白と黄

 確かに、初めてだと、避妊は難しい。避妊は、ズバリ、相手に言わなければ失敗する。でも、いざ、その時になって、勇気を出して、口にできるか?「先輩は、まだだもんな~。だから、もっと早くに、やってればよかったんです。だったら、度胸もついていたのに。いまさら、こんなことを言っても、始まらないか」美緒もこればかりは、首をひねった。美緒は、許してもいいと思ったら、相手にセックスOKの時期をはっきりと伝えていた。だから、妊娠したことはなかった。「それじゃ、先輩から、デートの日を指定してください。それも、何日から何日までと。プレイボーイだったら、きっと察しが付くはずです。それが、いいです」ゆう子はうなずいた。イサクとヤコブがプレイボーイであることは、間違いないと思った。基礎体温から、妊娠の期間をわりだすことにした。「わかった。日本人も、外人も、同じよね。美緒、ありがとう」

 

 大きな目をパチクリさせた美緒は、笑顔で大きくうなずいた。実のところ、美緒は、イケメンのイスラエル人とセックスしたかった。誰か紹介して欲しくなった。「先輩、そのイスラエル留学生に友達いるでしょ。友達を紹介してくれませんか?美緒も、白人と付き合ってみたいな~~。お願い、先輩」まさか、美緒がこんなことを言い出すとは夢にも思っていなかった。イサクとこれからどうなるかわからなかったが、相談に乗ってくれた恩返しにだれか紹介しなければ悪いような気になった。だれかといっても、思い当たるのは、ヤコブしかいなかった。でも、ヤコブは、美緒のようなタイプを好むかどうか?巨乳だけど、チビデブでカワイ~~ってほどでもない。でも、ヤコブが決めることだし、紹介だけはしてみることにした。「え、友達?いることには、いるけど。ヤコブっていうんだけど、医学部の学生。一度会ってみる?」

 

 美緒は、医学部の学生と聞いてワクワクしてきた。医科大学看護学科の学生だといえば、付き合ってくれそうな気になってしまった。「ぜひ会ってみたい。紹介して。いつ紹介してくれる?美緒は、いつでもいいんだから」とりあえず、イサクに話してみることにした。「わかった。イサクに聞いてみる。ヤコブがOKだったら、連絡する」美緒は、ジャンプして歓声をあげた。「やった~。先輩、ありがとう」美緒の喜びが理解できなかった。そんなに、白人がいいのだろうか?黄色人種は、白人にあこがれるのだろうか?ゆう子は、別に、白人だから付き合いたいとは思わなかった。イサクと付き合うのは、白人だからというのではなく、やさしさと聡明さにひかれたからだった。

 

 

 

 確かに、アジア人は白人と簡単にセックスする、というネット記事を目にしたことがあった。美緒も、その部類の軽い女子なのだろうか?白人とセックスするのが、自慢になるのか?名誉にでもなるのか?ハクがつくというのか?有頂天の美緒に尋ねた。「え~~、白人がそんなにいいの?日本人のほうがいいと思うけど」意外なことを言う女子だと思ったのか、美緒は眉間にしわを寄せ答えた。「イスラエル人って、やさしくて、上手なのよ。記事で読んだだけ、なんだけど。なんだか、あこがれちゃうのよね~~甘いマスクに」美緒の頭には、セックスのことしかないように思えた。

 

 ゆう子は、嫌味を言ってやった。「美緒は、おじさん好みだったんじゃなかったの?今度は、白人。まったく、節操というものがないんだから」顔を引きつらせた美緒は、反撃した。「節操がないって、どういうこと?セックス上手が好みって、言ってるだけじゃない。若いのは、やさしさも、ムードも、全くないんだから。その点、おじさんはいいのよね。イスラエル人の甘いセックスも味わいたいな~~、シンデレラになれるかも~」話を打ち切ろうと思ったが、ガツンとショックを与えることにした。「噂ってのは、嘘が多いっていうから、ガッカリするかもね。見掛け倒しかも」急に、マジな顔つきになった美緒が、言い放った。「だから、自分の体で確かめたいの」

 

 ゆう子は、言ってる意味がさっぱり分からなかった。イスラエル人がセックス上手かどうか、確認して、どうなるというのか?ヤコブのセックスが、美緒が思っているほど上手でなかったら、だれに、何と言うつもりなのだろうか?”あんたは、セックス評論家?セックス体験記でも書くつもり?イスラエル人の次は、フランス人とでもセックスする気?”と言ってやりたかったが、アホらしくなった。ゆう子は、美緒がモテるのは巨乳だからと思っていた。「美緒、恋愛というのは、セックスだけじゃないと思うけど」美緒は、目を丸くした。「いつ、セックスだけって言った。セックス上手が、好きだって、言ってるだけよ。先輩は、一度も経験がないから、わからないだけ。経験すれば、わかるって」

 

 セックスのことを言われると、今までの恋愛は何だったのだろうと思い始めた。セックスできなかった勇樹への片想いは、いったい、なんだったのか?無駄な時間を過ごしたに過ぎないというのか?イサクに対して好感を持っているが、これは恋愛感情といえるのか?イサクとセックスすれば、それは、恋愛なのか?ゆう子には、納得がいかなかった。イラッと来たゆう子は、顔をしかめ、頭をガシャガシャガシャとかきむしった。シャワーを浴びて、頭をスッキリさせることにした。「久しぶりに、シャワー、浴びようか?」美緒は、笑顔で答えた。「来るまでに、汗びっしょり。シャワー浴びた~~い」二人は、1階のバスルームに向かった。

 

春日信彦
作家:春日信彦
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