ウイルスってなんでしょう。
わかったようでわからないですよね。そこで身近かで、つきあいもながい(?)花粉と比較して、かんたんに説明したいとおもいます。
まずはサイズ。大きさですが、どちらもとても小さいです。でも小ささのレベルがかなり違っています。花粉は小さいとはいっても、なんとか目に見えるサイズ。花に顔を近づけると、花粉の粒が見えます。杉の花粉が風に飛ばされて見える映像をテレビなどで見たことがあるかと思います。このように花粉は小さいとはいえ、肉眼で見えるサイズです。
ウイルスはどんなに目が良い人でもぜったいに見えません。小さすぎて見えないのです。視力100万くらいある超人なら見えるかもしれませんが(笑)。ウイルスは肉眼で見えないので、お医者さんは専用の高性能顕微鏡で見ます。小学校の理科室にあるふつうの顕微鏡だとウイルスは見えません。ちょっと専門的になりますが、一般的に言う「ばい菌」とウイルスは別物です。ウイルスはばい菌よりずっと小さいです。「ばい菌」は学校の理科室の顕微鏡で見えますが、ウイルスは小さくて見ることができません。
このように、花粉とウイルスは、どちらも小さいのですが、小ささのレベルがケタ違いに違うのです。
花粉が体に入るとアレルギーが出ますよね。でも花粉は人体に悪いことをしません。花粉は、ほかの花のめしべにくっついて種になるためのものですから、人間の体に入ってもなにもしません。しかし人体のほうが、変な病原体が来たぞ。防衛だ! と勘違いして、花粉をやっつける攻撃をしてしまうので、鼻水が出たり、痒くなったりするのですね。
こういうふうに、病気の原因となりそうな小さなものが体に入った時に人体の反応のことをことを免疫(めんえき)といいます。人間はすごく強い免疫力をもっているので、ほとんどの病原体をやっつけます。病気になりません。そのために、なにかが入ってきたとき、それがほんの2個か3個しかなくても、免疫力はすばやく動いて、「病気やっつけ作戦」を開始します。手遅れになる前にさっと行動開始するのですね。それはいいのですが、そのときに、はやとちりして、人体にとって危険でない花粉を敵と勘違いして攻撃してしまうミスがあります。
それが花粉症です。
だから、花粉がほんのちょっこっと目や鼻に入っただけでも、やっかいな症状が出てしまうのです。人体の免疫力が間違った判断をしてしまう病気を花粉症と言います。
ウイルスが人体に入った時も、すかさず免疫力が行動開始です。
ウイルスをやっつけるため、鼻水を出したり、せきをしたりします。鼻水と唾液にウイルスを包んで体の外へ出すのです。それから、頭が痛くなったり、熱が出ます。それも人体の「ウイルスやっつけ作戦」のひとつなのです。ウイルスは熱に弱いです。たった1度か2度、体温が上がっただけでも、ウイルスは死にます。そこで、私たちの体は、病原体が来たら、体温を上げて、対応するのです。
このように、ウイルスが体に入って熱が出るのは正常な反応です。免疫が正しい判断をしているのです。そこが花粉症と違うところです。
感染について説明しますね。まず、感染と発症を分けましょう。感染とは病原体が人体へ入ること。発症とは、病気の症状が出ることです。もし分けないと、ウイルスが一個でも入れば、必ず病気になるような気がして怖くなりますから。
じっさいのところ、病原体が体に入ってもほとんどの場合は、発症しません。またはごく軽い症状だけで治ってしまいます。私たちの体の免疫力が、あっというまに病原体をやっつけてくれるからです。急にくしゃみが1回だけ出たり、鼻水がちょっと出たけど、それだけだったという経験がありませんか。それは普通の風邪のウイルスが体に入ったということです。そうして、入ってきたカゼのウイルスを人体がたちまちにやっつけて、くしゃみや鼻水に混ぜて外に放り出したのです。
花粉症の原因の花粉もまた、こうして人体に何個か入ったのですね。無害なのに、免疫システムが判断を間違えて花粉を排除しようと、せきや鼻水をくりかえし出します。しかし花粉を体外に出しても出しても、花粉シーズンは、スギ花粉がつぎつぎと鼻とか目に入ってしまうから、困ったことに、鼻水が止まらなくなるのです。
ウイルスは、花粉シーズンの花粉のようにはたくさんいませんから、くしゃみ・鼻水で出してしまえばそれでおしまいとなります。
ウイルスはふつうの空気の中にふわふわ浮いているものではありません。花粉は風に乗って浮いてますが、ウイルスは花粉にように風に乗って大量に飛散するものではないのです。すこしは飛散しますが、花粉とはケタ違いに少ない量でしかありませんし、少量のウイルスが体に入ったとしても、人体の免疫力のほうが、はるかに強力です。ウイルスはあっというまにやっつけられるでしょう。げんじつに、私たちは生まれてから、ずうっと、数日おきになんかのウイルスに感染しつづけてきたのですよ。そのほとんどぜんぶ、発症しないまま自然に治ってしまったから、本人も感染に気づいてないだけなのです。
ウイルスは、花粉みたいに、何個か体に入っただけで必ず発症する病気とは違うのです。仮にウイルス感染したとしても、ほとんどの人は発症しないまま済むでしょう。
心配いらないのです。