算命学余話 #R57

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算命学余話 #R57 (page 1)

 冬季五輪が終了しました。連日の五輪報道といい上野のパンダ報道といい、国民全員が必ずしも熱中しているわけではないネタを大々的に取り上げることで、もっと重要な法案審議や地方選挙、緊迫した国際情勢の報道が、もしかしたら意図的にスルーされた現状に白い目を向けつつも、私は今回の五輪の日本選手の活躍に大いに沸きました。金メダルの数が期待したより多かったからでしょう。やっぱり「二番じゃだめ」ですよ。特に五輪に熱中していない人間にとってはそうです。滅多に獲れない金メダルだから驚いたのです。
 ところで日本選手たちの活躍に水を差すつもりはないですし、私も大いに喜んだ金メダルではあるのですが、フィギュア男子の羽生結弦の五輪二連覇については、連日特集報道が組まれたにも拘わらず誰も指摘しなかったシニカルな見解があって、いつか誰かが言ってくれるかと思いつつ大会が終わってしまったので、私がここで指摘することにしました。結論から言えば、如何に羽生選手の運が強いかということです。
 
 私が思ったのはこういうことです。羽生選手の名コーチであるブライアン・オーサーといえば、キム・ヨナのコーチです。キム・ヨナはバンクーバー五輪で浅田真央と金メダルを競って勝利した名選手ですが、トリプルアクセルを3本そろえた浅田真央に対して3回転ルッツ止まりの技術しか持たなかったキム・ヨナの勝利を、当時の日本のマスコミは採点がおかしいのではと不満を連ねました。
 私はキム・ヨナのジャンプの幅、つまりスピードが浅田より数段勝っていたのに気付いていたので、スケーティング技術で点数に差が出たのは妥当なジャッジだと思いました。でもトリプルアクセルの難易度からすれば、もっと点差が小さくても良かったとも思いました。案の定、バンクーバーの後の採点法改定でトリプルアクセルの基礎点は大幅に上がり、ルッツジャンプとの差が広がりました。それでも、ルッツジャンプ止まりの選手が高いスケーティング技術(及びGOE)を習得していれば、トリプルアクセルを持つ選手に勝つことはできる。現在はそのような採点法になっています。
 
 これは男子についても同じです。男子は4回転ジャンプの時代ですが、現在実施されている最高難度は4回転ルッツです。一番簡単な4回転はトーループで、次がサルコー。要するに浅田真央のトリプルアクセルが男子の4回転ルッツに当たり、キム・ヨナの3回転ルッツが4回転トーループやサルコーに当たる。
 羽生選手は4回転ルッツを跳ぶ技術はありますが、まだ完成度が低かったため11月に着地に失敗して大怪我を負いました。そして出場さえ危ぶまれた今回の五輪では、高難度のルッツやループをプログラムから外し、難度の低いトーループとサルコーの二本立てに絞る戦略を立てます。コーチは勿論ブライアン・オーサーです。つまりキム・ヨナの時と同じ戦略でした。
 それに対し、打倒羽生を目指す各国選手は果敢に4回転ルッツに挑みます。結果は見ての通り、成功ジャンプはいくらもありませんでしたし、成功してもGOEは大してつかなかった。それに比べて羽生の4回転トーループとサルコーは、高いスケーティング技術に支えられて満点のGOEがついた。低い基礎点の4回転をGOEで補填することで、4回転ルッツに匹敵する高得点を叩き出したのです。
 この羽生の勝ち方は、8年前に浅田真央を破ったキム・ヨナと同じです。つまり「難易度の低いジャンプで金メダルを獲った」。勝因はスケーティング技術と技の完成度でした。まさにブライアン・オーサーの勝利方式です。そんな羽生選手に対して日本国民は、8年前にキム・ヨナに向けたようなブーイングは勿論しません。同胞感情とはそうしたものです。でも私はこの点を冷ややかに見ておりました。
 
 そしてなぜ羽生選手が強運の持ち主かといえば、彼が11月に大怪我を負わなかったならば、彼はリスクの高い4回転ルッツをプログラムに入れざるを得なかったと思うからです。ライバル選手たちが4回転ルッツやフリップを次々成功させているのですから、彼だってやらないわけにはいかない。やらなければ勝てないと、本人も思ったことでしょう。同じ日本代表の宇野選手でさえフリップやループを跳べるのです。
 しかし「幸運にも」彼は大怪我をしました。出場も危ぶまれるほどその回復は遅く、その後の競技を全て欠場して五輪に挑むことになります。実際怪我は五輪中も完治していませんでした。病み上がりの彼に世間は同情の目を向け、プログラムの難易度を下げたこともやむなしと見做します。その結果、金メダルを獲った。難易度の高いジャンプがなかったことは問題にもされません。むしろ病後をおしてよくぞここまでやったと喝采の嵐です。怪我のお蔭でブーイングを喝采に変えることができた。まさに怪我の功名の極みです。
 繰り返しますが、私は羽生選手の金メダルは嬉しいし、GOE満点の彼のジャンプを眺めるのは痛快です。だから彼の勝利にケチをつける気は毛頭ないのですが、算命学者として、こういうのを強運と言わずして何を強運と言うのか、ということを訴えたいと思います。怪我や病気は確かに忌むべきものですが、こうやって大逆転の引き金に利用することもできる。だから怪我や病気、不幸な時期を100%否定材料と見做すことはできない。それが算命学のものの見方なのです。
 
 さて前回の余話では「返し」について言及しましたが、思った以上に購読者が多く、「返し」を知らずにこれまで算命学を嗜んできた人がこれほどいるのかと戦慄しました。実に剣呑です。学習者の皆さんには、とりあえず他人さまに助言を出す行為は辞めて、生年月日を公表している有名人でも占って研鑽を積み、自信をつけてから鑑定行為に臨むことをお勧めします。今回五輪で活躍した選手の勝因を占ってみるのもいいかもしれません。
 今回の余話のテーマはそんな五輪についてです。選手生命の短い競技で五輪に連続出場したり、連覇したりすることは大変難しい事業です。選手は個人的努力の他に、サポートしてくれるチームや支援者と一丸となって競技に臨んでいます。そうした現実的な話はさておき、算命学の見地から五輪という競技の祭典と、そこで勝利することの背景に何があるのかを探ってみます。キーワードは「後天運」です。五輪は4年に一度の開催なので、この4年という区切りにスポットを当ててみます。算命学的思考力を鍛える内容です。
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