ふくしまの海
2011年04月11日
海~d~
その黄緑の眼の
怪しさ
その名前の
怖いこと
しかし
その美味
そんなこと言っても
駄目なんですね
スリーマイルはアメリカ大陸の子
チェルノブイリはユーラシア大陸の子
祖国にちゃんと抱かれている
だけれども
福島の海岸線は
剥き出しだ
東北の田舎は
田舎ゆえに原発を
受け入れたのに
今
その
素足を
太股を
胸を
惨
衆人環視の海に
突っ込んで
横たわっている
建屋の
排水は私たちの故郷
数メートルを
流れて落ちたら
そこは海と言う
インターナショナルのポータル
そして世界は
めひかりと言う
深海魚なんか
知らないと言う
2011年04月12日
海~e~
漁師は
海を離れない
それを知りたくて
津波は時々
来る
千年に一度とか
百年に一度とか
馬鹿だね
誰も
海を嫌いに
なる訳ないでしょ
黙々と
愛を
証明するだけ
馬鹿だね
魚も
人間も
海から来たこと
忘れてないさあ
2011年04月14日
海~f~
今こうして
空を見ていると
明日にも桜が
咲くかも知れなくて
昨日までのこと
雪も嵐も
雷も地震も
何一つ恨みの種にはならない
とマスターは言った
バー深海魚は
町なかにある
あまり幸せではない人間が
真夜中を
そこで飛び越えるため
バー深海魚は
薄暗いので
いつだってそんなにたくさん
電気を使ったりしない
マスターは
バイオリンが好き
秘密の癌は
第4ステージ
店は来週閉めようと思う
小さな海は
挨拶をする
マスターは
eメールを
打つ
宛先:福島の海
ごめんね
ごめんね
5月の海
6月の海
7月の海
8月の僕のいない海
2011年04月16日
海~g~
何があっても
嫌いになりません
と
ひとの子は恋をすると
海を見に行こうか
と
言うでしょう
と
これから何年も
ずっとずっとです
と
私が早朝に
とととととと
と
書いている
と
窓の外で
鳥がしきりに
鳴くのです
そう
そう
きっと
きっと
と
海なんか
見たこと
ないくせにぃ