幸せなうさぎ

 

「私は、王様に連れてこられるまで、自分の国がこんなに美しいということを知りませんでした。

 

まず、それがひとつめのありがとうです。

 

そして、初めていい香りのするお風呂に入りました。自分がこんなに白くてきれいだったなんて知りませんでした

 

これがふたつめのありがとうです。

 

あんなに美味しいごちそうを、お腹いっぱい食べたのも初めてです。これがみっつめのありがとう。

 

そして、こんなにきれいなリボンをつけて着飾ったのも初めてです。ありがとうございます。」

 

「・・・・・・・・・・・」

 

王様はびっくりしてしまいました。

 

今、自分が食べるごちそうからお礼を言われたことなんて、なかったのですから。

 

そして、今まで自分が当たり前のようにしてきたことに、こんなに感謝しているウサギをみて、

 

胸の奥にある今までの心が、ゆで卵の殻のようにひび割れて、

 

胸いっぱいに光がさしたような、温かい湯で満たされたような、そんな気持ちになりました。

 

 

「よし・・・食べるぞ!」

 

王様がいいました。

 

「はい」

 

かわいそうなウサギが一歩前に出ました。

 

 

「お前も食べるんだ。」

 

「えっ?」

 

かわいそうなウサギは耳を動かして王様のほうをみました。

 

「お前も一緒にごちそうを食べるんだ。」

 

王様はそう言うと、テーブルに並んだごちそうを食べ始めました。

 

その日の王様の誕生会は、夜がふけて、お月さまがあくびするまで続きました。

 

僕たちのいるところから、1番近くて、1番遠いところに

 

おおかみの王様と、幸せなウサギの住むお城がありました。

 

 

すばる

 

 

 

 

 

朗読( 1 / 1 )

 
 
 
 
 
 
 
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作家:すばる。
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