生き延びるためのメディアと信頼ネットワークの再構築

後書きに代えて

最後に、「震災とメディア」というテーマで今回寄稿したきっかけを説明したい。615日開催の「JAGAT大会2011」クロスメディア分科会において、「情報爆発化時代のクロスメディア戦略」をテーマにモデレーターを務めた。その際、クロスメディアの望ましい未来形とは、複雑化する世界と情報大爆発にメディア関連企業がどのように向き合い、個人にどのように伝えるかという課題を解消することと同義であり、特に「複雑な状況をその人に合わせて伝える技術(個別適合型テクノロジー)」が重要であり、さらに「課題解決型(ミッション遂行型)イノベーション」が組み合わさることで、様々なメディアサービスの商機やマーケティング機会があると説いた。そして、それはまさに現在進行形の東日本大震災復興に関わるメディア関係者が、何のプロフェッショナルとして、視聴者や消費者、顧客企業やクライアント、さらには諸外国とどのような信頼関係を構築できるかという課題そのものであると発言したのだった。

講演後、JAGAT関係者からは、発言の内容は非常に示唆に富んでいるが、より具体的なソリューションを例示することが可能なら、ぜひ、震災をテーマにした印刷白書の巻頭特集に寄稿願いたいとの依頼があった。ソーシャルメディアが震災を通じてどのように生活と結び付きを深め、既存メディアとどのような共生を可能とするかなどを、震災事情を踏まえて提言すれば良いと考え引き受けた。

しかし、実際、石巻の被災印刷会社を取材したり、仙台と東京を週に一回程度往復したり、被災者でもある有識者との交流を通じて得た複雑な心情の伴う経験を経て、イメージしたソリューションは、古くは過去1200年前の東北文化のルーツにまで遡り、またこの先100年は必要とする壮大なプランへと拡がりつつある。

それほどまでに、このテーマは根が深く、また今回の大災害は、このエリアに限った問題ではないことは明らかなのだった。ただし、今の私の社会的立場で、身の丈に合わない提言になっていることはお許しいただきたい。しかしながら、公に情報発信することで、長く本テーマと向き合うことを約束し、ご批判にも耐えながら試行錯誤を続け、いつか社会に貢献できたと思える日がくることを願いたい。それまで諸先輩方の厳しいご指導、若い方の情熱と恊働、各分野の専門家の皆さんからの助言もぜひ賜りたく思う。

國廣
作家:國廣
生き延びるためのメディアと信頼ネットワークの再構築
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