詩人に口なし

慣性


 感性の法則なら詩人の出番だ。

 貴方はただ、広大な宇宙をゆっくり漂流してゆくのであろう。
 生真面目にも真っ直ぐに、過去から現在へ、そして未来へと。
 誰が、その行く手を阻むというのか!
 空気ですら、貴方を邪魔立てすることはなく、
 その摩擦の熱で煩われることもない。
 いつ頃だったろうか?
 私が、貴方のように直線を描いてはいないことに気づいたのは。

新鳥のと速度

・ニュートリノ
 何だって? ニュートリノだかユートリオだか知らねぇが、
 近頃では世界最速っていうウワサだから、
 アインシュタインのお墨付きを貰った光の国の王子も全くかたなしだ。
 そのうち、正義の味方もニュートリノの国からやってくるようになった日にゃ~よう、この世も闇だぜ。
 

・速度
 君と僕が抜きつ抜かれつ、同じ方向に進んでいた頃もあったさ。
 いつの間にか、お互い違う方向にそれぞれの速度で走り出してた。
 突然の出会いはいつも奇蹟的なものだ。
 ずいぶん長い間、顔を見なかったのに何故か話は尽きなかったよ。

時間と空間

 時間(第1の時点から第2の時点までの長さに相当する)は、すべての出来事が一時に起こらないことを要求し、

 空間(第1の位置から第2の位置までの長さに相当する)は、すべての実体が1箇所に集中しないことを要求する。

 

cf)あいにくヒトは時間や空間に対する直接的かつ正確な感覚器官を持ち合わせていないので、計測装置を発明したのである。

  蛇足:時空間は物理現象ではなく、それを記述するための手段である。


加速度と力

 おーい、ちょっと待ってくれ! 何故そんなに先へ急ぐんだ!

 ニュートンの時間の流れは一定の速さの筈なのに、
 歳をとるにつれて時間は加速するようだ。誰かが後ろから押してる訳でもないのに。
 力の衰えとともに、時の力には逆らえなくなってくるのか。
 それでも未だ、こうして自分は大地の上で足を踏ん張っていなくてはいけないのだ。

無名のヒト
作家:無名のヒト
詩人に口なし
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