白と黄

 鳥羽にとっては、ちょっと話が過激すぎた。ヌードの想像がますます膨らみ、股間が膨らみ始めていた。「楽しそうですね。そんな話、初めて聞きました。女子と話す機会があまりないもので。仲がいいって、いいですね」鼻息が荒くなった鳥羽を見ていると噴き出しそうになったが、もっと、喜ばしてやることにした。「先輩も負けてないのよ。アソコ洗ってやるって言って、ゴシゴシ手のひらで、アソコをこするんだから。こっちも、負けてられないから、やり返したりして、キャッキャ、キャッキャ、バカ騒ぎスンの。ほんと、二人とも、アホなんだから。笑っちゃうでしょ」鳥羽の股間はこんもり膨らんでいた。鳥羽にとっては、笑い話ではなかった。美緒が言うアソコとは、アソコしかないと思い、クローズアップされたゆう子姫のアソコを想像してしまった。

 

 美緒は、からかうかのように反応を確かめてみた。「あきれたでしょ。先輩も、結構アホなのよ。これ以上、こんなバカ話、聞きたくないでしょ。もう、やめる?」ここまで聞かされたなら、やめられるわけがないと言いたかったが、コーヒーをすすり喉を潤して、冷静に返事した。「いや~、ゆう子姫も、ヤンチャなところがおありなんですね。いいことじゃないですか。愉快な話を聞かせてもらって、ありがたい。僕は、女子のことは、全く知らないから、参考になります」カラになったカップを見た美緒は、もう一杯、勧めた。「のど、乾いたでしょ。もう一杯どう?」カラになったカップを確認した鳥羽は、アイスミルクティーを注文した。

 

 美緒は、レモンスカッシュを注文した。「あ、そう。さっきのアレのことだけど」美緒が考えているアレは、口に出して言えるようなものではなかった。ちょっと声を小さくして話し始めた。「今度、泊まるじゃない。そいで、お風呂にも一緒に入るじゃない。だから、こそっと、アレを失敬しようかなと思ってるの」鳥羽は、いったい何を言いたいのかさっぱりわからなかった。ショーツのほかにもらえるものといえば、ブラではないかと思ったが、ちょっとネコババしにくいのではないかと思えた。お願いしてもらえるものでもないと思えた。というのは、ゆう子姫のCカップブラは、美緒のIカップのバストに合わないからだ。

 

 

 

 何を今度はネコババしてくれるのだろうかと考えていると美緒が話を続けた。「ちょっと、口では言えないのよね。ほら、アソコのアレを23本失敬してこようかなと思って。鳥羽君、欲しくない?欲しくなかったら、いいんだけど。すっごく、ネコババって、気を使うのよね。ドキドキするんだから。いらない?」23本と聞いて髪の毛なのかなと思ったが、髪の毛であれば、アソコとは言わないと思い、まさかと思った。まさか、アソコのアレって?アソコの?ゆう子姫のフサフサ盛り上がったアソコのケを想像した途端、ゴックンと生唾を飲み込んだ。こんなチャンスは二度とないと思った鳥羽は、勇気を出してお願いすることにした。「23本もいただけるのですか。まったくかたじけない。天国まで家宝としてお持ちいたします。ぜひ、お願い申し上げます。美緒オジョ~様」

 

 意味が通じたと思った美緒は、笑顔で返事した。「了解いたしたぞ。鳥羽君のお願いとあらば、命がけで頑張る。任せて。先輩って、すっごくモサモサだから、意外とうまくやれそう。これで、三種の神器の2つ目がそろうってことね。それに、もっと、二人の秘密を話してあげてもいいんだけど、ここじゃね~。あ、もう、お昼じゃない、お腹すいちゃった。鳥羽君、お昼は?」鳥羽は、腕時計で時刻を確認した。「あ~、もうこんな時間か。弁当買って帰ろうかな~」美緒が、即座に食事を誘った。「土曜日じゃない。外食したら。美緒がおごってやるから~。チャンプ・カフェ、って言うハンバーグのおいしいとこ、知ってんのよ。行かない?」鳥羽は、一応は断るべきだと思ったが、頭は、うなずいていた。

 

            決死の絆

 

