さてその日の昼休み、校庭にいる子どもたちを、おつう先生ながめてた。
なわとび遊びのグループは、うらしま太郎にもも太郎、ゆうこにゆうじら7、8人。
そこへ赤ずきんちゃんかけて来て、「私も入れて」
「だめっ」ときっぱりゆうこが言った。「おねがい入れて」
「いやだね」とゆうじも言った。「いいじゃない、入れてあげよう」
これはもも太郎、つなをまわす手を止めた。ゆうこが口をとがらせて、
「だってこの子、ガイジンだもん」「へんなこと言うなあ、同じ子どもじゃないか」
「でも眼が青いし、髪も黄色だ」
「ぼくたちだって、よく見たらみんがちがうよ。同じ顔の人間なんていないじゃん」
「だって、この子日本人じゃないもん」
「日本人でなかったら、どうして遊べないんだい」
遊べない理由は余りない。、みんな困って黙り込む。
うらしま太郎はにっこり笑い、
「赤ずきんちゃんも入れて遊んだら、きっともっと楽しくなるよ。だってみんな、ひとつ正しいことをしたんだから」と、さっさとつなを回しだす。
ゆうこにゆうじ、子どもたち、そう言われてはなかまはずれにできなくなった。
みんなでびゅんびゅん跳んだ。遊んでいるうちそのうちに、青い眼のこと忘れてしまった。
たけしにつよし、そのほか4、5人、鬼ごっこにだけは一寸法師をいれてやる。
それもそのはず、鬼はいつでも一寸法師ばかり、
ヒイヒイ言って走っても、つかまえられないだれひとり。それが面白いから、入れてやる。
くやしくってたまらない、一寸法師は考えた。ひとつ名案うかんだぞ。
たけしがとつぜん立ち止まる。鬼が見えない。どこにいる。みんなキョロキョロ、地面を探す。セコセコと下向いて、ジャングルジムのまわりを回る。
と、どこからあらわれたのか、「たけしくん、つかまえたあ。」
さけぶと同時に、一寸法師、たけしのうでにタッチした。
ポンポン、ポンとつぎつぎに、みんなはかたをたたかれた、何がなんだかわからぬうちに。
「ずるいーっ! かくれてたんだな」
「隠れてなんかいないよ。ジャングルジムの上にいただけさ。みんな下ばっか見てたから、ぼくが見えなかったんだ」
「よおし、今度はぼくが鬼だ。すぐにつかまえてやる」
たけしはパッととびかかる。
ところがどっこい、一寸法師のすばやいこと、クルクル小回りしてにげる。
たけしも回る、クルクルと。そのうちグルグル目が回り、つかまえるのをあきらめた。
とても美しいかぐや姫、はちかつぎ姫の不自由さがかわいそうでたまらない。
折あるごとにできるだけ、手をつないで歩いてあげた。
ひとつには、大きなはちがじゃまになり、前が見えずにあぶないから。
またそれに、そうしていればはちかつぎ姫がいじめられることもない。
自分もいつか、やさしい竹取りじいさんに、わかれて月に帰る日が
やがて来るかぐや姫、よその家にあずけられた、はちかつぎ姫のさびしさは、
だからとてもよくわかる。
その日はふたり、お池のコイをのぞいてた。
水にうつったかげふたつ。ひとつは自分の白い顔。おや、その横の、
美しい女の子、いったいだれの顔かしら?
かぐや姫はおどろいて、となりを見れば、黒い大きなはちばかり。
「うわあ、すてき」 思わず姫は手を打った。
ぐうぜんにとおりかかったまゆみとひろみ、
「ちょっと見てごらん、すごいわよ」
とよびとめられ、好奇心からのぞきこむ、池の水。
思いもかけない美しさ、みにくいはちの中の顔。
ボカンと口をあけたまま、まゆみとひろみ、何も言えずにこまってた。
もうこれからはからかいにくいなあ。