ソリティア(ペイシェンス)のルールには様々なバリエーションが存在し、難易度も易しいものからほとんど完成不可能なものまで幅広くあります。これらにはそれぞれ異なったゲーム名がつけられていますが、ここでは省略します。*2 ただ、用語についてはある程度の統一が図られていますので、以下にその一例を示します。
・台札または組札(ファウンデーションfoundation):多くのゲームで、この場所に札をすべて移すのが目的です。
・場札(タブロー tableau):多くのゲームではこの場所で札を動かしつつ、台札に移せる札を探します。
・山札(ストック stock):場札から捲って不要なカードを表向きに、場札の山の横に山を作ります。これを山札と言います。場札に動かせる札がなくなった時、この山を裏向きにして場札の山の場所に移し、ここから新たな札を引く事になります。
・捨札(ウェイストパイル wastepile):場札や台札の中で不要な札をここに捨てます。多くのゲームでは一番上のカードに限り拾って使用できます。
多くの人は、マイクロソフト社のオペレーションシステム(OS)、ウインドーズに付属しているソリティアでゲームを楽しんでいます。筆者はアップル社のマック派ですから、OS付属のゲームで遊ぶことはありませんでした。現在はウインドーズで動くパソコンも二台目として持っていますが、習い性でしょうか、ウインドーズを使わずに、マックをネット上無料で公開されているソリティアゲームに接続して遊んで(心を無にして瞑想に使って)います。
さて、ウインドーズの「ソリティア」というタイトルのアプリケーションは、ソリティアの中でも比較的知名度の高い「クロンダイク」と呼ばれるゲームを再現したものです。この本で扱っているのもこのクロンダイクです。
ウインドーズ用の最初の「ソリティア」*5は1989年、マイクロソフト社で当時インターンとして働いていた学生プログラマのウェス・チェリーによって開発されました(初版のプログラムは、1990年発売のウインドーズ3.0に収録されました)。インタビューされた時の記録*6によれば、彼が「ソリティア」を製作した目的はあくまでもプログラミングの練習のためであり、業務ではなかったとのことです。そのためマイクロソフト社は、彼の「ソリティア」に対して報酬を一銭も支払っておらず、彼はこの契約を後悔しているとのことです。世界中で遊ばれていますから、パソコン一台当たり1銭(又はセント)としても膨大な金額でしょうね。
ウインドーズの普及に伴い「ソリティア」もまた爆発的に流行しました。今ではパソコン上で遊んだ最初のゲームが「ソリティア」であったというユーザーも少なくないようです。特にOS付属であるため、職場のパソコンにも入っている可能性が高く、「勤務中にソリティアを遊んで解雇された」*7というニュースが報道されるほどの人気となっています。そういう筆者の家内もパソコンには全く弱いのですが、会社に勤めていた頃にこのゲームに出会い、今も日長一日、暇があるとソリティアをしています。どうもその間に、夕食の献立などを考えているようです。時々、
「今日は、何を食べたい?」
とパソコンのソリティアの画面を見ながら尋ねてきます。
「仕事中にパソコンでソリティアを遊んで解雇」
マイケル・ブルームバーグ ニューヨーク市長は、仕事中にコンピュータでソリティアをしていたアルバニーの市事務所で6年間勤めた男性職員エドワード・グリーンウッド四世を、1月30日付で警告も解雇手当もなく解雇した。報道陣からこの解雇について質問を受けた際に、ブルームバーグ市長(ちなみに素養が無くコンピュータは使えない)は、
「職場はゲームをする場所ではありません。わたしも含めて、すべての市の職員が懸命に働くことを望んでいます」
と答えた。
ブルームバーグ市長が、1月4日の州知事の演説前にアルバニーの事務所に立ち寄った時に、この職員がコンピュータカードゲームをしているのを見つけた。
記者に対して、グリーンウッド氏は、
「仕事は遅れることなく、懸命にしていました。知事がボスですし、彼の決定に対して何もできません」、
「このことで、後味がどうかって?」、
「良い訳ないでしょ!」。 [ニューヨークタイムス 2006年2月10日]*7
第二章
ソリティアの上がり方
ソリティア(クロンダイク)は最近ではパソコンの画面で遊ぶケースが多く、「戦争と平和」の登場人物のように遊ぼうと、いざトランプを出しても、どのようにカードを配るのか、よく分からない(思い出せない)ものです。ここでは、そのような時にも対応できるように、まずはトランプの並べ方から始め、上がり方のコツ(戦略と戦術)へと解説を進めます。
場札を1枚ずつめくって遊ぶ場合は上がれることが多いようですが、3枚ずつめくる場合、ゲーム開始時(カードをまだ一枚も動かしていない状態)で動かせるカードがない場合、又はほとんど動かせないときはほぼ100%上がれません。そのため、ここでは初心者を対象としていますので、1枚ずつ捲る場合を例にとって解説します。
2.1 トランプの並べ方
図2−1の二列目のように、良く切ったトランプを台札に配り、7つの山を作ります。配る数は左から、1枚、2枚、3枚、そして7番目の山(列)には7枚を配ります。配り終わったカードの一番上のカードを開けます。また、手に残ったカードを裏返しにして、左上に置き、場札の山にします。この山から一枚開け(捲り)ます。そこからゲームはスタートです。不要な札は、山札の所へ上向けに捨てます。場札が無くなった時は、山札を裏返して(切ることもあります)、場札として、ゲームを続けます。
図2−1 カードの配り方
黒のカードは裏向き(伏せられた状態)、灰色のカードの部分はエースから同じ種類(ハートならハート)のカードを捨てる(整列させる)捨場を示しています。左よりエースを捨てる順番(任意)になっています。黄色のカードは、表向きにされた(開けられた)カードです。場札を左上に示しています。各カードの縦の列(あるいは塊、並び)を山と呼びます。