私の中にアレを入れ、彼がシコシコと腰を動かす。
「なぁ……少しは声とか、出せよ」
その呼吸は乱れている。
「だって、ちょっと」
「ちょっと、何」
「だから、その……痛い……」
「はあ?」
その塊は、スポンと抜かれた。
「どうしたの?」
「萎えるだろうよ、普通」
「あ、ごめん……」
「つまんねぇ女」
それが最初に付き合った彼との、最後の会話だった。
もうすぐ三十になる私は、オフィスではちょっと、厄介者らしい。
同期のOLは結婚やら何やらで、殆どが消えていた。
私のいる部署、販売促進部でも、どういう訳か最年長になっている。
だから一層、気を遣う。
ひと昔までは、お局OLが若い子を虐めるという縮図が一般的だったけど、そんな黄金期、とっくに終わっていた。
今なら無視され、逆襲されたあげく、居場所がなくなるのがオチだ。
彼女達に適当に合わせて持ち上げ、媚まで売っていれば、仕事に慣れたこの職場はそうは悪くない。
私の最近の楽しみは、貯金。老後に備え、少しでも額が増えると、自然と顔もにやけてくる。
今日も突然、後輩OLから残業を頼まれた。もちろん喜んで、引き受けてあげる。
「大丈夫、アフターファイブ、楽しんできて」
あー、何と感動的なお局だろう……。
意地やプライドで、暮らしてはいけない。通常勤務の二割増しで
加算される残業手当は、デパ地下限定のバームクーヘンよりも美味しいから。