ふくしまの海
2011年04月16日
海~g~
何があっても
嫌いになりません
と
ひとの子は恋をすると
海を見に行こうか
と
言うでしょう
と
これから何年も
ずっとずっとです
と
私が早朝に
とととととと
と
書いている
と
窓の外で
鳥がしきりに
鳴くのです
そう
そう
きっと
きっと
と
海なんか
見たこと
ないくせにぃ
2011年04月19日
海~h~
海の汚染を
海賊船が
嘆いたら
幽霊船も
難破船も
嘆いて
海は面白く
なくなってしまう
難破船の
鼠が
嘆いて
それを聞いて
阿呆鳥 が
嘆いたら
楽しげに噂して歩くはずの海原で
風の蹠が
萎えてしまう
風が
こないと
波が
固まって
波が
こないと
物語も
固まる
それって困る
だって今男がラブレターを書いて
硝子の壜に入れて
海に流そうとしているのに
海が
その壜を
遠くに
運ばなければ
優しくて辛くてぽたぽた涙が落ちる
愛の物語が始まらないでしょ
2011年04月21日
海~i~
ラムネを飲むとき
わたしは
海に
あいさつをする
バドワイザーを
空けるとき
わたしは
海に
あいさつをする
だって
ひとりの卓で
乾杯と言えなくて
瞬きで
海を
目の前に座らせた
でもこれから
ラムネを飲むときも
バドワイザーを空けるときも
わたしは海を呼び出さない
だって
一日中
海がこころを離れない
わたしの部屋は
もうすこしで
海でいっぱいになる
2011年04月23日
海~j~
2011年4月23日
なんでもない日を
わたしは
信号待ちの
交差点で数えた
生後44日
わたしたちの
生んだ
ベビー
かわいい
名前も
付けもせず
あやすことも出来ず
打ち捨てて
逃げ去っても
海
空
大地へ
おおきくなって
追いかけて来る
ベビー
モンスター
抱いてやれないのに
数えている
生まれた日から
数えている
月と海と波と
わたしの吐息とで