「あんたさぁ、さっきから万が一、万が一って言ってるけど、その万が一のために、高い金取るんだろ、それって詐欺じゃねぇ? 二人に一人がガンになるぅ? それってドコ調べなわけ? それとも脅迫?」
うそぉ~!
どう言えば分かってもらえるのぉぉ?
なんだかしゃべればしゃべるほど、誤解を招いてしまっているような気がする。
室内の暑さに、眩暈さえ覚え、あたしはジャケットを脱いだ。
薄い黄色のブラウスは汗で身体に張り付いて気持ちが悪い。
「か、掛け捨てじゃないタイプの保険もちゃんとありますっ! それだと十年ごとに 」
「あぁ~、うるせぇ、うるせぇっ!」
広げたパンフレットを足で踏みつけながら、年配の男があたしの目の前に立ちふさがった。
その顔は赤らみ、目が据わっている。
「ねぇちゃんさぁ~、せっかく俺たちが酒飲んでるのに勝手に入ってきて、なんなんだよっ!」
あたしは身の危険を感じて、息を飲んだ。
「あ、あの……す、すみません……でも、保険の契約が取れなくちゃ、あたし、会社をクビになっちゃうんです……」
一件でもいい、契約が欲しいっ!
これはあたしの切実な気持ち……。
「それが俺たちに、なんの関係があるって言うんだよっ!」
男はあたしに顔を近付けて怒鳴った。
「うっ……」
彼の吐く息は酒臭くって、思わず嘔吐(えず)いてしまった。
そんなあたしの顎に手を掛けて、男はまじまじとあたしの顔を見た。
「あんたさぁ、よく見たら、可愛い顔してるじゃねぇか」
「え?」
「そうだなぁ、俺たちを気持ちよくしてくれたら、考えてやってもいいかなぁ~」
男は意味ありげにニヤリと笑った。
周囲を見渡すと、他の男たちも同じような顔でニヤニヤと笑いながらあたしを見ている。
なんだか不穏な空気を感じたけど、ここで逃げ帰ってしまえば、あたしはクビ決定っ!
病気の母と、受験生の弟、家族は路頭に迷ってしまう。
「ど、どうすれば……いいんですか?」
気持ちよくって、なにをすればいいんだろう?
「じゃあ、とりあえずコレをしゃぶって貰おうかな……」
ガチャガチャとベルトを緩めると、男はそれを取り出した。
「う、うそ……」