~男の亡霊~
絵美先生へ
美の宇宙 至上の美に歓喜する
心奥深く静かに眠る美 コロナのごとく激しく燃え上がる
美の息吹に陶酔 美の魂に感謝
わが魂「美神」のしもべ
これは真美雄が絵美先生との衝撃的出会いを詩にしたものだ。子供のころから数えきれないほどの絵を描いてきたが、すべて美を描いたものであった。中学2年のとき遊園地で遊んでいる少女たちを描いた作品が文部科学大臣賞に輝いた。小学校のときにも母親を描いた作品が知事賞に輝きTVニュースでも取り上げられた。そのとき以来、真美雄の心に画家となる夢の風船が大きく膨らんでいった。
彼は福岡美術大学付属福岡芸工高校の三年生。高校生最後のコンクールの締め切りまで1ヶ月を切っているが、もはや作品を提出することはない。画家となる夢の風船は小さくしぼんでしまった。入学後、数点の絵を描いたがまったく美が描けなくなっていた。2年になってからは絵筆を握ることさえできなくなってしまった。美の線がまったくイメージできなくなってしまったのだ。