ほんのつくり話

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<呪文>

 <呪文>・貴方はある日、不思議な体験をしましたが、そのことを誰にも言わずにココロの中だけに仕舞っておきました。


・貴方はある日、不思議な体験をしましたが、そのことを誰にも言わずにココロの中だけに仕舞っておきました。

 ある時、貴方は知人が病に倒れたと聞いて、病院に行きました。知人の親族たちが食事に行っている間、貴方は知人と2人だけになり、ある呪文のコトバをかけました。それから間もなく、知人は病気から回復しました。

 別の時、貴方は見知らぬ人が道端で倒れているのを見つけました。貴方は直ぐに駆け寄り、ある呪文のコトバをかけました。そのとき、その人は目を開けたので、貴方は救急車を呼ぼうとしましたが、その人から必要はないと言われました。その見知らぬ人は回復して立ち去っていきました。

 そのようなことが十数回もあった後で、貴方は交通事故に遭いました。歩いていた貴方に車が後ろから突っ込んだのでした。その時、ある人が近づいてきて、あるコトバを貴方にかけました。
 貴方はハッとして意識をとり戻しました。
 それは、貴方が使ってきた呪文のコトバでした。

<1万回家出した犬>



・ある日、あなたの飼っていた犬が家出しました。
 理由は分かりません。あなたは近所を隈なく探しましたが、見つかりませんでした。
 犬は、しばらくの間、野良犬となって自由に暮らしていました。ある時、犬は捕まって保健所に連れていかれましたが、運良く飼い主が現れました。
 それから10回目の家出の後で、次の飼い主のところにいる間、犬は高価な首輪をしていました。
 100回目は、飼い主が帰って来なくなったときでした。
 1000回目は、飼い主が茶トラの猫をつれてきたときでした。
 10000回目のとき、老いた犬は何故かあなたのことを思い出し、長い旅に出ました。ようやく、あなたの家の近くまで辿り着いた犬は、あなたと子供が楽しそうに散歩しているのを見かけました。その子供が連れていたのは同じ種類の子犬でした。


・犬は立ち止まって、あなたを見ていましたが、安心した様子でその場に横たわり、再び起き上がることはありませんでした。
 あなたは、その日の夕方、近所の人から犬のことを訊かれましたが、自分の犬ではないと答えました。

・家に帰ると、あなたは子供とゲームをして遊びました。
 その夜、あなたは最初に飼った犬が家出したときの夢を見ました。
 翌朝、あなたは起き上がると、「もしかすると昨日の犬は」と呟きました。

 成長した子犬は、ある日、子供といっしょに最初の家出をしました。[完]

<1万人眠らせた羊>



・あなたは眠れない夜、よく羊を数えていました。
 ある日、あなたはいつも最初に出てくる羊に尋ねました。
 「あなたは何処から来たの?」
 その羊は「ニュージーランドから。」と答えました。
 あなたはさらに、「これまでどれくらいの人を眠らせたの?」と尋ねました。
 羊は気まずそうに答えました。「数えるのは苦手、数えられるのは得意だけど。」
 あなたはまた尋ねました。「昨日はうまく眠らせた人、いたの?」
 羊は、「あぁ、ぐっすり眠った子供がいたよ。」と答えました。羊にとって1万人目となった子供は、永眠についたのでした。
 「そういえば、次に来る友達の話によると、お姫様をずい分長い間眠らせたこともあったらしいよ。」といって、羊は去っていきました。
 あなたは、羊の話を聞いた後、眠れなくなりました。[完]

<1万年の時を越えて>


・あなたは、子供のころ、少し甲羅の形が変ったカメを亀吉くんと呼んで可愛がっていました。
 ある日、あなたの家族は引っ越すことになり、カメは連れていけないと言われて、あなたは泣く泣くカメを近くの公園の池に捨てに行きました。

 それから数十年が経ち、あなたは、かつて住んでいた場所の近くに引っ越して来ました。ある日曜日、あなたが公園に行くと、池の中で泳いでいる少し変った形の甲羅をしたカメを見つけました。あなたはそのカメに話しかけました。
 「もしかして、きみは亀吉くん?」
 「。らかたて来に園公のこらかてい老年はたなあ
      。るてっ知くよはとこのたなあ、もで
         。よいならかわはにクボ、ぁさ」
 とカメは言いました。
・あなたは、驚いて尋ねました。
 「きみは未来から来たの?」
 カメは答えました。
 「。らかすで逆はとたなあ、はき向の間時の私
  。たしまれま生に後年万1はで間時のたなあ」

 あなたは自分の将来のことを訊こうと思いましたが、すぐに思いとどまりました。
 カメは続けてこう言いました。
 「。だんいならか分はとこの去過
  、どけるいてえ憶はとこの来未」

 あなたはカメを捨てたことを知られたくなかったのです。
 カメは子供のころのあなたに会うとも知らず、どこかに泳いでいきました。
・あとで、あなたは、あることに気付きました。
 「そうか! 子供の頃、自分は亀吉くんを池に捨てたけど、
       亀吉くんは僕がひろってくれたと思う筈だ。
  そしたら、その時に流した涙は再会のうれし涙ってことにはならないかなぁ。」 [完]
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