中学受験、成功する親、失敗する親

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第一章 苛烈な中学受験( 2 / 5 )

僅差の勝負

 競争率が上がるということは、それだけ僅差の勝負になります。最近の入試でいえば、併願校を考えるにあたって、安全圏を考える保護者の方が多かったので、中堅校の競争率が上がりました。今までの入試ではその学校をあまり受けなかった上位層が受験することになったのです。特に2月2日以降の学校ではこの現象が顕著でした。その結果、合格ラインにはこれまでだったら上位で悠々合格できた子どもたちが並びました。結果ほんのわずかの差で合否が分かれたのです。

 つまり、1問の計算間違い、ちょっとした問題の読み違いをしてしまったために、合格ラインに届かなかった子どもたちが少なくないのです。これまで上位校でしか見られなかった現象が、中堅校へ広がってきています。したがって、中学受験の対策としてこの僅差の勝負をどう制すかという課題が出てきます。

 私が受験準備の中で一番重要なのは「ていねいさ」だとお話しているのは、このためです。いかにミスを少なくするか、ということを特に受験前には考えていかなければなりません。1点で10人、20人すぐ変わってしまうのです。そして当たり前ですが合格ライン付近には多くの受験生が集中しています。ここを突破するために、ていねいな勉強は不可欠なのです。

 合格ラインに1点不足するだけで補欠になってしまいます。補欠になれば、合格が回ってくる場合もそうでない場合もあるわけですから、あまり精神的に良いものではありません。

 さて、ていねいに勉強する具体的な方法として、いくつかあげてみましょう。

1)問題文の条件に下線を引く。
 ただ下線を引くだけでは不十分で、解答を書く前にその条件を確認する作業が必要です。時速なのか、分速なのか。リットルなのかデシリットルなのか、条件を確認しましょう。

2)計算、式を残す
 途中でこちょこちょこと書いていくと、答えが合わなくなったときに、また最初からやり直しになります。しかし、過程を書いていれば、確認して進めますから、途中で間違いを発見できます。これがなかなか難しい。特に男の子はそうです。ですから、毎日解いている段階から、式や計算を残すということはくせにしておくべきでしょう。できる子どもたちもミスをしないわけではありません。ただ、自分でミスを発見できるから、最終的に正解にたどり着くのです。この違いが合否を分ける差といってもいいでしょう。

3)字をていねいに書く
 自分の字を見間違えて、ミスをするということもありますし、0と書いたつもりが、採点者には6と見えて間違う場合もあります。入試は答案が戻ってきません。したがって「これは0です。」と主張することはできません。誰がみても0だという字を書かなければならないのです。子どもたちの答案を見ていますと、まだまだ汚い答案が多いもの。模擬試験を受けながら、そういうところから練習する気持ちが必要でしょう。

第一章 苛烈な中学受験( 3 / 5 )

学校はブランドで選ばない

 学校選択にも流行があります。最近は、大学受験の面倒を良く見てくれる学校に人気があります。中学、高校は反抗期でもありますから、なるべく学校がいろいろな面倒を見てくれるところが良いと、保護者のみなさんが考えるからでしょうか。しかし以前はブランドとして聞こえの良い学校に人気が集まっていました。麻布、開成、駒場東邦、桜蔭、女子学院、雙葉、慶應、早稲田などはもちろんですが、学校がどこにあるかということも大きく影響するようです。そのために学校名に響きの良い地名を加えて改名する学校も出てきました。田園調布学園(前校名・調布学園)や広尾学園(同・順心女子)などはその例でしょう。また高輪(高輪駅)や渋谷学園渋谷(原宿駅)など都心にある学校もなかなか人気があります。交通の便が良くなって、人気が出てきたところもあります。私立は生徒が集まらなければ経営が成り立たないので、募集に関してもいろいろな手を考えます。学校のイメージを良くするという意味では建物にも力が入っています。食堂を完備して食べ盛りの生徒たちが十分に満足できるように気を遣っています。お母さんもお弁当を作らなくても済むので喜ばれているようです。

 受験する学校の内容については、十分に調べておく必要があるでしょう。例えば、実際にその学校の英語の授業は何をやっているのか、知らないで入れてしまう方が多いのではないでしょうか。もちろん各校とも教科や指導内容の充実には力を入れていますし、土曜日に授業をやる学校の方が多いでしょう。しかしその内容はやはり学校によって違いがあります。

 英語に力を入れている学校は多くなりました。例えばプログレスという特別な教科書を使っている学校も少なくありません。ただプログレスはすぐ過去形が始まるなど、独特なカリキュラムになっている分、文法がわかりにくくなる傾向があります。その点を学校側が理解して、別に文法の授業を行っていれば良いのですが、そうでない場合は、かえって英語が不得意になる可能性があります。

