真紅の舟

   ランダムに通信されていた。
「これは、警告です。 今後ある出来事が起こります」
  警察にもマスコミにもFAXが届いていた。
  イタズラなのか、場所や内容は、いっさい分からない状態だった。
「何だこりゃ、こっちは、毎日が忙し過ぎるんだよ、バカ」
  鬼刑事と誰もがいう蔵間が紙を机に叩き落とした。

  暗くなった帰り道を車で走り、バックでガレージに入れた。
  扉を閉めてキーでロックをかける。
  家に向けて二、三歩 歩いた時だった。
(・・・叩き伏せるなよ、紙を・・・ちゃんと見ているんだよ・・・君の家も分かったし、嫁さんのうち、子供の行っている・・・)
「誰だ、何者だ、何処にいる!?」
(・・・そうアセるなよ、話し合いをしようぜ・・・逆らうと後悔する事になる・・・)

  表向きでは、何も無かったように平凡な日々が続いているように見えていた。  しかし、裏では、着々と物事が進められ、事態は、化膿し、悪化させられていった。

   仕事だから仕方なく組に成ってやっているが、普段は、一人で動いている蔵間 力 三十五才だった。
  仕事以外で余計な気を使いたくないという考えからだった。
  たまに勉強がてらに組になって仕事をさせられる若手のホープ 新渡戸 賢人 二十四才とたまたま仕事時間内に力と遭遇して軽く突っ掛かって来たのだった。

「蔵間さん、何か、この頃 変ですよね~、ちょっとした瞬間 何か、思いつめているみたいな、考えているみたいな~、前と違って鋭さがないように見える!?」
「・・・フ~、そうか、そういう風に見えるか~!? 少し疲れでも出てきたかな~、ハハッ」
  人に悟られないように軽く笑ってみせた。

  しかし、素質がある刑事のDNAか、しつこさが出て話が長くなってしまい、蔵間は、つい仕事がらで人の少ない場所に若僧を誘ってしまっていた。
「・・・だから言ったろう、何も無い、そんなんで食いついて来るな、それを仕事に・・・」

  一瞬にして蔵間は、目を見開いてしまった。
  若僧の直ぐ後ろに《オレンジ色の奴》が居たからだった。
  瞬きをする。
「・・・ヤッ、ヤメロー!?・・・」
  オレンジの帯やシールドがゆっくりと新渡戸を包んで声や姿を見えなくしていった。
  そして唾を飲み込んだ瞬間にもう、目の前には、居なくなっていたのだった。  声を出さず、瞬きをして、床に膝を落として両手をついて頭を足らしたのだった。
「・・・フ~フ~・・・、新渡戸」
  出会った事のない恐怖感に打ちのめされたのだった。
  冷や汗を流し続ける。

  気分が高ぶり、行き着いた末に憎んでいる人を《ヤッテヤロー》と人から、怪しまれないように近付き、行動を起こしたところ、もめ合いながらも始末をしたが、自らも怪我を負ってしまった。
  し・か・し、人間らしい赤・い・血・は、待てど待てど・ずっと出てくる事は、なかった。

  傷口を見て・・・両の手を見直し・・・呼吸を荒げ・・・目を見開いた。
  右ひじから、先が無くなる・・・シルバーの腕や指先が三段階に伸びてくる・・・左ひじから先が無く・・・機械の腕や指先が三段階で出てきて・・・顔部分が二段階でふさがれ・・・声を絶った・・・180度右回りし・・・斜め45度で機械が止まる。
  両膝をついて両腕を広げた。
  体を後ろに反らして声無く叫んでいた。
  顔部分の六つの赤い目が光る。

  ふと我に返ると人間の姿に成っていた。
(・・・たちの悪い夢か!?・・・)
  しかし、目の前には、心臓の前辺りには、宙に浮いた物があった。
  反面は、解読不能の文字がいっぱい彫られている石で反面は、輝く程のナイフだった。
(・・・刺せば君は、神に成れる、全てが思いのまま、痛みは、無い・・・)
  それを刺して叫ぶと体内から激しい光が放出され、包まれ、消えて無くなった。 

  ここ数ヵ月で何か不可解な死亡事件が多発していたのだった。
「キッサマ~、ここで何やっているんだ~」
  辺りを確認する武道派の頭 鈴木啓二郎 三十六才がいた。
「他の奴らは、ゲームを楽しんでいる、ここには、アンタしか居ないよ」

  敏速に動いて机からピストルを取り出した。
「うるさい事を言っているんじゃないよ」
  四発 敵にくらわせた。   うつ伏せに倒れたはずの敵が起き上がって歩いて来た。
  また、数発撃ち込む。

「お前、俺が死なないとビックリしているのか!? 恐怖は、これから始まるんだよ」
  ゆっくりと黒い物体がヤクザの鈴木啓二郎に歩み寄った。
  後退りする鈴木の右肩に黒い手が触れる。
  瞬時に鈴木の人類進化論の姿が五つ並んだ。
「・・・何だ、これは!?・・・」
  一番後ろから、声がした。
「ドケッ、お前じゃない、お前じゃない」
  若い順から、立ち止まるマネキンを左右に払いのけた。
「探したよ、沢山楽しんできたから、もう、いいだろう」
  一番後ろのミイラ状のマネキンを後ろに強く押し倒した。
(・・・ウワッ!?・・・)
  老木を高い所から、叩き落とすように粉々に割られ、地に帰って行った。

迷 彩映 (mei saiei・メイ サイエイ)
作家:MONALI PADORA
真紅の舟
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