シンシア -秘宝城-

 早歩きで目の前にわずかながらに光る宝に向かって進んで行く神谷 潤一 26歳だった。
 自分だけでも生き延びれれば、大金持ちに成れば、人を裏切ってでも、蹴り落としてでも上に上がればいいという表っ面のいい男が神谷だった。

「へっへ~、のろまなゾンビさん達、俺を捕まえてみろよ~、早くしないとお前らが守っている宝物~、取っちゃうぞ~、ハッハッハ~」  からかって、お尻ぺんぺんを二回した。

 ゾンビと距離が離れる。  黄金に光る宝の山に近付いて行く・・・目が見開く・・・顔に笑みが現れる・・・目の前に立つ。
「ハハッ、ハハハッ、ハ~ハッハッハァ~、ヤッター、ザマ~みろっ、俺は、運がいいんだ~、そういう運命の下に産まれたんだ~、ハハハッ、ヤッター」

 一人騒いでいる間に後ろから、二百というゾンビが歩いて近付いて来ていた。

 宝の山が美しくレイアウトするように上下左右に動き雛壇を作り上げていく。 ふと殺気を感じ周りを見渡すとゾンビの大群が居た。 同時に宝の山の周りが地中深くに沈んで行き、ゾンビと神谷の間に谷間ができ、神谷は、捕まえられない状態に成った。

 ゾンビは、神谷を一・二・三階席から見ていた。
「ハハッ~、ザマ~みろっ、俺を捕まえられないだろう、俺には、神様!?が付いているんだ、ハハッ、ザマ~みろっ、ゾンビ野郎」
 大声を出し、両手を天に向かっていっぱいに広げた。
 宝を持てるだけ、二つのリックにいっぱいに詰め込んだ。

 宝の山の真上から、ネジが出て来た。 天井から赤い帽子をかぶった棒が出て来て、くぼみをスキーで滑り降りて来た。
 ジャンプする瞬間に頭上の赤リンと自らの発火剤とが摩擦し、火を点けてスキージャンプのようにV字で飛んで下降して行った。

 地面のガスに引火する。  ゴー!?という音と爆炎に神谷が包まれた。 幾重もの薄い火の年輪の壁に飲み込まれていく。
「アーアッ、ア~、助けてくれ~、助けて・く・レ~、ア、あ、ア、ア、ア~!!・・・」  倒れては、逃げてという行為を何度も繰り返していたものの最期には、朽ち果ててしまった。

「一生懸命に逃げようとしていたみたいだけど・・・あ~あっ、やはり炎には、勝てないんだね~、あの火の凄さじゃね~、俺達も助からないよ、アーメン、安らかに眠ってくれ」
 ゾンビは、引き返して行った。

「逃げ道は、左側の鋭角の細く小さい道なのにね~、丁度こバカにしたお尻ぺんぺんの辺りかな~・・・!?  残念でした・・・宝に目がくらんだのかな・・・!? あらら、体に『exit』のプレート当たったのかな!?」  床に落ちていたプレートを手に取って直して行った。

 一つ一つ丁寧に並べていた。 色々な色の物を置いて、小さい物から、大きい物まで、多種多様な模様を描いて、細工をしてゲームを楽しんでいた。

 体の成長とは、異なり、少し知恵の遅れた争う事を嫌う温厚な子供ゾンビだった。 まだ、時たま立ったり、よちよちと歩いたりしたりする位のレベルの子だった。

 そして中央には、目を引く高く積まれた煌々と輝く宝の山があった。
 スーと開いた自動ドアから、サバイバルルックの永峰美咲が入って来た。
 男勝りのトレジャーハンターらしく顔つきが厳しく、体つきが筋肉質でたくましかった。

 直ぐにドアが閉まる。
 宝の山を見た。 そして冷静に宝の前の 子供ゾンビや周りを観察した。 そしてドミノを崩して宝の山に向かって、分析、直ぐ様 色々な財宝をリックに担がれる限りに入れて閉じた。
 
「ハ~ハッ、ハ~、アハハハハ~、私のお金、私が勝ち組、これで億万長者ね~、世界は、私を中心に回っているのよ」

 急いで入口に向かおうとした。
「バイバ~イ、おチビちゃん」
 手で可愛くサヨナラをした。
「アッ、イッタ~イッ!?」 屈みこんだ。
 右足の親指根元が切れて血が出ていた。

 カタカタカタッ、変な音がして左のかかとが切られ、 美咲は、倒れた。
「イッタ~イ、痛いよ!?」
 ふと子供ゾンビを見たら、おいでおいでをしてヨチヨチと歩み寄って来ていた。
「ガ~オッ、ガオッ」
 血や肉を求める猛獣顔に成っていた。

 そして次の瞬間 驚いた。ガキが醜い顔が憎々しく笑っていた。 
 また次の瞬間に左手をわずかに上げて人差し指を動かした時にも驚かされた。 床から、大小様々な刃物がドミノのように出ては、指や足を切り、消えたからだった。

 ふと感じ取ってしまった。
(両足を切られ、逃げられない・・・人間は、重力で下に接している・・・勝ち目がない・・・ガキに食べられる)

