対馬の闇Ⅴ

 何の根拠もない別荘の話を聞かせて、がっかりさせるのではないかと思ったが、沢富は、真剣なまなざしで話し始めた。「情報というほどでもないかもしれませんが、鰐浦湾北部に、離島にふさわしくないすごく豪華な別荘があります。この別荘は、IT社長の別荘らしいのですが、どうも、腑に落ちないんです。常識的に考えて、対馬の山奥に豪華な別荘を建てるでしょうか?あくまでも、憶測にすぎませんが、もしかしたら、ヤクザのアジトではないかと?そう思ったもので、草凪さんのご意見をうかがいたくて」ヤクザのアジトと聞いて、草凪は、腕組みをして、小さくうなずいた。「対馬の山奥に豪華な別荘ですか。確かに、においますね。ヤクザと決めつけるのは、どうかと思いますが、何かありますね」草凪は黙っていたが、実は、この別荘のことを知っていた。また、世界的に有名なIT企業のシュー社長を調査していた。

 

 沢富は、頭をかきながら、提案した。「伊達さんと二人で話していたんですが、あの別荘に盗聴器をつけてみてはどうかと。ちょっと、ヤバい話ではあるんですが。どうでしょう?」盗聴器と聞いた草凪は、顔を引き締めた。しばらく黙っていたが、目を見開いて話し始めた。「仮に、ヤクザのアジトであれば、情報が取れるということですね。でも、盗聴器をつけるとなれば、どこに、どうやって、設置するかです。至難の業ですよ。現実的に無理では?」沢富は、二人で考えたルポライターのことを話すことにした。「ちょっとした思い付きですが、豪華別荘の特集記事として、ルポライターがオーナーを取材する、というのはどうですか?別荘内を案内してもらい、隙を見て、盗聴器を設置する、うまくいきませんかね~?」

 

 草凪は、あまりにも子供じみた話にあきれた表情で返事した。「ちょっと、アニメのコナンじゃないんです。隙を見て、設置などできません。簡単に設置できるところであれば、相手も、簡単に見つけ出せるのです。簡単に見つけられない場所に設置するには、何らかの作業が必要となります。別荘でどんな作業をするかですが?」沢富と伊達は、自分たちの浅はかな考えに恥ずかしくなり、うつむいてしまった。「そうですよね。ちょっと、バカな話をして、申し訳ありません」マトリたちは、別荘が麻薬取引の拠点になっているのではないかという疑いをすでに抱いていた。草凪は盗聴器を設置する方法はないかと考え始めた。「いや、バカな話では、ありません。貴重な情報です。別荘が、何らかの形で麻薬密輸に絡んでいるとも考えられます。私に、時間をください。この情報を活かしたいと思います」

 

春日信彦
作家:春日信彦
対馬の闇Ⅴ
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