算命学余話 #R47

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算命学余話 #R47 (page 1)

 ロシア文学者の亀山郁夫氏は六人兄弟の末っ子で、母親の臨終時は国費留学生としてロシア滞在中だったため最期を看取ることができませんでした。残りの五人の兄弟はいずれも母親を看取ったのですが、意外にも兄たちは末っ子を羨ましがっているそうです。なぜなら母親の訃報を海外で受け取り死に顔を見なかった亀山氏は、いまでも母親が生前の姿で夢に出て来るからです。しかし兄たちの夢に母親が現れることはなく、それはきっと死に目に臨席したため厳然たる死を受け入れざるを得ず、その影響で生前の母の姿が遠のいてしまったからではないかと兄弟は推測しています。
 一般に親の死に目に遭えないことは不幸な事と考えられていますが、このような話を聞くと臨終を看取ることは必ずしも良い事ではなさそうです。人の価値観はそれぞれで、時には真逆に考えられることもあるのです。
 
 もう一つ常識を疑うエピソードです。クリスマスにはサンタクロースやモミの木が付き物ですが、どちらもキリスト教とは関係がありません。キリスト教発祥の地はエルサレムですが、ロケーションは中東ですから雪など降りません。暑くて乾燥した地域なのでモミの木も生えていませんし、トナカイもいません。
 現在通例となっているクリスマスに係わる風物は、その後キリスト教の広まったもっと北のヨーロッパの土着の風習が変化したものに過ぎません。モミの木を打ち立てる風習は当地の冬至祭りの名残です。日本で神道と外来仏教が神仏習合したように、ヨーロッパでも土着の信仰と外来キリスト教が習合した結果、現在のようなクリスマスツリーやサンタクロースになったのです。
 この話は佐藤優氏が語ったものですが、クリスチャンである佐藤氏は十字架も聖像も家にあったことはないそうです。彼の信仰する由緒正しいカルヴァン派は偶像崇拝を認めないため、十字架のような象徴的造形物であっても偶像と見做し、これを拝むことを禁じていると。では現在キリスト教の象徴ともいうべき十字架や聖像はどこからやってきた馬の骨だったのでしょう。
 キリスト教本来の伝統を重んじる人ほど、十字架やキリスト像やサンタクロースを遠ざけている事実を認めるなら、これらイワシの骨的アイテムを崇めているこの世の多くのキリスト教徒は何なのでしょう。とっても下らない人たち、自分の大切なものの歴史も知らずにイベントに明け暮れている浅はか者ということになりはしないでしょうか。
 結局クリスマスもバレンタインデーも、ケーキやチキンやチョコレートを売りたい商売人の販促イベントにすぎず、宗教とは何の係わりもありません。そこにはいかなる崇高さも存在しない。さあ、それでもあなたはクリスマスにケーキを買い、プレゼントを交換し、家族そろった晩餐で肉食し、シャンパンを空け、電飾で飾りたてたクリスマスツリーを眺めながらキリスト教的な聖なる夜を祝うのでしょうか。そんなお祝い事をしない人の方がより宗教的であり、正しい知識を身に付けているということに思い至ることもなく。
 
 算命学は陰陽論なので、物事には真逆があることが前提です。どちらが正しいとはいえず、善悪はその人が自分の生き方に都合の良いように決めていくものだと考えています。誰しも自分一人の人生しか生きられないので、そのように手前勝手に善悪を決めて生きていくこと自体は悪くありません。ただ他人の善悪の基準は自分とは違うものであり、場合によっては正反対だということは頭に入れておかないと、人間関係がうまくいきません。同じ価値観でないというだけで相手を否定していては、誰とも共存できません。価値基準が異なっていても、互いに尊重することはできるのです。
 
 さて今回の余話は、「基礎から考える十大主星」の最後となりました司禄星についてです。司禄星の特徴は真面目、地味、堅実、慎重、保守、家庭、安定志向、蓄財といったところで、業界ではあまり面白みのない星だと見做されています。司禄星は魅力本能を司っているため、さぞかし魅力に溢れていると思われがちですが、同じく魅力本能を主眼とする禄存星の回でも述べたように、算命学が唱える魅力とは一般的に「あの人は魅力的だ」といった意味とは異なります。
 魅力星の人をがっかりさせて申し訳ありませんが、魅力星は同時に財星です。つまり魅力とはカネです。人はカネを集める才のある人に群がるのであり、それを以って魅力と称している。算命学はそんな風に考えています。
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