K・TSUIHIZI
ヒロNは、バカである。
いい歳をして、全然ダメなやつである。
ボクが、ヒロNと会ったのは、今から20年位前のことで、やつは、某広告代理店のコピーライターをやっていた。
見たとこ、かっこもさえないし、別に、すごい才能の持ち主という感じもしなかったので、まあ、適当に仲良くしていたけど、ちょっと、同い年ということもあって、気は合ったほうかな。
このヒト、付き合ってみると、本当に、バカであるし、お人よしである。
だから、バカゆえに、ヒトに迷惑をかけることはあるんだけど、基本、そんなに、ヒトを貶めるような悪さはしない。というか、できない。
ヒロN自身が、書いていないので、僕も書かないけど、このヒト、この本に書いてある以上に、いろいろヒドイ目に遭っています。この本に書いてある3倍くらい悲惨。
だから、本当のことを全部書くと、しゃれにならないかもしれない。きっと読者は、引いちゃうと思います。
それなのに、本人は、相変わらず、ケロッとして、オヒトヨシもいいところ。
ヒトに騙されたり、利用されたりしている。作家になってからも、それは変わらない。
もうバカとしか言いようがない。
ここまでくると、いっそ、表彰したいくらい。
で、僕は、適当に、この男とはつきあっていたのだけれど、3年前、メイド喫茶を閉店してから、
ちょっとして、「オレ、やっぱ、物書きになるよ」と言ってきてから、どうも、巻きこまれ気味で、ヒロNの表紙装丁とか、デザインとか、全部やらされている。
だから、forkNにリリースされている本は、全部、僕のデザインです。
もう一度、言いますが、このヒト、バカです。
なんかエラそうに、「サブカル系恋愛指南役」とか名乗っているけど、もうその時点でバカ。
だって、50過ぎたおっさんが、女の子のことを、モテない男子のために、毎日毎日考えているんですよ。
そんなおっさんいないよ。
立派なおっさんだったら、もっと、取り引きがどうとか、国の助成金がどうとか、銀行の融資がどうとか、女の子のことでも六本木のクラブの女がどうとか、そういうことを考えているものでしょ?
それが、「合コンのテクニック」とか「メールはこう打て」とか、だもんな。
本当、よくやるよ。
しかし、僕は、このヒトのファンを、少なくとも、1人だけは知っています。
それは、うちのかみさん。
僕が、出版社から、刷り見本として、もらってきた本を、いつのまにか寝室に持ち込んで、寝る前にいつも読んでいた。そして、大爆笑。なんか、ツボに、はまったらしくて、ヒロNの新作を待ちわびる始末。すっかりファンになっています。
どうも、この男、男子より、女子が、はまるみたいで、僕の仕事場にも、しょっちゅう萌え系の女の子を連れてやってくるので、なんか困る。
金もないし、外見さえないし、バカなのに、どうして、女の子がなつくのか、全く不思議。
「女の子の取扱い」シリーズに出てくる女の子たちは、全員、ヒロNがメイド喫茶やっていた時からの、メイドの子たちで、皆、店がなくなった今でも、ヒロNになついている。
こんな金のないおっさんについていってもしょうがないのになあ。
案外、この「女の子の取り扱い」シリーズ、本当のことが書いてあるのかもしれない。
だから、いつも、「こいつ、相変わらず、バカだなあ」とか思いつつも、「ひょっとしたら、もしかしたら、化けるかもしれない」などと、大穴馬券を買ったつもりで、つき合っているのです。
それに、
世の中、リコウを見ているより、バカを見ているほうが面白いってこともあるから。