「バッター八番 木村 」
あと一打で逆転・・・・
はっきり言って僕に自信は無かった、練習なんてほとんど出た事がないしルールも最近覚えたばっかりの補欠が美佐中学野球部の三年生最後の試合のラストバッターになると誰も思っていなかった。
八番で逆転打を放つ予定だった阿部がユッケを食べて救急車で運ばれたのは昨日のことだった。
「ストラィーク バッターアウト!!」
見事に三振、・・・美佐中野球部全員の首が九十度にへし折れた。
僕の青春は終わった。もともと勉強も運動も(やる気も)才能が無いのは分かっていた。
「チームワークを学ぶには野球しかない」とやる気の無い僕を無理やり入部させたのは父だった。
これでやっとタイヤを腰に巻いて走ったり、無意味なコーチの説教も聞かなくていい。
やっとこの部室ともお別れか・・・
汗臭い臭いの染みついた部室でスパイクやらグローブをバックへ放り込んだ。
さて、明日からは高校受験へ専念だ・・・と言っても、勉強も全く出来ないのに受験と言うのも可笑しい。
テストも70点以上取ったのはいつのことだろうか・・・僕は高校行けるのか?
「そうだ!明日から靴磨きのバイトをして・・」
そんな事を考えながら校舎を見つめてため息ついた時だった・・・