今後、ますます科学が発展し、人間の知能を凌駕するAIが、社会を構築し、人間を操作するようになれば、人は、自分のことについて、悩まなくてもいいようになるのでしょうか?
近い将来、おそらく、AIは、いかなる問題にも回答を出せるようになるでしょう。かなり具体的で難解な心の問題についても、きっと、模範解答を出すことでしょう。
そうなれば、人は、自分の心について、悩まなくてもいいことになります。仮に、そうなってしまえば、心の問題をテーマとしてきた小説は、この世から自然消滅してしまうのでしょうか?
極端な話になってしまいますが、自殺志願者が、自殺すべきか、それとも、思いとどまるべきか、AIに問いかけた時、AIは一体どんな回答をするのでしょうか?
AIは、自殺の必然性を説き、自殺を推奨するのでしょうか?それとも、道徳的な判断から、自殺を否定するのでしょうか?人が、極度のAI依存症に陥ってしまえば、自分について深く悩むことなく、AIの指示に従うかもしれません。
AIと人間の最も違う点は、AIは、一切、悩まないということです。人間は、生きている限り悩むのです。悩むから、苦しみ、自殺もするのです。AIのように知能が高く、一切、悩まない人間がいたとして、彼を最も優秀な人間だと言えるでしょうか?
いずれ、人がAIに依存し、生きていく時代はやってくるでしょう。でも、人がAIになるということはありません。つまり、人間の脳細胞は、永遠に悩みを作り出すのです。
悩みが永遠に存在するならば、人は、悩み、苦しみ、自分について考察し続けるでしょう。また、小説も存在する可能性があります。
人は、悩むことを喜びません。むしろ、この世からすべての悩みが、消え去ることを望みます。でも、悩まなくなるということは、もはや、人間ではなくなるということなのです。