そんな時期の私を救ってくれたのが、顔の見えない、一夜限りの友人の集まるチャットだった。その頃、大きなチャット専門のサイトがあり、私は深夜になるとそのサイトにアクセスし、顔の見えない人達と一夜限りの友人になり、語り合った。顔が見えないというのは気が楽だった。後腐れなく、色んな人達と話をし、明け方にはチャットを落ち、オーバードーズをして眠るのが習慣化していた。
そのうち、何回も同じチャットに入る子と仲良くなった。毎日アクセスしていたら常連の人も居て、小さなコミュニティが出来た。そして、「自分達だけのチャットが欲しいね」という話になり、私がサイトを立ち上げて、チャット部屋を作る事になった。我が家には何故かホームページビルダーというソフトがあり、私はそれを使いホームページを作り、チャットもレンタルし、無事に小さなコミュニティの集まりが出来るようになったが、それも長続きはしなかった。元々が自由人ばかりなので、1つの所には皆、居られなかった。また、その頃一番仲が良かった男の子に私の写真を送ったところ、顔は言うほど不細工じゃないけど、部屋があまり綺麗じゃない、と指摘され、恥ずかしくなり私の方から音信不通にしてしまった事もあり、コミュニティは崩壊。皆、散り散りになった。
私の手元に残ったのは、ド素人の作った変なホームページと、使われなくなったチャットルームだけだった。
そして、また眠れない夜を持て余す私に、「声」が降りかかってきたのだった。それが、全ての始まりになった。