 84日(日)橋の日。鳥羽は朝食を終えると、安田から昨日の夕方にかかってきた電話を思い出した。用件は、ちょっと相談したいことがあるということだった。そこで、さしはら旅館に午前11時頃に伺う約束をしていた。午前1030分になると、早速、Tシャツにライダージャンパーを着こみ、5階から一気に階段を駆け降りた。駐輪場の愛車、スズキアドレス110に駆け寄るとメインスイッチにキーを差し込み、カチッとシートを開けた。鳥羽は、トランクから赤いジェットヘルメットを右手でヒョイと取り出し、白のドライバーグローブをした。一呼吸するとサイドスタンドをカチ~~ンと右足で払い、愛車を駐輪場からゆっくり引き出し、ドスンとまたがった。

 

 左手でリアブレーキレバーを引き、右手の親指でスタータスイッチを押すとブルル~~ンシュルシュルシュルと軽やかなエンジン音が響いた。以前は、中古のスズキアドレス125に乗っていたのだったが、アドレス125のエンジンのかかりが悪いと安田に悔やんだところ、プラグを交換すれば問題ないということだったが、どういう風の吹き回しかわからなかったが、安田が乗っていた新車同然のアドレス110を譲ってくれた。

 

 平均時速約50キロで国道202号を走ると1055分にさしはら旅館の駐車場に到着した。玄関まで駆けていくとフロント前のティールームで安田が能天気にコーヒーをすすっていた。早速、安田の前に腰掛けると鳥羽は、勢いよく声をかけた。「先輩、お元気そうですね。今日は、改まってなんですか?」安田は、グラスから手を離し、首をかしげ話し始めた。「まあ、何というか、将来のことというか、就職のことというか、まあそんなところなんだが、自分で決めることだとは思うが、ちょっと、鳥羽の意見を聞かせてもらいと思ってな」鳥羽は、いつもになく深刻な話しぶりに緊張してしまった。「何か、困ったことでも起きたのですか?さしはら旅館の経営がうまくいっていないのですか?僕にできることだったら、何でも言ってください。できるといっても、皿洗い、掃除、洗濯ぐらいですが。もしかして、もしかして、浮気がばれて、追い出されたとか?」

 

 

 相変わらず、バカな妄想をする奴だとあきれたが、相談したいことは、そんなことではなかった。「いや、そういうことじゃなくて、就職先のことなんだ」鳥羽は、言っている意味がよくわからなかった。卒業後は、さしはら旅館の亭主になるわけだから、就職先で悩むというのではなく、仕事内容での悩みだと思えた。「就職先は、ここじゃないですか。どういうことですか?リノさんと喧嘩でもしたんでしょ。浮気なんかするからですよ。どこで、ナンパしたんですか、まったく」安田は、鳥羽の減らず口にうんざりしたが、心を落ち着けて返事した。「おい、俺は、浮気なんかしない。変な勘繰りはよせ。鳥羽には、黙っていたが、卒業後は、外資系の会社に就職する。カツラAIシステムズという会社だ。だから、旅館の亭主にはならないってことだ」

 

 なぜ、さしはら旅館の亭主にならずに就職する気になったのか聞くことにした。「え、就職するんですか。また、どうして。この旅館は、どうする気ですか?リノさんは、了解したんですか?先輩は、旅館の亭主が似合っていますよ。もしかして、リノさんに捨てられたとか?リノさんの肩をもむとか、足をもむとか、リノがいなければ、僕は生きていけないと言って足にしがみつくとか、まだ間に合います、土下座して謝れば、許してくれますよ」これ以上妄想されては、極悪人にされてしまうと思い、安田は、具体的な話をすることにした。「おい、俺の話を聴け。リノとは、うまくいってる。そういうことじゃなくてだな~~。俺の相談は、職場のことだ。職場というのが、イスラエルなんだ。まさか、卒業してすぐに、行かされるとは思っていなかった。まあ、1年間の研修ということなんだが」

 

 イスラエルと聞いてイサクのことを思い出した。「イスラエルにですか。もしかして、カツラAIシステムズは、イサクの紹介ですか?」ちょっと気まずくなった安田は、頭をかきながら返事した。「いや、イサクじゃなくて、ヤコブだ。仕事としては、やりがいのある仕事だと思い、就職することにしたんだが、卒業して、いきなり、イスラエルとは、面食らった。いや、イスラエルでもシリアでも、行く気はあるんだ。一度、決めた仕事だ、後悔はしていない。まあ、ちょっと、鳥羽に話したかっただけだ」鳥羽は、首をかしげて、考え込んだ。ヤコブの紹介ということは、何か裏があるとにらんだ。ヤコブが安田にどんな話をしたのか興味がわいてきた。

 

春日信彦
作家:春日信彦
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