おとぎ小学校つる組

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さあ、遠足だ


教室の窓からほそい首出して、おつう先生さがしてる、ものぐさ太郎はどこにいる。
ああ、お砂場だ。
ひとりぽっちで砂あそび、何度も何度も両手でなぜて、ツルツルお山ができていた。
そのとき、かず子がブラブラ近づいた。
ウロウロとお山の回りをあるくたび、しだいに砂をくずしてく。
じっと見ているものぐさ太郎。
そのうちついに、かず子は山をけとばした。
砂がとびちり、太郎にかかる。
それでもべつにおこりもしない、かず子はますますずにのって、
「きたないふく、きれいにしたげるわ」
砂をつかんで、太郎のせなかにこすりつける。
「ほら、きれいきれい、母さんにおこられるわよ」
「おこらないよ」 「どうして!」
『母さん、ぼくをかまうひまないから」 「どうして!」
「朝からばんまではたらいてるから、クタクタで」 「ごはんはどうするの!」
「おなかがすいてたまらなくなったら、自分で作るさ」
「はらが立たないの!」 「どうして」
「だって、わたしだったらカンカンよ!」 『どうして』
「だって、母さんならせわしてくれなきゃ!」 「そうとはかぎらないさ」
太郎ははじめて顔上げた。「人も母さんもいろいろさ、それでも母さんは母さんさ」
「あんた、でもさびしいでしょ!」
かず子は思わず言ってから、自分で自分におどろいた。


あしがら山に遠足の、その日はとてもはれていた。
ものぐさ太郎にあげようと、おにぎりたくさんかず子は持った。
二ばいの重さも何のその、いいことしているうれしさに、力も強くなったよう。

たけしの世界もひろがった。
金太郎に頼まれて、一寸法師をかたにのせ、テクテク歩いているうちは、
何してこまらせてやろうかと、やっぱりこっそり思ってた。
そのときふいに、えりもとに、ブーンと一ぴき、とびこんだ。みつばちだ。
「ヒャア、さされるよう、たすけてえ」
「しずかにっ」と、耳もとで、一寸法師の声がした。
すばやくするりと回転し、たけしのせ中にすべりこみ、じょうずにはちを追い出した。
「ありがとう、たすかったよ」
「あたりまえだろ」
しばらくたけしはだまっていたが、
「ぼくたち、たすけ合っているんだね!」
きづいたようにこう言った。なんだかりっぱになったよう。
変身したようないいきもち、ともだちひとりふえたのだ。

まゆみとひろみもいそがしい。
はちがつぎ姫をまん中に、注意しながら山道のぼる。
へんな子だと思ってたはちかつぎ姫、
ところがせわをやくほどに、
ふしぎなほどに好きになる。そんな自分も好きになる。

山はいよいよふかくなる。
青いかきのみ,ポコンとおちた。
あぶないっとさけんだのははちかつぎ姫、
まゆみとひろみをひきよせた。
黒い大きなはちの下。
ゴンゴンゴン、ボゴン。
お山のさるのいたずらだ。
しずかになって、目をあけた。
姫がにっこりわらってみせた。
はちからかお出して、まゆみが目をみはった。
「はちにひびが入ってる,もうすぐわれてとれてしまうかも!」

勇気を出して

おつう先生,気づいてた。
クラスの中にまだ何人か,ものぐさたろうをいじめてる。
こっそりいたずらばかりする。
たろうがおこりもしないので、悲しくないと,
さびしくないと,みんな思っているらしい。
おつう先生立ち上がって、
「みんな、校ていにあつまりなさぁい」

ぼうで地面に大きな丸いわをかいた。
ものぐさたろうをそこに立たせた,まん中に。
「ものぐさたろうくんがいじめられているとき、
助けてあげられる子、わの中に入ってごらんなさい」
うらしまたろうに、ももたろう、金たろうに一寸ぼうし、
かぐや姫にはちかつぎ姫、それにもちろん赤ずきんちゃん、
みんなすぐにわに入る。
かず子にたけし、まゆみとひろみ、ピョンととびこんだ。


「じゃ、助けてあげたいって思ってはいる人,
その子たちもお入りなさい」
五人ぐらいが入ってきた。
「今まで何かこまったとき、
だれかに助けてもらったことのある子はいませんか」
十人ぐらいの子どもたち,思い出しては入ってく。
さいごにのこった七、八人、
わるい子みたいではずかしく,
入りそびれてもじもじしてる。
するとこんどは、のこった子たちがきのどくで、
おつう先生こう言った。
「きみたちも本当はわかっているんでしょう? 
みんな同じ人間よ。
やさしいこと,正しいことをした方が,
自分でもうれしいにきまってる。
よぉくかんがえてごらんなさい」
「ものぐさたろうくんの,悲しい心がわからないような子は,人間じゃない,鬼だ!」
ももたろうの大声に、みんなドッキリ、かおを見合わせた。
金たろうも声たかく、
「さあ、みんなこいよ」
うらしまたろう、やさしく手をのばす。

わはどんどんふくらんだ。
かたく,大きく、あたたかく。
おつう先生,うれしくて,大きな白いつるになり、
みんなのまわりをとびまわる。

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