算命学余話 #G39

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算命学余話 #G39 (page 1)

 前回の余話#G38では、主星と従星の組合せについて具体的な例を挙げました。昨今はネットでも宿命を自動算出できますし、十大主星や十二大従星の特徴をそれぞれ解説した無料サイトもあるので、算命学素人の方でも、自分の陽占が提示する八つの星の意味するところをざっくり把握することが可能になりました。
 しかし主星と従星の組合せについて論じたものはなかなか見当たりません。なぜなら、文章にすると嵩ばりますし、仔細に見れば見るほどその分量は増えて終わりがないからです。とても全部は掲載できないし、必要もない、その作業は鑑定者の頭の中で瞬間的に処理すればいいものだ、という話は前回した通りです。なにしろ鑑定実践で駆使する技法は他にも山ほどあるのですから。

 こうした山ほどある組合せの妙をいちいち暗記するのは大変ですし、鑑定師であっても必ずしも暗記してはおりません。なぜなら、算命学思想の根幹である陰陽五行を押さえておけば、暗記しなくともいつでも容易に解答を導き出せるからです。従って、鑑定師を志す人にとってまず体得すべきは、陰陽五行でこの世界を眺める習慣であり、陰陽五行で世界をざくざくと斬って整理する手際なのだと、私は考えています。
 具体的にどういった訓練をすればいいかというと、難しいことはありません。遊戯に例えるなら、チェスよりは将棋をするのがいい。なぜなら将棋は、対戦相手から奪った駒を自分の配下として使うことができるルールだからです。
 チェスでは取った駒は死に駒で、再利用はできません。戦争に喩えるなら捕虜は取らず、倒した敵は全て殺してしまうルールです。一方、将棋は殺さず捕虜にして、よく言えば味方にする。悪く言えば敵方の主君を裏切らせる。そこに無駄な殺戮や存在の抹消はありません。忠義や道義といった問題は残りますが、陰陽五行論には元より善悪の差別はありませんから、算命学的な循環思想や陰陽反転思考を構築するには適切な遊戯だと言えるでしょう。

 チェスと将棋は発祥が同じでよく似た知的遊戯と認識されていますが、上記の理由で将棋の方が実際の生活や世界に対する認識方法としては適していると思います。というのも、チェスが普及している西洋文化では、その視線は中央や自分に集約しており、視界の片隅で暮らす少数派や異端者をものの数に入れないかのような態度が目立つからです。
 最近になって「寛容」という言葉が声高に叫ばれるのも、キリスト教徒が「異教徒」に対して、キリスト教徒と同等の人権を認めてこなかった長い歴史の産物です。しかも「寛容」という態度はいまだ異教徒を低く見ている、まるで「知識や分別の備わっていない幼児に対して大人は忍耐すべきだ」といった高慢な含みが読み取れ、問題解決のための標語としては不適切だと私は感じています。そこには「自分の陣営こそが正しい」という上からの一方的価値観や他者に対する教化意識が濃厚で、相手を自分と同等のものとして認めようとする真の価値基準の変革へとは繋がっていない。
 「寛容になりましょう」と唱えるのは、以前は不寛容だったという自戒の意味があるのでしょうが、問題の根源は「自分が寛容か不寛容か」という点にはなく、倒した敵の駒を容赦なく打ち捨てる習慣と共に蓄積された、「自分の陣営が常に正しく、向こう側は間違っている」という一神教的絶対思考にあると、私は考えています。

 勿論私は東洋人であり、算命学は東洋思想ですから、敵と味方は立場を入れ替えればきれいに逆転することは、わざわざ教えられるまでもなく体感として理解しています。従って、将棋を知的遊戯として愛好してきた日本人には、陰陽思想で世界の裏表を眺めることは何ら困難を伴うことではないはずです。逆に一神教の習慣から逃れられない年月を送って来た人には、善だと思っていた自分が向こう側から見れば悪だということは、容易に受け入れられず、受け入れるには葛藤が生じます。無論、葛藤を乗り越えて克服することは可能ですが。
 尤も、昨今の日本の子供は将棋より別の遊戯に時間を費やしているので、善だと信じ込んでいる自分が反対側から見れば悪である可能性や、敵を殺さなくても味方にすればいいという発想に、以前より適応できなくなっているかもしれません。親御さんたちには、外国語よりも将棋を子供に習わせた方が、その後の人生で大きな過ちや葛藤に苦しまずに済む可能性が高いと、算命学からご提案しておきましょう。

 今回の余話は守護神シリーズです。前回は丁火まで進みましたので、順番からすれば次は戊土です。しかしながら、算命学で自分の宿命を気にする人というのは、私の経験では戊土の人は少なく、逆に辛金の人からの問合せは多数です。つまり「はやく先に進んでくれ」という声に押されて、戊土・己土・庚金の方には申し訳ありませんがこれをすっ飛ばし、先に辛金の守護神の解説に踏み切ることにしました。皆さん、悪しからず。
 辛金が自分の宿命に対しより強い関心を示し、戊土はより関心が薄い、という数的データは個人的なもので、算命学の総論とは無関係ですが、思考を自由に遊ばせて、私なりの考察も盛り込みます。
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