~美の衝撃~
真美雄にとって学校生活は針のむしろとなっている。高一、高二と全国的な賞どころか福岡地区の賞にも該当しなかった。学校からは授業料泥棒のように見られている。ある教師からは学校を辞めろと暴言をはかれた。真美雄は何度退学しようかと思ったことだろう。退学を申し出るたびに思いとどまらせたのが絵美先生なのだ。絵筆を握れなくなった真美雄になぜか手を差し伸べる。
卒業まで五ヶ月の辛抱と唇をかみ締める。時間が早く経つことだけしかもはや頭にない。市営住宅から通うような貧乏学生は真美雄だけだ。彼には学友はいない。また、真美雄から友達を作る気持ちはまったくない。周りの学生の贅沢な話を聞いているとムカつくだけだ。貧乏であることを隠す気持ちはないが、同情されると惨めになる。だから、夜、小遣いを稼ぐためにピザの宅配のバイトをやっている。