江戸川日記

僕は泣いている( 4 / 10 )

1時間ほど立ち尽くした状態が続いて、やっと動けるようになった僕は、江戸川へ向かって歩いていた。

僕は泣いている( 5 / 10 )

何も見えない。何も聴こえない。街が止まっている。胸が苦しい。心臓が痛い。頭が揺れて猛烈な吐き気がする。それでも歩いた。必死に歩いた。江戸川へ辿り着いた時、僕の目に満開の桜が飛び込んできた。

僕は泣いている( 7 / 10 )

「俺は父親も、母親も東京大空襲で失くしちゃったから、おじいさんと、おばあさんに育ててもらってね。花見にも、おじいさんと、おばあさんに毎年連れて来てもらってたんだけど、昔はみんなもっと陽気だったよ。テレビなんか見てると、どこも花見客のマナーが悪い、なんてやってるけど、あんなもんは可愛いもんで、昔は、相撲部屋の力士たちが桜の木で鉄砲やって、そこら辺の花を全部散らしちゃったり、素っ裸で「突撃~!」なんて言って、一斉にナンパを始める学生たちがいたりしてね」

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