 また独自の教科書やシラバス(講義予定表)で進んでいく学校もあります。英語ではアメリカやイギリスの教科書を使う先生もいますから、進んでいくうちに英語がわからなくなったという生徒も出てきます。オリジナルの教科書を使っているところもあります。ある学校のオリジナル教科書には解答がついていません。もちろん授業で先生が解説をしてくれるので、その授業をきちんと聞いていれば、問題はないのです。ところがそれを聞いていないと、期末試験では大変苦労します。学校は自分で問題を解決すべきだと考えています。私はこの考え方はとても良いと思います。しかし、ただ甘やかして、親がいろいろなことをしてあげた子どもにとっては大変つらい学校になるでしょう。そのことに親が気づいていなければならないのです。

 学校がブランド化するにつれて、その学校をただ「良い学校」だと思い込んでしまう傾向が親子ともに見られるようです。しかし、せっかく合格したにもかかわらず途中でやめてしまった子もいます。ただブランドにあこがれていただけで、本当に通う学校としてしっかり検討されていなかったのかもしれませんね。

 ですから、学校をブランドとしてみるのではなく、子どもを通わせていいのか、本当に自分の子どもに合うのかをしっかり考えておくべきでしょう。

第一章 苛烈な中学受験( 4 / 5 )

偏差値表はあてにならない

 日能研、四谷大塚、サピックス。3つの塾の偏差値表が手に入ったらぜひ並べてみてください。それぞれの塾で微妙に違います。サピックスは自塾のレベルが高いことをアピールしたいのでしょう。偏差値50のラインが妙に高いところにあり、50以下の学校が他より多くなっています。したがって偏差値50以下の学校の差はあまり明確ではありません。四谷大塚の場合、合不合判定テストが1年間に4回行われ、志望者数によって微妙に偏差値が入れ替わります。それぞれの塾が自塾の考え方に合わせて作っているのですが、やはり意図を感じる部分はあります。

 ある塾が妙にある学校を高くしていたりすれば、「ああ、この学校に自塾の生徒の目を向けたいのだな」と勘ぐってしまいます。土台、その学校の合格偏差値が正確に計算できるはずもありません。試験ごとに受験する集団は微妙に違いますし、学校の出題傾向も模擬試験とは明らかに違うでしょう。例えば武蔵中学の出題傾向は記述式ですし、国語は物語文しか出題されませんから、模擬試験の成績が良くても、その学校に合格しやすいかといえば必ずしもそうではないのです。

 試験前はこういう話を聞いて、「それはそうだろうな」と思われる方が少なくないのですが、実際に入試直前や入試の渦中にある場合は、そんな余裕がなくなってしまいます。よくご相談を受けるのが「A中学は60でB中学が55ですから、やはりBにしたほうが受かりやすいですよね」という内容。私の答えは、Yesでもあり、Noでもあります。A中学とB中学では当然試験内容が違います。またその子にも得意不得意があります。だからB中学の合格は難しいが、A中学なら合格するという場合も当然のことながらあるのです。偏差値5ポイントなんて模擬試験の点数にしたら10点ぐらい。算数で2問違えばもうひっくり返ってしまいます。そんなデータに一喜一憂しても仕方がないのです。

 ですから、偏差値表で第一志望を選んではいけないのです。少なくとも第一志望については「成績を見ずに」選ぶ必要があります。どんな学校が、子どもの資質を伸ばすのに良いのか。入試傾向は子どもの資質に合っているのか、そうでないのか。そういう点に注意を払って第一志望を選ぶべきです。

 一方、併願校を選ぶ場合は偏差値表を使ってください。例えば55のお子さんなら、偏差値45の学校であれば確実に合格できるでしょう。そのランクの学校で第一志望と同じように子どもの資質を伸ばしてくれる学校、子どもの性格に合いそうな学校を選んでいけば良いのです。偏差値の1ポイントや2ポイントを気にしても仕方がありません。数ポイントでは、本番の入試ではひっくりかえってしまうことがありますから、10ポイント下げるぐらいでちょうど良いのです。

 最近、こんな生徒も増えました。第一志望の学校に第一次募集には落ちて、第二次募集で合格する子。第一次募集のほうが合格人数も多く、偏差値も低い。第二次募集の方がうんと高いのです。その差は平気で10数ポイントあります。でも、それをひっくり返すことができるのです。その子が特別だから? いいえ、そのくらい僅差で子どもたちが並んでいるからです。第一志望はそのくらい気持ちがこもるものですから、直前になって変えるよりは、むしろ滑り止めで調整する方が良いでしょう。

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田中 貴
作家:田中 貴
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