父さんは、足の短いミラネーゼ

あとがき( 1 / 1 )

あとがき

あとがき

 

文芸社編集部の人に、「あとがき」を書くのは読者への親切だと教えられました。

 

確かにここまで読んできていただいて、後は筆者紹介で「おしまい」ではちょっと失礼だと思います。そこで、なぜ僕がこの文章を書き始めたのかについて話してみたいと思います。

 

その始まりは、遠い昔、縁あってIBMに入り、そしてイタリア、ミラノの街に住むことになった幸運と、このミラノが、その後僕の心の中で第2の故郷になっていったことにあると思います。

 

若かった僕が、ミラノで生活し、仕事をし、人に出会い、喜び、憤慨し、びっくりし、困り、助けられ、新しい発見をし、友達を作り、住み着いていったことに始まりはあると思うのです。さらに、その後も他のヨーロッパとか、アメリカや、オーストラリア等に滞在し、そこで現地の人たちといっしょに働き、時間を共有することによって、さらに素晴らしい体験と感動を発見しつづけることができました。

 

こうした間に僕の記憶に残ってふくらんできた感覚は、そこを単に通り過ぎるだけの通行人、もしくは旅人の視点とは違った、そこに住む人達の生活を、そばから感動しながら、見ている自分の視点によるものだと気がついたのです。

 

そして、こうした国、その土地の人々、生活、仕事への取り組みかた、物の考え方などに対して、僕が感動を含めて、自然に溜め込んできたものだと思ったのです。

 

そして、それを他の人たちに伝えたかったのです。とりわけ、これから可能性がいっぱいの若い人たちに対して話たかったのです。

 

勿論、僕自身にとっての意味は、一人旅の基本的な問題からの開放です。一人旅では、何かに遭遇し、感動しても、それをすぐそこで、他の人に伝えられない、他の人と共有できないという、大変なもどかしさがあります。こんな風につもり積もったもどかしさを、僕はこのエッセイたちに託したのだともいえます。

 

もう一つ最近発見したことがありました。巣立っていった僕の息子と娘に、僕が外国で感じたこと、見たことなど、いろいろなことをいっぱい、いっぱい話してきたつもりだったのですが、実はそれはやはり「つもり」で、本当はまったく話していないことに気がついたのです。

今となっては、僕の頭の中に残る記憶を紙の上にダンプして、彼らが読める形にしてあげるしかないのです。

 

今年の秋、楽しみにしていた中部イタリアの田舎を一ヶ月ほど、ゆっくり歩いてきました。日本の明治維新の頃にやっと統一されたイタリアですが、最後の最後まで統一に反対していたのが、このウンブリアとかトスカーナ地方です。そこには、独立都市国家、コミューネだった誇り高い町や村が、そのながい歴史を誇り、独自の伝統の香りを今もその日常生活に色濃く残していました。一つ一つが輝きながら…。

 

その帰りにミラノで、僕は昔住んでいたアパートを33年ぶりに訪ねてみました。そのアパートは僕の記憶とおりに、昔のまんまのたたずまいで、手入れも十分されてちゃんとそこに存在していました。ミラネーゼの生活の仕方は、やはり今も変わることなく生き続けていました。

 

僕のエッセイ、お読みいただいてありがとうございました。

 

2002年11月、秋

 

電子版のあとがき

 

 2002年に発行された、紙の本が完売になりました。出版社は重版の意図はないようで、このままでは客観的な「物」としては存在しなくなります。残念なので、電子版で残すことを決めました。どうぞ、よろしくお願いします。

著者プロフィール( 1 / 1 )

著者プロフィール


著者プロフィール

 

徳山てつんど(德山徹人)

          

1942年1月1日 東京、谷中生まれ

1961年 大阪市立大学中退

1966年 法政大学卒業

1966年 日本IBM入社

 

  システム・アナリスト、ソフト開発担当、コンサルタントとして働く

  この間、ミラノ駐在員、アメリカとの共同プロジェクト参画を経験

      海外でのマネジメント研修、コンサルタント研修を受ける

 

1996年 日本IBM退社

 

1997年 パーソナリティ・カウンセリングおよびコンサルティングの

   ペルコム・スタディオ(Per/Com Studio)開設

 

EMailtetsundojp@yahoo.co.jp

HP: http://tetsundojp.wix.com/world-of-tetsundo

 

著書

 

Book1:「父さんは、足の短いミラネーゼ」 http://forkn.jp/book/1912/

Book2:「大学時代を思ってみれば…」    http://forkn.jp/book/1983/

Book3:「親父から僕へ、そして君たちへ」 http://forkn.jp/book/2064/

Book4:「女性たちの足跡」          http://forkn.jp/book/2586/

Book5:M.シュナウザー チェルト君のひとりごと その1」                                   

                         http://forkn.jp/book/4291

Book6:M.シュナウザー チェルト君のひとりごと その2」

                                                          http://forkn.jp/book/4496

Book7:「ミラノ 里帰り」                        

                         http://forkn.jp/book/7278

 

              

         

 


                                                                                                                                                                    

 単行本の紹介「父さんは足の短いミラネーゼ」

 

2003215日 初版発行 文芸社 

ISBN4-8355-5108-7 C0095

 

 

イラストレーター  丸山 薫

デザイナー     片岡 美喜子

 

 

 

 

 

徳山てつんど
作家:徳山てつんど
父さんは、足の短いミラネーゼ
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