算命学余話 #G26

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算命学余話 #G26 (page 1)

 前回の余話は、自殺相の周辺に話を広げてみました。くどいようですが、調舒星に自殺相があるからといって必ず自殺するわけではありませんし、他の星の人であれば絶対自殺しないというわけでもありません。その一例として、龍高星が自殺した場合にどういう様相になるかを前回合わせて述べました。他の星々、禄存星や車騎星その他すべての星も、もし自殺するとしたらこういう行動になる、という予測は、龍高星の例を見れば類推できると思います。星にはそれぞれ特徴があって、その特徴が行動に現れるはずだからです。興味のある方は、残りの十大主星についてあれこれ思考してみて下さい。更に進んで、その十大主星に十二大従星の組み合わせを加味したり、陰占や後天運との関りを加えてみたりすれば、より鑑定の精度を上げることができるでしょう。

 自殺をテーマに掲げると『算命学余話』の読者が増えるのですが、この世の死亡原因として自殺はマイナーなので、しばらくこのテーマは置いておくことにしましょう。今回のテーマは、今年7月に高齢で亡くなった作曲家、ニコライ・カプースチンの命式を取り上げます。
 土星裏ブログをご愛読の方々には周知の通り、筆者は三年程前からカプースチン先生の楽曲にはまっています。その特徴はジャズとクラシックの融合であり、クラシックの重厚さと超絶技巧、ジャズの持つ和音とリズムを両取りした究極のハイブリッド音楽として、一部のファンに熱狂的に支持されています。

 カプースチン先生はソ連時代にクラシックの名門モスクワ音楽院で学んだためクラシックの技術が体に沁み込んでいますが、卒業後は当時のソ連には新しかったジャズに転向し、軽音楽の道に進みます。彼の弾くピアノ演奏を聴けば判りますが、その技術は軽音楽には似つかわしくないほど高度で、芸術性をさほど問わない軽音楽に使うにはもったいないくらいです。一音一音の響きをどうこう考える軽音楽家などどれほどいるでしょう。この魂の込め方は明らかにクラシックの音楽教育の賜物です。
 その技術と感性をジャズに持ち込んで作曲したらどうなるか。本人がそんな気概をもって作曲を始めたかどうかは判りませんが、それまで誰も考えもしなかったジャズとクラシックの融合を高度なレベルでやってのけた功績は、その作品が如実に語ってくれています。それまで音楽界においては、クラシック奏者にジャズは弾けないし、ジャズ奏者にもクラシックは弾けないというのが一般論でした。決定的な差異は、リズムと技巧です。両者は反発こそすれ融合はしないと、考えられてきたのです。

 しかしカプースチン先生はそれを飄々とやってのけて、数多くの名曲を世に出しました。冷戦時代にソ連国内に留まっていたその音楽は、ソ連崩壊後に西側世界へと輸出され、最近になってようやくピアニストが演奏会で挑戦する機会が増えてきました。しかしプロのピアニストにとっても非常な難曲なので、私の聞く限り、カプースチン先生本人の演奏が一番上手いです。まず技術がすごい。
 一音一音が精確にタッチされるので粒が揃っているし、高速なのに重みと余裕があるから速度を感じさせない。多重和音の利かせたい一音だけを突出させる技術は、クラシックならではのもの。そして軽快なメロディーの中にも背筋の伸びたような品性がある。まさにソ連型ピアニストの典型です。でも本人は、専業ピアニストにはならなかった。軽音楽のバンド演奏と、作曲が仕事でした。そして自作曲の楽譜を残すことにもあまり積極的ではなかった。周囲が突っつかないと楽譜を残さなかった可能性は高かったのです。どうしてでしょう。その辺りは、宿命から読み取れるのでしょうか。

 先日カプースチン先生の追悼番組で、最晩年の本人の映像を見ることができました。実におちゃめな老人で、この諧謔性があの愉快な楽曲を生んだのだと知れました。私は普段から短調の音楽に美意識を感じても、長調の音楽には心動かされることがありません。明るいメロディーが脳天気に聴こえて、深い感動に結びつかないからです。しかし唯一カプースチン先生の音楽は違った。愉快なのに上品で、軽やかなのに深みがあり、ロシアの作曲家の例にもれず、底辺に憂いがある。そしてその痛快な旋律と、訓練を積み重ねて得たクラシックの技術が合わさることで生じる、笑い。一種のギャップ萌えです。
 彼の音楽は「ジャズ風クラシック」という呼び方をされていて、カテゴリーとしてはクラシックに入ります。しかし聴けば判るように、素人が聴けばジャズにしか聴こえません。こうした両面性や諧謔性、なぜクラシック一本ではだめだったのかなど、宿命から読み取れるものもあれば、ないものもある。というわけで、故人を追悼しつつ、その人生を宿命から眺めてみたいと思います。鑑定実践における技術的な話にも、力を入れた内容です。
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