ラスボスの思想(2)

 すでに述べたように、すべての人において、個々のニューロンはみな同じなのです。違うのは、ニューロンではなく、「組織的なシナプス機能」なのです。頭がいい人のニューロンも、頭が悪い人のニューロンも、スポーツが得意な人のニューロンも、スポーツが不得意な人のニューロンも、皆、同じなのです。

 

 ニューロンは、シナプスを媒介として、お互い連携していますが、シナプス機能は、AIで解析できないほど組織的に無限なのです。現段階では、AIを使って解明しようとしても、人間の生きたニューロンを用いた実験は不可能に近いのです。だから、数理的、物理的に解明することがかなり困難なのです。

            存在の法則

 

 それでは、いったい、どうやって、ニューロンとグリア細胞の相互機能を理解すればいいのでしょうか?私が思い付く方法としては、今のところ、「存在の法則」です。その法則とは、「プラス機能とマイナス機能が同時に起きる」ということです。ニューロンとグリア細胞に関していえば、お互い同時に機能を助け合う。シナプス機能においても、同様なことが言えると考えています。

 

 感情に関して言えば、「好き」だという気持ちが起きた時、自覚していなくても、同時に、ある対象に対し「嫌い」だという気持ちが起きているということです。

 

 経済学では、「需要と供給」が同時に起きる。法律学では、「権利と義務」が同時に起きる。化学では、「プラスイオンとマイナスイオン」が同時に存在する。積分では、「解析と集積」が同時に起きる。力学では、「作用と反作用」が同時に起きる。

今後、ニューロンとグリア細胞を効果的に機能させることができる脳内ホルモンが発見されるかもしれません。でも、大切なことは、お互いのニューロン機能を尊重することではないでしょうか?

 

 戦争で人を殺したり、人種差別したり、イジメをしたり、これらすべて、ニューロン機能なのです。

 

 人の攻撃感情には、恐怖心がかかわっています。言い換えると、殺人も、差別も、イジメも、心の底に恐怖心があるからなのです。だから、恐怖心が悪用されないように心しなければなりません。

 生きている限り、恐怖心は存在します。当然、恐怖心にも、長所と短所があります。長所として、恐怖心は危険から身を守ることに役立っています。短所として、恐怖心が共生の妨げになります。

 

 生きていくということは、感情と言動が恐怖心に左右されるということです。人は、恐怖心をコントロールできるものでしょうか?誰しも、恐怖心や不安感からの「逃避」は、娯楽に浸ることによって、どうにかできるでしょう。でも、その「コントロール」はかなり困難な心の作業なのです。

 

 いじめられている人の中には、毎日苦しむばかりで、恐怖が増大し、未来に絶望し、自殺する人もいます。いじめる人の中には、自殺したいと思うぐらい自分はいじめられた。だから、自分も人をいじめなければ、気が済まない、と思う人がいるでしょう。一方で、いじめられると死にたいと思うくらいいやな思いをする。だから、イジメはやめよう、と思う人もいるでしょう。

春日信彦
作家:春日信彦
ラスボスの思想(2)
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