 ドミノを作っては、人差し指を動かして距離を縮めていった。  床からの大小様々な色彩の刃物が美咲に襲い掛かり、体を刻みに刻んでいく。

「ア~アっ・・・た・ス・け・テ~・・・神・様・・・命だけは!?」
 命乞いをしてもガキは、エサを諦めなかった。
  ガッチリと肉を掴み、離さないで、そして、牙をむき、むさぼり喰っていく。

 デリントン 青沼は、ストレス発散の為にも痛み止めの為にも、トラッブゲームがしたく成ってきていた~。  ふへへへへ~。
  また、やりたく、やりたく~成った~。
  ふっ。 (エサをまくか~)

「つまらね~、何か儲かる事をないかな~・・・・・・!?」
  お酒を呑み切り、ガラスビンをストレス発散がてらにコンクリートの壁に思いっ切り投げて割った。 ガシャーン・・・。
  タバコを口に持っていき、吸い込む・・・。 吹き出す、煙が小宇宙が宙を舞う・・・・・・。

  住み慣れたマンションのドアの鍵を開け、中に入った。 鍵を掛ける。 ホッとひと安心する時でもあった。180 度転換して部屋への一歩を踏み出そうとした。「えらばれた」
「えっ、!?・・・・・・何なんだ!?」
  辺りを見渡して確認をする。
 
 座り心地のいい長い座椅子にドサッと座り込んだ。
「いつも平凡な毎日だよな~、何かドキドキ、ハラハラするような事を起こらないかな~・・・・・・」
  薄暗い所や危険領域に足を踏み込んで冒険してみたく成る。

「何かスリリングな事ないかな~、また~・・・・・・」
  アルコールや妄想や幻覚に酔っていて過去の事や予想する未来や夢が繰り返される脳の中で何者かに誘われた。
「来いよ~・・・・・・!?」
「ゲームしようぜ・・・・・・!?」

  いつからか大きめのハエが、部屋を回り始めた。
  気に成り、目で追って行く・・・・・・。
  酔っているのか!? 音だけは、するが、目で追えなく成ってきていた。
  気がつくと後ろでハエが騒いでいる感じがした。

  戸が少し開いていた。
  扉をしめようと戸に手を掛けて閉めようとした。
  その瞬間に多くのハエが止まったタダレた手に手を掴まれた。
「ツ~カマエタ!? ゲームをしようぜ・・・・・・!?」
  かん高い声がビックリ!?しているデリントン 青沼に聞こえた。
  その直後、異世界に飛ばされて行った。

  世界最強のトレジャーハンターと言われるベニー クーガ ショーが異世界へ飛ばされ、宝を掴み、リックに背負って、あとは、扉の向こう、そう元の世界に戻るだけと長い石畳を余裕で歩いていた。

  薄暗い四隅から、元気のない、弱々しいようなゾンビが、こそこそと足取り重くゆっくりと出て来た。
「来いよ~、化け物~、ハ~、来いよ~」
  一瞬にして剣を手に持って闘う気 満々の姿勢に成った。
 体全体から、闘士がみなぎり出る。

  日本の侍みたいにゾンビの体をズバズバと切り落としていった。
  ゾンビが石畳の上でジタバタしていた。
  ベニーは、戦意を喪失させられた。
「ワリーワリー、私の敗けだ!?」
  両手を軽く開いて微笑んでいた。

  頑丈そうな鉄扉を思い切り、引っ張って難無く開けた。
  そこには、元の世界の自然の山々や木々や滝の音や鳥のさえずりがあった。
「フッ、やったぜっ」

  達成感が出たのもつかの間 行きなり、背中を引っ張られてゾンビと戦った部屋に戻された。
「ソンナ カンタンナ モノジャ ナイダロ!?・・・」
  低い声がして扉が閉まった。

  扉が付いた面の壁が下がる。
  そこには、高い天井までぎっしりとつめられた、切り刻まれたゾンビ達がいた。
  壁面のガラス!?がズルズル~と異様な音を立てて上に上がっていく。

  汚ならしいゾンビの雪崩がベニーを襲った。
  必死に戦い、暴れ、逃げるベニー。
  しかし、ゾンビ群は、竜巻のように立ち上がり、ベニーを何回も襲いまくった。

  次第に傷を負いながら、引きずり込まれていく。
「モウ イイデショ スナオニ ツカマリナサイヨ イイオモイヲ シタンダカラサ  ヒトバシラニ キョウリョククダサイ!?・・・・・・」
  黒い物体が近付いて来て「ブアァァァ~オォ~」×2   と熊のようなビックリする大声を出してベニーを驚かせて動きを止め、ゾンビ達に掴まえられ、飲み込まれて行った。

  下から、硬い石レンガの柱に成っていく。
「テマ カケヤガッテ」
  翼を広げて飛んだ黒い悪魔が、二足で歩く人間!?に変身して石畳を歩いて扉を出て行った。

迷 彩映 (mei saiei・メイ サイエイ)
作家:MONALI PADORA
シンシア -秘宝城-
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