「ほら、見てごらん。あそこに輝くお星さまがみえるかい。」
ミナが見上げてみると、そこには空いっぱいにお星さまが輝いていました。
「ねぇ、どのお星さまのことなの。」
ミナは、迷いながら魔法使いに聞きました。
「自分の好きなお星さまをひとつ選んでごらん。それがミナ、あなたの選んだお星さまだよ。」
「いっぱいありすぎてわからないよ。」
ミナが困ったように答えると、
「わはは、そりゃそうだね。こんなにお星さまがたくさんいたんじゃ、選ぶのも大変だね。実はね、あの星さまたちは、昔全部この地球で生きていたんだ。お星さまは人の命のカタチなんだ。わたしが魔法でお星さまに変えたのさ。」
「え、あのお星さまは、昔、人間だったの。」
「そうさ、人間は生きてね、そしてその命が終わると、わたしみたいな魔法使いが、その命をお星さまに変えるのさ。ただ、最近じゃお星さまに変えることができない人間が多くて困ってるがね。」
魔法使いが、空に輝く一番星を指差して続けました。
「ほら、あそこにキレイに輝いているお星さまがあるだろ。あれは、とっても命を大切にしたお姫様のお星さまだよ。すごくきれいだろう。今じゃ、なかなかいないよ。あんなに輝いて見えるお星さまは。」
「どうして、星になれないの。わたしは、お星さまになりたいよ。だって、お星さまになれないことが多いんでしょ。」
ミナは不安そうに魔法使いに聞きました。
「ミナ。あなたを魔法でお星さまに変えられるかどうかは、あなた次第なんだよ。よい子にしてたら、わたしが魔法でお星さまにかえてあげるよ。約束するよ、ミナ。ただね、魔法使いが人間の命を星に変えるとき、その人の心の中や、その人の人生に悪の行いがあると、魔法がきかなくなっちまう。いくらわたしたち魔法使いが魔法をかけたってダメなんじゃ。魔法がきかない人間になってしまうんだ。」
「そうなんだ。うん、じゃあ、わたしいい子になるようにがんばるね。」
ミナが満面の笑顔で空を見上げると、流れ星がひとつ流れました。
「あっ、流れ星。ねぇ、見た。すごくキレイ。」
すると魔法使いの瞳から涙がポツリと落ち、魔法使いが言いました。
「ミナ。あれはね、自分の人生がいい子だったのに、その途中で人生が終わっちゃった子の星なんだよ。つまり、他人によって人生を終わらせられた人間の星なんじゃ。今の流れ星はね、この間私が星にした優しい小さな子なんだよ。本当にいい子だったんじゃ。さっき言ったように、魔法は人を星にできる。でもね、他人によって命を落とすと、その人間の星は流れ星になって、いつかは空から消えちまうんだ。命を奪った人間の悪によって、その星は空から流れちまうんだよ。流れ星としてね」
ミナは、怖くなって魔法使いに抱きつきながら言いました。
「わたし、ずっとお星さまでいたい。お空でみんなと輝いていたいよ。」
「そうじゃな、そうしたら気をつけることだよ。気をつけて生きるだ。悪から身を守るんだよ。そうすれば、永遠と空で輝き続けられる。そうだ、ミナに特別いいものを見せてやろう。」
魔法使いはそういうとミナを連れて、空へ飛びました。
「ほら、ここが空だよ。ミナ、あなたの住む星が見えるかい。」
地球が青く輝いて見えました。
「わぁ、なんてきれいなの。私の住む星ってこんなに大きかったんだ。」
「この星は昔、私が愛の神様を魔法で星に変えたのさ。だから、この星の人間はこの空で一番愛に包まれている。だから、安心して生きなさい。必ずいい子にしてればお星さまになれるから。でも、気をつけるんだよ。気をつけるんだよ」
魔法使いがそういうとさっきまで一番輝いていた星が流れ星となってながれて、魔法使いの瞳から寂しそうに一粒の涙がぽとりと落ちました。
その星がミナの選んだお星さま。そして、それが昔のミナのお星さま。