おつう先生,気づいてた。
クラスの中にまだ何人か,ものぐさたろうをいじめてる。
こっそりいたずらばかりする。
たろうがおこりもしないので、悲しくないと,
さびしくないと,みんな思っているらしい。
おつう先生立ち上がって、
「みんな、校ていにあつまりなさぁい」
ぼうで地面に大きな丸いわをかいた。
ものぐさたろうをそこに立たせた,まん中に。
「ものぐさたろうくんがいじめられているとき、
助けてあげられる子、わの中に入ってごらんなさい」
うらしまたろうに、ももたろう、金たろうに一寸ぼうし、
かぐや姫にはちかつぎ姫、それにもちろん赤ずきんちゃん、
みんなすぐにわに入る。
かず子にたけし、まゆみとひろみ、ピョンととびこんだ。
「じゃ、助けてあげたいって思ってはいる人,
その子たちもお入りなさい」
五人ぐらいが入ってきた。
「今まで何かこまったとき、
だれかに助けてもらったことのある子はいませんか」
十人ぐらいの子どもたち,思い出しては入ってく。
さいごにのこった七、八人、
わるい子みたいではずかしく,
入りそびれてもじもじしてる。
するとこんどは、のこった子たちがきのどくで、
おつう先生こう言った。
「きみたちも本当はわかっているんでしょう?
みんな同じ人間よ。
やさしいこと,正しいことをした方が,
自分でもうれしいにきまってる。
よぉくかんがえてごらんなさい」
「ものぐさたろうくんの,悲しい心がわからないような子は,人間じゃない,鬼だ!」
ももたろうの大声に、みんなドッキリ、かおを見合わせた。
金たろうも声たかく、
「さあ、みんなこいよ」
うらしまたろう、やさしく手をのばす。
わはどんどんふくらんだ。
かたく,大きく、あたたかく。
おつう先生,うれしくて,大きな白いつるになり、
みんなのまわりをとびまわる。