日常( 5 / 11 )
「そんなお兄ちゃんが戦場へ行くことになった。俺たちは街のみんなと一緒に見送りに行った。その時、何でかはわからないけど、俺の口から「お兄ちゃん、またウナギを獲ってね」という言葉が出た。そしたら、キリッと引き締まった顔をしていた、お兄ちゃんが、ニコッと笑って、「おう、無事に帰って来たら、いくらでも獲ってやるぞ。その時は、みんなで腹一杯、鰻丼を食うからな。だから、たくさん食べられるように、少しでも身体を大きくして待ってろよ」と言ってね」
日常( 6 / 11 )
「でも、それがお兄ちゃんとの最後の会話だった・・・」
日常( 7 / 11 )
「ウナギのお兄ちゃんが戦死したって聞いた時、俺たちは朝から晩まで、ウナギをたくさん獲って、お兄ちゃんの家まで、ウナギを届けに行ったんだ。家の人に、「お兄ちゃんにウナギを渡して下さい」って言ったら、「お兄ちゃんはもう自分で食べることが出来ないから、君たちが代わりに食べてあげなさい」って言われてさ、みんなで涙を流しながら「旨いな~・・・」って食べたんだよ・・・」
日常( 8 / 11 )
「お兄ちゃんは、俺たちや、家族や、街の人たちや、日本を守る為に死んだんだ。それ以来、ウナギを食べる時には、いつもお兄ちゃんにお供えをしてから食べるようにしてるんだ」