「私は、王様に連れてこられるまで、自分の国がこんなに美しいということを知りませんでした。
まず、それがひとつめのありがとうです。
そして、初めていい香りのするお風呂に入りました。自分がこんなに白くてきれいだったなんて知りませんでした
これがふたつめのありがとうです。
あんなに美味しいごちそうを、お腹いっぱい食べたのも初めてです。これがみっつめのありがとう。
そして、こんなにきれいなリボンをつけて着飾ったのも初めてです。ありがとうございます。」
「・・・・・・・・・・・」
王様はびっくりしてしまいました。
今、自分が食べるごちそうからお礼を言われたことなんて、なかったのですから。
そして、今まで自分が当たり前のようにしてきたことに、こんなに感謝しているウサギをみて、
胸の奥にある今までの心が、ゆで卵の殻のようにひび割れて、
胸いっぱいに光がさしたような、温かい湯で満たされたような、そんな気持ちになりました。
「よし・・・食べるぞ!」
王様がいいました。
「はい」
かわいそうなウサギが一歩前に出ました。
「お前も食べるんだ。」
「えっ?」
かわいそうなウサギは耳を動かして王様のほうをみました。
「お前も一緒にごちそうを食べるんだ。」
王様はそう言うと、テーブルに並んだごちそうを食べ始めました。
その日の王様の誕生会は、夜がふけて、お月さまがあくびするまで続きました。
僕たちのいるところから、1番近くて、1番遠いところに
おおかみの王様と、幸せなウサギの住むお城がありました。
すばる