セクター17(冷凍人間SF)

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ドーム17

家に帰った有希は、しばらくぼう然としていた。
ベットに横たわる自分の体がとても重かった。
ここ何日かちゃんと眠っていなかった。
やがて、ラジオから流れるビゼーの悲しい音に気づいた・・・・。
有希は、初めて泣いた。
いつも包んでくれた優しい森のしらべが音をたてて崩れて行く。
「自分はここにいてはいけない子」
そう、有希には有希の知らない時間の空白があった。
それが何を意味しているのか、有希にはなんとなくわかった。
突然、警戒発信音がした。
「ピピピピピピピ・・・・・」
しばらくして、ドームは閉じられた。
最近ドームはよく閉じられる。
有希「また、眠るのか」
有希は少し憂鬱だった。
地球の環境破壊はとても深刻なものになっていた。
空気の二酸化炭素は行き場を無くし人類は、空と大地にたくさんの壁を作っていた。
そして、一度崩れだしたバランスはコンピューターの予想をはるかに上回り、
ドームの存在さえ危ぶまれた。
当初ひとつ、ひとつのドームのシステムは完璧な循環システムだった。
森を思い通りに修復し、デザインし、まさに人類の理想郷として作動した。

危険レベル5・放射能漏れ

目覚めた時、有希の目の前に隆史がいた。
「隆史?」
「有紀、しずかに・・・・システムをロックしてきた」
「どうしたの?システムのロックって犯罪だよね」
「ああ、たいした事じゃないさ。有希、僕のキスで眠るかい?それとも、真実を僕と探すかい?」
「・・・・・・・・・」有紀は全てわからなかった。
隆史はそっと有希にキスをした。
有希はあまり突然で、自分の感情がばれないように、そっと横を向いた。
隆史は、また悲しい顔をした。
「見てごらん。ここ!」
Martherの放射能危険レベル?」
「ああ、僕たちはひとりひとり大切な役割を持ち、このドームの安全を守っている。奈々子が溶けたのなら、奈々子は完全な3Dかもしれない。奈々子は完 全にコピーされ、たぶん1年で鍵である、有希を見つけたんだろう。Martherの中に侵入出来るのは、冷凍人間である、有希、君だけなんだ」
「3D? 人間のコピーは法律で反対されたよね」
「ああ、正しくは奈々子は植物蛋白の3Dってとこかなあ」隆史は言った。
Marthが奈々子を創造したの?」
「正確には、ドームにハッキングしたって事かな?時が来たんだ。僕の鍵は有希を守る事だ。有希の空白の時間をうめる」
「隆史が私の何かを知っているの?」
「ああ、だいじょうぶ。泣かないで・・・・・・」
「地球の未来を創造していくの?」有紀は隆史に聞いた。
「ああ、だが時間は問題ではないんだ。生きる意味を捜す旅人に過ぎない。それぞれの記憶の中に繋がった優しい約束だよ。有希の思う人生を選んでいいんだ」

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夏目 らん
セクター17(冷凍人間SF)
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