おとぎ小学校つる組

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登校

「ママ、行ってきまあす」
赤ずきんちゃん、元気にうちを出た。赤いランドセル かたかた鳴った
「自動車に気をつけるのよ」ママは少し、しんぱいそう。

一寸法師、もう一時間も歩いてた。学校まではまだまだかかる。

やっとそのころ、ものぐさ太郎起きてきた。
母さん仕事でもういない。おなかはペコペコ、髪はぼさぼさ。
まあいいや、出かけよう。

はちかつぎ姫、こまっていた。今朝もまた、しずおとしげるに待ち伏せされた。
「大きなおはち取ってみな」「そらそら」
ふたりで引っ張る。涙でてきた。
取りたくってもくっついているこのおはち。
そこへやって来た、うらしま太郎、せが高い。
「ふたりともやめなよ、かわいそうだよ」「イーだ」
しずおとしげる、走ってにげた。


まさかりかついだ金太郎、
大汗かいてる一寸法師に追いついて、ひょいとかついだ肩の上。
「よかった、ありがと。これで安心。ふまれないですむ」

かずことかずみ、校門で待っている。
「来たわよ、ものぐさ太郎が」
「あんた、また汚いかっこうね」「おふろはいらないの」「くさいくさい」
と鼻つまむ。何か言うのもめんどうなので、ものぐさ太郎はだまってた。
「どうして学校にくるのよ」
かずこにドンとつきとばされて、太郎はベタン、としりもち
ついた。
起きもしないでものぐさ太郎、かけてくふたりをそのまま見てた。

運良く来たのはもも太郎。「どうしたんだい」「べつにーー」
「おなかがすいているんだろう」「べつにーー」「わかってるよ、ホラこれ食べな」
黄色いきびだんごさしだした。
「ありがと、ーーーおいしいな」


「けいこさん、おはよう」赤ずきんちゃんニコニコ言った。
その青い眼を、じろり、けいこはにらみつけ、
「ガ、イ、ジ、ン」とだけ言ってよこを向く。でも赤ずきんちゃんがんばって、
「おはよう、けんいちくん」もう一人に声かけた。びっくりしたけんいちは、
あわてて聞こえぬふりをする。
もしもその時、おつう先生あらわれて、「おはよう、赤ずきんちゃん」
優しい声をかけなかったなら、さすがに陽気な赤ずきんちゃんも、
すっかりしょげてしまったかも。

小さな味方

さてその日の昼休み、校庭にいる子どもたちを、おつう先生ながめてた。
なわとび遊びのグループは、うらしま太郎にもも太郎、ゆうこにゆうじら7、8人。
そこへ赤ずきんちゃんかけて来て、「私も入れて」
「だめっ」ときっぱりゆうこが言った。「おねがい入れて」
「いやだね」とゆうじも言った。「いいじゃない、入れてあげよう」
これはもも太郎、つなをまわす手を止めた。ゆうこが口をとがらせて、
「だってこの子、ガイジンだもん」「へんなこと言うなあ、同じ子どもじゃないか」
「でも眼が青いし、髪も黄色だ」
「ぼくたちだって、よく見たらみんがちがうよ。同じ顔の人間なんていないじゃん」
「だって、この子日本人じゃないもん」
「日本人でなかったら、どうして遊べないんだい」
遊べない理由は余りない。、みんな困って黙り込む。
うらしま太郎はにっこり笑い、
「赤ずきんちゃんも入れて遊んだら、きっともっと楽しくなるよ。だってみんな、ひとつ正しいことをしたんだから」と、さっさとつなを回しだす。
ゆうこにゆうじ、子どもたち、そう言われてはなかまはずれにできなくなった。
みんなでびゅんびゅん跳んだ。遊んでいるうちそのうちに、青い眼のこと忘れてしまった。
 

たけしにつよし、そのほか4、5人、鬼ごっこにだけは一寸法師をいれてやる。
それもそのはず、鬼はいつでも一寸法師ばかり、
ヒイヒイ言って走っても、つかまえられないだれひとり。それが面白いから、入れてやる。

くやしくってたまらない、一寸法師は考えた。ひとつ名案うかんだぞ。
たけしがとつぜん立ち止まる。鬼が見えない。どこにいる。みんなキョロキョロ、地面を探す。セコセコと下向いて、ジャングルジムのまわりを回る。
と、どこからあらわれたのか、「たけしくん、つかまえたあ。」
さけぶと同時に、一寸法師、たけしのうでにタッチした。
ポンポン、ポンとつぎつぎに、みんなはかたをたたかれた、何がなんだかわからぬうちに。
「ずるいーっ! かくれてたんだな」
「隠れてなんかいないよ。ジャングルジムの上にいただけさ。みんな下ばっか見てたから、ぼくが見えなかったんだ」
「よおし、今度はぼくが鬼だ。すぐにつかまえてやる」
たけしはパッととびかかる。
ところがどっこい、一寸法師のすばやいこと、クルクル小回りしてにげる。
たけしも回る、クルクルと。そのうちグルグル目が回り、つかまえるのをあきらめた。


とても美しいかぐや姫、はちかつぎ姫の不自由さがかわいそうでたまらない。
折あるごとにできるだけ、手をつないで歩いてあげた。
ひとつには、大きなはちがじゃまになり、前が見えずにあぶないから。
またそれに、そうしていればはちかつぎ姫がいじめられることもない。
自分もいつか、やさしい竹取りじいさんに、わかれて月に帰る日が
やがて来るかぐや姫、よその家にあずけられた、はちかつぎ姫のさびしさは、
だからとてもよくわかる。

