真紅の舟

   一人の銃弾音から大勢が集まって来て、時間が経つにつれ、怒濤の嵐から戦争をするが如く、拳銃から弾が発せられるように成っていった。
  スカンッ、実際に敵に当たっているのか、跳ね返されているのか、飲み込まれて!?いるのかは、撃つだけが、精一杯で判断をするという段階にまでには、至っていなかった。

  次第にパッと一瞬消えたり、滑るように動いたり、ランダムに壁や天井に姿を現して移動させたりしていった。
  まるでゲームセンターでゲームを楽しむように、人間の視覚をもてあそぶように早く動いたり、停止したり、リプレイしたりしていく。
  弾の発射率が少なくなる。

  動きが無くなり、不安がよぎった。
(逃げたか!?)
  しかし、突然に目の前に現れた。 もぐら叩きのように床から、出たり、消えたりする!?墓石みたいに見えていた。
  目の前に出て止まった、マウスのようにクリックする。
(ただいま、みなさんの脳に定期的なオマジナイを記憶させました、お大事に、さようなら)
  動きが無くなった。

   ランダムに通信されていた。
「これは、警告です。 今後ある出来事が起こります」
  警察にもマスコミにもFAXが届いていた。
  イタズラなのか、場所や内容は、いっさい分からない状態だった。
「何だこりゃ、こっちは、毎日が忙し過ぎるんだよ、バカ」
  鬼刑事と誰もがいう蔵間が紙を机に叩き落とした。

  暗くなった帰り道を車で走り、バックでガレージに入れた。
  扉を閉めてキーでロックをかける。
  家に向けて二、三歩 歩いた時だった。
(・・・叩き伏せるなよ、紙を・・・ちゃんと見ているんだよ・・・君の家も分かったし、嫁さんのうち、子供の行っている・・・)
「誰だ、何者だ、何処にいる!?」
(・・・そうアセるなよ、話し合いをしようぜ・・・逆らうと後悔する事になる・・・)

  表向きでは、何も無かったように平凡な日々が続いているように見えていた。  しかし、裏では、着々と物事が進められ、事態は、化膿し、悪化させられていった。

   仕事だから仕方なく組に成ってやっているが、普段は、一人で動いている蔵間 力 三十五才だった。
  仕事以外で余計な気を使いたくないという考えからだった。
  たまに勉強がてらに組になって仕事をさせられる若手のホープ 新渡戸 賢人 二十四才とたまたま仕事時間内に力と遭遇して軽く突っ掛かって来たのだった。

「蔵間さん、何か、この頃 変ですよね~、ちょっとした瞬間 何か、思いつめているみたいな、考えているみたいな~、前と違って鋭さがないように見える!?」
「・・・フ~、そうか、そういう風に見えるか~!? 少し疲れでも出てきたかな~、ハハッ」
  人に悟られないように軽く笑ってみせた。

  しかし、素質がある刑事のDNAか、しつこさが出て話が長くなってしまい、蔵間は、つい仕事がらで人の少ない場所に若僧を誘ってしまっていた。
「・・・だから言ったろう、何も無い、そんなんで食いついて来るな、それを仕事に・・・」

  一瞬にして蔵間は、目を見開いてしまった。
  若僧の直ぐ後ろに《オレンジ色の奴》が居たからだった。
  瞬きをする。
「・・・ヤッ、ヤメロー!?・・・」
  オレンジの帯やシールドがゆっくりと新渡戸を包んで声や姿を見えなくしていった。
  そして唾を飲み込んだ瞬間にもう、目の前には、居なくなっていたのだった。  声を出さず、瞬きをして、床に膝を落として両手をついて頭を足らしたのだった。
「・・・フ~フ~・・・、新渡戸」
  出会った事のない恐怖感に打ちのめされたのだった。
  冷や汗を流し続ける。

  気分が高ぶり、行き着いた末に憎んでいる人を《ヤッテヤロー》と人から、怪しまれないように近付き、行動を起こしたところ、もめ合いながらも始末をしたが、自らも怪我を負ってしまった。
  し・か・し、人間らしい赤・い・血・は、待てど待てど・ずっと出てくる事は、なかった。

  傷口を見て・・・両の手を見直し・・・呼吸を荒げ・・・目を見開いた。
  右ひじから、先が無くなる・・・シルバーの腕や指先が三段階に伸びてくる・・・左ひじから先が無く・・・機械の腕や指先が三段階で出てきて・・・顔部分が二段階でふさがれ・・・声を絶った・・・180度右回りし・・・斜め45度で機械が止まる。
  両膝をついて両腕を広げた。
  体を後ろに反らして声無く叫んでいた。
  顔部分の六つの赤い目が光る。

  ふと我に返ると人間の姿に成っていた。
(・・・たちの悪い夢か!?・・・)
  しかし、目の前には、心臓の前辺りには、宙に浮いた物があった。
  反面は、解読不能の文字がいっぱい彫られている石で反面は、輝く程のナイフだった。
(・・・刺せば君は、神に成れる、全てが思いのまま、痛みは、無い・・・)
  それを刺して叫ぶと体内から激しい光が放出され、包まれ、消えて無くなった。 

迷 彩映 (mei saiei・メイ サイエイ)
作家:MONALI PADORA
真紅の舟
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