった。

 

 

 「うむ……凛、承認されたぞ! まずは挨拶をしなければな!」

 「う、うん…分かった……」

緊張の糸を張りながらも、凛は堂々とした態度で挨拶を始めた。

 

 「月詠 凛です。 この森の新しい女王として承認して下さり、ありがとうございます。」
 「正直、女王なんて私のがらには合わないって思っていましたが…」
 

一息の間を入れて、凛は言った。 

「みんなに、もっと認めて貰えるような女王になろうって、決めました!」
  ニッ、と笑うと、再び住民達からの歓声。
 それに混じって、大きな拍手も聞こえてきた。
 
 「これから、よろしくお願いします!」
 軽くお辞儀をする凛を横目に、父も満足そうに笑う。

 

 


 「それでは皆の者! 祭りを始めるぞぉっ!」
 凛の父の声が響き渡ると、今日一番の歓声が聞こえた。
 「もう、みんな私よりも祭りの方が大切だったのね!?」
 ガックリと肩を落とす凛。
 「ニャハッ! そんな事無いニャ! 少なくてもオイラは凛に拍手していたニャ~」
 「弥七……ありがとねっ」

 「どういたしましてニャー!」
 そう言って、笑い合うと、祭りだ祭りだ! と住民に混ざって騒ぎ始めた。
 
 「あぁぁぁっ! お酒! 桜酒ちょーだいよっ!」
  「はいニャ! 凛、せっかくだから巨桜の上で花見酒ニャ!」
 弥七は、ひょうたんを背負って巨桜の上に登っていく。
    「あっ! ちょっ、待ってよ!」
 凛も弥七に続いて登っていく……。

 

 「ふう、疲れたニャ」

 「猫のくせにもう疲れたの?」

 「そんニャ事言われたって、酒をしょってたら仕方ないことなのニャ!」

片手で凛の肩をパシパシと叩く弥七

 「あ~、ハイハイ。 じゃあその酒、とっとと飲んじゃいましょうかっ!」

 「ニャア~! 桜酒ニャ~、オイラも飲めるのを楽しみにしてたのニャ~!」

  トクトクトク……

大きな酒器いっぱいに酒を注ぎ、カチと酒器を合わせる。

 「かんぱ~い!」

 「なのニャー!」

 

ゴク、ゴク……と喉を鳴らし酒を飲む2人。

何よりも幸せそうな笑みを浮かべ、酒を飲み干していく。

 

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「プハッ! おいっしィー!」

「凛、少しは花も見るのニャ! 綺麗な夜桜ニャ……」

うっとりと桜を見つめる弥七。

 「はぁ~あ! 弥七ったらロマンチストねぇ~。私なんて、この森の王女様だから、お花見てゆっくりお酒を飲む時間な 

 んて無いわよ! まぁ、あんたには関係ないけどね!」

手をパタパタと振りながら弥七を挑発する凛だが……。

 「ニャ? オイラも忙しいのニャ、なんたって今日から大臣を任された身なのニャ~!」

 「……え?」

そして、三秒間の沈黙の後、凛はこう言い放った。

 

 「なんですってェェッ!?」

 

その声は、お祭り騒ぎの住民達をしのぐほど、大きな声だったという……。

 

 

西庭 ハル
作家:西庭 ハル
コンテストお題「花見酒」
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