その日はふたり、お池のコイをのぞいてた。
水にうつったかげふたつ。ひとつは自分の白い顔。おや、その横の、
美しい女の子、いったいだれの顔かしら?
かぐや姫はおどろいて、となりを見れば、黒い大きなはちばかり。
「うわあ、すてき」 思わず姫は手を打った。

ぐうぜんにとおりかかったまゆみとひろみ、
「ちょっと見てごらん、すごいわよ」
とよびとめられ、好奇心からのぞきこむ、池の水。
思いもかけない美しさ、みにくいはちの中の顔。
ボカンと口をあけたまま、まゆみとひろみ、何も言えずにこまってた。
もうこれからはからかいにくいなあ。

さあ、遠足だ


教室の窓からほそい首出して、おつう先生さがしてる、ものぐさ太郎はどこにいる。
ああ、お砂場だ。
ひとりぽっちで砂あそび、何度も何度も両手でなぜて、ツルツルお山ができていた。
そのとき、かず子がブラブラ近づいた。
ウロウロとお山の回りをあるくたび、しだいに砂をくずしてく。
じっと見ているものぐさ太郎。
そのうちついに、かず子は山をけとばした。
砂がとびちり、太郎にかかる。
それでもべつにおこりもしない、かず子はますますずにのって、
「きたないふく、きれいにしたげるわ」
砂をつかんで、太郎のせなかにこすりつける。
「ほら、きれいきれい、母さんにおこられるわよ」
「おこらないよ」 「どうして!」
『母さん、ぼくをかまうひまないから」 「どうして!」
「朝からばんまではたらいてるから、クタクタで」 「ごはんはどうするの!」
「おなかがすいてたまらなくなったら、自分で作るさ」
「はらが立たないの!」 「どうして」
「だって、わたしだったらカンカンよ!」 『どうして』
「だって、母さんならせわしてくれなきゃ!」 「そうとはかぎらないさ」
太郎ははじめて顔上げた。「人も母さんもいろいろさ、それでも母さんは母さんさ」
「あんた、でもさびしいでしょ!」
かず子は思わず言ってから、自分で自分におどろいた。


あしがら山に遠足の、その日はとてもはれていた。
ものぐさ太郎にあげようと、おにぎりたくさんかず子は持った。
二ばいの重さも何のその、いいことしているうれしさに、力も強くなったよう。

たけしの世界もひろがった。
金太郎に頼まれて、一寸法師をかたにのせ、テクテク歩いているうちは、
何してこまらせてやろうかと、やっぱりこっそり思ってた。
そのときふいに、えりもとに、ブーンと一ぴき、とびこんだ。みつばちだ。
「ヒャア、さされるよう、たすけてえ」
「しずかにっ」と、耳もとで、一寸法師の声がした。
すばやくするりと回転し、たけしのせ中にすべりこみ、じょうずにはちを追い出した。
「ありがとう、たすかったよ」
「あたりまえだろ」
しばらくたけしはだまっていたが、
「ぼくたち、たすけ合っているんだね!」
きづいたようにこう言った。なんだかりっぱになったよう。
変身したようないいきもち、ともだちひとりふえたのだ。

まゆみとひろみもいそがしい。
はちがつぎ姫をまん中に、注意しながら山道のぼる。
へんな子だと思ってたはちかつぎ姫、
ところがせわをやくほどに、
ふしぎなほどに好きになる。そんな自分も好きになる。

山はいよいよふかくなる。
青いかきのみ,ポコンとおちた。
あぶないっとさけんだのははちかつぎ姫、
まゆみとひろみをひきよせた。
黒い大きなはちの下。
ゴンゴンゴン、ボゴン。
お山のさるのいたずらだ。
しずかになって、目をあけた。
姫がにっこりわらってみせた。
はちからかお出して、まゆみが目をみはった。
「はちにひびが入ってる,もうすぐわれてとれてしまうかも!」

勇気を出して

おつう先生,気づいてた。
クラスの中にまだ何人か,ものぐさたろうをいじめてる。
こっそりいたずらばかりする。
たろうがおこりもしないので、悲しくないと,
さびしくないと,みんな思っているらしい。
おつう先生立ち上がって、
「みんな、校ていにあつまりなさぁい」

ぼうで地面に大きな丸いわをかいた。
ものぐさたろうをそこに立たせた,まん中に。
「ものぐさたろうくんがいじめられているとき、
助けてあげられる子、わの中に入ってごらんなさい」
うらしまたろうに、ももたろう、金たろうに一寸ぼうし、
かぐや姫にはちかつぎ姫、それにもちろん赤ずきんちゃん、
みんなすぐにわに入る。
かず子にたけし、まゆみとひろみ、ピョンととびこんだ。


「じゃ、助けてあげたいって思ってはいる人,
その子たちもお入りなさい」
五人ぐらいが入ってきた。
「今まで何かこまったとき、
だれかに助けてもらったことのある子はいませんか」
十人ぐらいの子どもたち,思い出しては入ってく。
さいごにのこった七、八人、
わるい子みたいではずかしく,
入りそびれてもじもじしてる。
するとこんどは、のこった子たちがきのどくで、
おつう先生こう言った。
「きみたちも本当はわかっているんでしょう? 
みんな同じ人間よ。
やさしいこと,正しいことをした方が,
自分でもうれしいにきまってる。
よぉくかんがえてごらんなさい」
「ものぐさたろうくんの,悲しい心がわからないような子は,人間じゃない,鬼だ!」
ももたろうの大声に、みんなドッキリ、かおを見合わせた。
金たろうも声たかく、
「さあ、みんなこいよ」
うらしまたろう、やさしく手をのばす。

わはどんどんふくらんだ。
かたく,大きく、あたたかく。
おつう先生,うれしくて,大きな白いつるになり、
みんなのまわりをとびまわる。

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東天
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