ラスボスの思想(2)

            ニューロンは同じ

 

 AIが、工場での作業、日常生活、ゲームで活躍するほど、AIの進歩は目覚ましいものがあります。ところが、脳機能についての解明は、いまだ、道半ばというところです。

 

 一般的に、脳を使うとは、ニューロン(神経細胞)を機能させるということです。もっと細かく言えば、シナプスにおいて神経伝達物質(約50種類以上の化学伝達物質)が受容体に作用するということです。このことは、わかっていますが、シナプス機能による創造メカニズムは未知の世界なのです。

 

 生きているということは、ニューロンが機能しているということです。ニューロン機能というのは、まさしく、生理学的、化学的、物理学的なものです。ところが、その機能は、現実的なもだけでなく、非現実的なものも創造できるのです。

 例えば、天国や地獄が、死後の世界にはある。人は生まれ変わることができる。宇宙人が人間を作り出した。神様が宇宙を作った。山里の峠に幽霊があらわれる。空を飛んでいる夢を見た。

 

 泣いたり、笑ったり、考えてたりすることも、正しいと思うことも、悪だと思うことも、論文を書くことも、小説を書くことも、作曲することも、絵を描くことも、ニューロン機能の産物です。

 

 人を幸せにしようと修行に励んでいるお坊さんのやさしい思いも、それと相反する、しつけと言って、子供を虐待をする親の鬼畜のような思いも、ニューロン機能の産物です。

 

 

 生きている限り、ニューロンは機能します。でも、自分の思い通りに、すべてのニューロンを機能させることができるわけではありません。もし、生きていくために必要なニューロン機能を自分の意思で操作できるならば、自分の意思で心臓を止めることができることになります。これでは、人類は滅亡してしまいます。

 

 ニューロン機能は、遺伝的なものと環境によるものがあります。遺伝的な面では、人は、生まれてすぐには、歩けませんが、一定の栄養が与えられるならば、筋肉と平衡感覚の発達によって、立てるようになります。

 

 環境的な面では、生まれて1年ぐらいは、しゃべれなくとも、親の言葉を聞いているうちに、親と同じ言葉を習得し、話せるようになります。もし、知識が遺伝すれば、受験勉強などしなくて済むのにな~、と思ったことがある人は多いのではないでしょうか。

 

 言語、音楽、イメージなどを作りだしたりする、また、歩いたり、走ったり、泳いだり、などの体をコントロールするニューロンはどこにあるのでしょうか?それは、だれでも知っている頑丈な頭蓋骨の中です。

 

 というのは、ニューロンがとてもか弱いからです。微量の脳内出血だけでも、ニューロン機能に異常をきたします。言語能力に深くかかわっている海馬(かいば)に損傷が起きると認知症になってしまいます。

 

 頭内では、約数百兆個のシナプスを持った約2000億個のニューロンが、約2兆個のグリア細胞、脳内ホルモンなどと共生しています。脳は、未知なる内部宇宙と言えるでしょう。

 

 

春日信彦
作家:春日信彦
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