算命学余話 #G24玄

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算命学余話 #G24玄 (page 1)

 野生動物との濃厚な交流で知られるムツゴロウさんこと畑正憲氏には、ムツゴロウさんとしてお茶の間の人気を博していた頃には語れなかった奥義がありました。その奥義とは、動物と仲良くなるための究極且つ万能の方法です。しかしそれは子供が真似をするにはあまりに危険な技であったため、ムツゴロウさん現役のうちは固く口を閉ざしていました。現役を引退して子供達のアイドルでなくなり、隠居に近い執筆家となった高齢の畑正憲氏は、後世の研究者のためにとうとうその奥義を語ります。

 それによれば、まず前段階として、生物としての人間のメカニズムを知ることから始めます。自分の手を自分の太腿の、性器に近い部分に当てる。そしてその感触が、手が腿を感知しているのか、腿が手を感知しているのか、どちらなのかを考えます。すると答えは出ない。物理的には、皮膚が皮膚に触れた感触が電気信号に変換されて脳へと伝わるという複雑で長いプロセスを経ているはずですが、手から伝わる電気信号と、腿から伝わる電気信号が、脳へ到達するのはほぼ同時で、一瞬です。見分けはつきません。何かに触れるだけでも膨大で単純ならざるプロセスを介していること。それが一瞬で行われていること。そういうメカニズムを人間も動物も持っているのだ、と認識することから始めるのです。
 それが判ったら、今度は自分の掌を、仲良くなりたい動物、例えばライオンなどの太腿の、同じ場所に当ててみます(これが大変危険なので、子供に教えられないのです)。そして先のプロセス、メカニズムを等しく持つ者同士である相手を想い、接します。すると相手の気持ちと自分の気持ちが混ざり合い、どちらがどちらとも言えない境界線の曖昧な感覚が生まれてきます。このように互いが渾然一体となることで、次第に相手を我が事のように理解できるようになる。こうした関係性を保ちながらしばらく一緒に暮らします。相手が野生動物だと、ペットと違って警戒心を解くのに時間はかかりますが、大体一カ月で仲間として認識されると、畑氏は言います。これがムツゴロウ流奥義というわけです。いやはや、やはり凡人ではなかった。子供は絶対真似しちゃいけません。

 ムツゴロウさんのびっくり人間度を伝えたくて引用したわけではありません。この話には続きがあるのです。こんな具合で百戦錬磨だったムツゴロウさんが、唯一失敗した体験です。
 ある時ブラジルで、保護されて檻に入れられたライオンと接触を試みたところ、どうしても檻の中には入れられないと係員が言うので、やむなく檻を挟んで対面し、触れようと手を伸ばした。するとそのライオンは檻の中から、彼の手の中指を食いちぎったのです。畑氏の右手には今も中指がありません。しかしこの事件は、動物と仲良くなれると自惚れた人間の浅慮な行為として片付けられるべきエピソードではないのです。

 畑氏は、あの時自分を檻の中に入れてくれれば、ライオンは自分を襲わなかったと断言します。いつものように内腿に手を当てて密着し、生物として境界の混ざり合った接触を試みていれば、ライオンは畑氏を攻撃すべき他者とは見做さなかったはずだと。両者を隔てたのは無機質の鉄の檻であり、これが有機体である生物同士の交流を絶縁体のように阻んだ。檻や壁を設けることこそ、生物間の衝突や無理解を生じさせる元なのだと、畑氏は強調しています。
 檻や壁は本来安全確保のために設置するものですが、ここではそれが逆転している。檻や壁がなく、隔てない方が安全だというのです。この一見した矛盾が実は正解だという話は、算命学の陰陽論に合致しているので、『算命学余話』の話題として相応しいと思いました。位相を変える、という技法です。立ち位置を変えて、見方を変える。すると風景が代わり、価値観が変わる。受け入れがたかった相手の主張が、我が事のように感じられて意見が変わる。そういう訓練が、算命学のみならず日々の暮らしにも役立つという話でした。

 今回の余話は、位相法(いそうほう)についてです。位相といっても、ここで触れた「立ち位置を変える」という一般的な意味に比べて、算命学における概念は限定されたものですが、鑑定技法として実践していくうちに、「ああ、一般的な意味の位相とそう変わらないな」ということが自然に判ってきます。
 位相法とは、算命学で云うところの合法、散法、及びその応用法を指します。これらについては、以前の余話でも何度か触れてきましたが、『算命学余話・基礎編』を読み終えて一通りの鑑定ができるような初級者が、更に鑑定を進めるのに欠かせない技法ですので、今回から『中級編』を設けて解説することにしました。
 『算命学余話・中級編』では、一般書として出回っている算命学の入門書では書ききれない、基礎技法ではあるけれどやや煩雑な実践技法について綴っていく予定です。『基礎編』と違って初心者向けの内容ではありませんので、初心者の方はまず『基礎編』から読み進めることをお勧めします。
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