ぱるす通信〜こころのくすり箱〜第33号

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50歳からの出会い・転職・生きがい( 1 / 1 )

女性ならではのネットワークと 柔軟な発想で保育園から地道に社会貢献

東京ワークライフバランス認定企業 足立区 バンビ保育園 鈴木圭子さん


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 足立区にあるバンビ保育園の代表・鈴木圭子さんは、おだやかで凛とした声と包容力を感じさせる笑顔に、責任を負う者の貫禄がにじむ60代の女性だ。50代で保育所経営に踏み切って12年、小規模保育室から東京都認証保育所へと、規模・保育内容の充実を図り、2010年に東京ワークライフバランス認定企業となった。

 0歳児から2歳児まで、24人を預かる保育園にスタッフは規定よりも2名多い8名。鈴木さん自身は、保育の現場からは少し離れたポジションに身を置き、スタッフを含めた園全体に目配りしている。保護者からの信頼も篤く、開園以来、園児募集も毎年早いうちに定員に達してしまうという。

 園児たちにとってはおばあちゃん世代。「どんなに小さくても、子どもはいろいろなことを理解しています。愛情をもって、けじめのある生活をさせることが大切です」という。身近にこんなおばあちゃんがいてくれたら、子育て世代にとってはとても安心だろう。そして、筋の通った保育は情操豊かな子どもを育てることになるだろう。鈴木さんの保育方針は、これからの日本を背負ってたつ子どもたちに、今、何が必要なのかを提示している。

 一方で、発足して25年目になる足立区の女性団体連合会の会長でもある。一期4年の任期2年目になるという。主婦ボランティアとしてさまざまなことに関わってきたことが、コミュニケーション力を磨き、ネットワークを広げることにつながり、保育園経営や連合会会長へと実を結んでいるのだろう。


 主婦ボランティアから

 保育所経営者へ

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 始まりは、同居の両親を送ったころからだったという。

「結婚して6年目に同居の義母を送り、その2年後に義父を送って介護を終えると、2人の子どもたちも就学していたので、ボランティアを始めました」。

 1980年のこと、区役所の福祉課を訪ねて「私でお役にたてることはないですか?」と、行動的だ。

 そこで、65歳以上の老夫婦や独り者を訪ねる「友愛訪問員」に登録、20年後に制度が無くなってからも、関わったお年寄りが亡くなるまで活動を続けたという。

 女性団体連合会との関わりは、発足を知って好奇心から参加したのが始まり。女性の地位向上や男女平等をテーマにした団体の連合会で、現在は114団体が参加している。女性センターによる女性大学や大学院でも学習し、区政について学んだり、起業家支援塾に参加することで、意識が変わっていった。

 1997年に、子育てアドバイザーのボランティアをスタート。保健所に来る母子のための広場で、母子と遊んであげながら、子育ての悩みがあれば聞き、アドバイスをする仕事だった。

 1999年7月、子育てアドバイザーの研修会が週末に1泊2日で開催されたときのこと、参加者の間でボランティアではなく、仕事にしていけないかという話が出た。翌日の月曜日には区役所の保育課を訪ねている。

「私、フットワークがいいんです」と鈴木さん。

 ちょうどそのころ、区では2000年に向けて、新たに3つの民間保育室の開園を思案していた。園児6〜15人までの小規模の民間保育所で、補助金がつく。「それなら、保育室を開園しませんか?」という話になり、8月には書類を提出、10月にはスペースを借りて施設を改修、11月1日、12人定員の民間保育室を開園と、瞬く間に事業を進めている。鈴木さんはさらりと話をするので、とんとん拍子に事が運んでいるようだが、行動力は人並み外れている。

 ちなみに、鈴木さん自身は保育士の資格を持っていない。保育所経営を始めるに当たっては、区から紹介してもらった保育所を1週間かけて見学。「この1週間、保育士さんたちの邪魔にならないようにしながら、わからないことは聞いて、勉強しました」という。

 当時は今ほど待機児童の問題も深刻ではなく、民間保育室開設の条件も厳しくなかったというが、それでも、建物は鉄筋で2方向への避難路と一定の広さがあることなど、さまざまな条件を満たす物件を探し、内装工事をする必要がある。資金に限りがあるからと、床の緩衝材は自分たち夫婦で張ったと、懐かしそうに振り返った。

 2人の保育士の募集も、園児の募集も、友人・知人からの紹介と手作りのポスターのみで行ったというからパワフルだ。開園にあたって必要となる本やおもちゃも子育てを終えた友人・知人に声をかけて集めるなど、主婦ネットワークを最大限に活用、自身は食品衛生責任者養成講習会を受講して、補助金が出るまで園児たちの食事を作った。

 資金は親戚から500万円を借りてスタート。開園の11月から3月までの5カ月間は区からの補助なしである。保育室への補助は園児ひとり当たりいくらと、園児数で決まるので、定員12名を満たしていれば成り立つが、定員欠けすると厳しいものになる。が、1月には定員に達して、順調にスタートした。開園以来、定員割れしたことがないという超優良の保育室である。常に柔軟な発想で事にあたり、労力を惜しまない。それが信頼を生み、口コミで園児が集まることにつながっている。

 開園1年目に、区役所からの紹介でテレビ朝日に保育室が紹介されたことも大きかったという。遠くは静岡からの問い合わせもあったそうだ。

「当時は50代の主婦の起業が珍しかったので、取り上げられたのね。『テレビに出るのはイヤです』と断ったら、『保育所のPRになる』と言われて、それなら」と、取材を受けた。

 テレビの取材は朝6時半に保育室のシャッターを開けるところから、鈴木さんの一日を追う形で行われたという。

 愛情豊かで筋を通した保育姿勢が、見る人の心に響いたのだろう。

※「保育園の規模拡大と東京ワークライフバランス認定起業へ」につづく。


【すずきけいこ】

バンビ保育園(足立区梅島)代表。足立区女性団体連合会会長。

昭和55年(1980年)より足立区友愛訪問員、子育てアドバイザーなどのボランティア活動を開始。足立区女性団体連合会には、発足当初から参加、平成22年(2010年)より1期4年の会長に就任。平成11年(1999年)11月1日、民間保育のバンビ保育室を開設、平成22年(2010年)、東京都認証保育園に。同年、東京ワークライフバランス認定企業となる。

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